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大阪大会一回戦 桜宮7-0牧野

レポート 氏原英明

 第91回全国高校野球選手権大会の各地区予選が全国で始まっている。近畿地方ではインターハイの関係で奈良大会が一足早く9日に開幕し、きょう11日に残りの5府県が開幕した。

 夏の高校野球はいろんな楽しみ方ができると思う。

 たとえば、将来のプロ野球候補生を追いかける。
 たとえば、大会のチャンピオンを追いかける。
 たとえば、1試合のドラマを追いかける。
 たとえば、高校野球らしい、球児のひたむきな姿を追いかける、などである。このブログではそんな多方面の楽しみ方を堪能しながら書いていきたいと思う。

 きょう、僕は奈良大会を2試合観戦した後、京セラドームで開幕した大阪大会の1試合を観戦したが、奈良の第1試合は「1試合のドラマ」として楽しみ、もう1試合は「大会のチャンピオン」を追いかけつつ、「球児のひたむきな姿」を見た。大阪大会では「大会のチャンピオン」を追いかけつつ「将来のプロ野球候補生」を発見できた。。

 そのなかから、今回は大阪大会で見た桜宮VS牧野の試合「公立校・桜宮の挑戦」を取り上げたいと思う。

 桜宮は大阪の府立校。阪神・矢野の母校として有名な体育課のある学校だ。毎年、3回か4回は勝つ、府立校の中では上位の力を持つ強豪だ。昨秋は大阪府3位になり、21世紀枠に選出。この春は準優勝に輝き、優勝候補の一角としてこの夏を迎えた。目指すはもちろん優勝で、合言葉は「高校野球の常識を変える」である。福原和行監督いわく、「大阪では私学が強いというのが当たり前になっている、それを覆す」ということである。中村紀洋(現楽天)が4番を打った渋谷高以来の公立校の甲子園を目指す。

 このチームの注目はエースで主軸を打つ山田陽介。178㎝、78㌔の恵まれた体格から球威のあるストレートとスライダーを投げ込む本格派右腕である。しかし、この日、山田は1イニングの登板のみで、この試合で目立ったのは桜宮外野陣の脚力である。なかでも中堅手で3番を打つ鈴江翔太には目を奪われた。鈴江は攻守に活躍を見せた。

 5回表の第3打席、鈴江は二塁ゴロを放つも快足を飛ばして内野安打。このときの一塁到達タイムが4秒を切る好タイムだった。俊足の基準が、4,3未満というからかなりの俊足と言える。多少、走り打ちになった分、タイムが上がったのは否めないが…。そのあと、鈴江は二盗を成功。4番・竹渕涼の適時三塁打で生還した。ちなみに、竹渕の三塁到達タイムも12秒をはるかに切る11秒63の好タイム。彼も俊足である。
 6回裏、鈴江は今度、守備で見せた。1死・1、2塁から中前安打を処理、中堅手の定位置からダッシュし、矢のような送球をホームへ投げ込んだ。走者が自重したために、補殺にはならなかったが、球場がどよめく強肩ぶりだった。

 そして、7回表にはまた走塁。中前安打を放った鈴江は中堅手がゆっくり処理する隙をついて二塁を陥れたのである。今度はタイムというより、隙を突くとう抜け目のなさ。この走塁は彼の意識の高さを証明している。

 試合後、鈴江に直接話を聞くと、7回表の走塁は春季大会の決勝PL学園戦で、逆にやられたプレーだという。やられたからこそ、今度は自らが意識を高めて、そうした盗塁ができるよう練習してきたそうだ。

 「春よりは足に意識するようになりました。打つだけでチームを引っ張るのではなく、足でも引っ張っていける選手になりたいです」と語った鈴江。走攻守にわたって、桜宮をけん引するキーマンである。

 試合は7-0の7回コールドで快勝し、2回戦進出を決めた。このまま順当に勝ち上がれば、桜宮は3回戦では昨春のセンバツ出場校・履正社と当たる。履正社には春季大会で勝っているが、夏となるとまた事情は違う。私学勢を倒して、「高校野球の常識を覆す」桜宮の挑戦はまだ始まったばかりだ。

 



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7月11日 埼玉県大会 1回戦
立教新座9-2所沢(7回コールド)

 早稲田実業(西東京)、慶応(神奈川)と、六大学の付属校が力をつけている中、埼玉の立教新座も夏の大会では一昨年ベスト8、昨年準優勝と成績を伸ばしている。昨夏の県予 選全6試合を1人で投げきるなど、原動力となった大エースの岡部(立教大学)が抜けたものの、5人のレギュラーが残っており、新エース・矢部にかかる期待は大きい。
 スリークォーターからクセのある球を投げ込んでいた岡部とは対照的に、矢部はオーソドックスな投法の右腕。細かい特徴を挙げれば常にセットポジションであることと、体が開かないようにとの意識からか、左足をスパイク約1足分1塁側に引いていること。ストレートはMAX140キロとの評判だが、この日の立ち上がりの球速はそこまで出ておらず、目測で130キロ台前半~中盤だった。ただ、初戦の緊張なのか、スロースターターなのか、3回あたりから球が走り出し、おそらく130キロ後半のボールが行っていた。変化球はスライダーを多めにカーブも投げ、キレはまずまず。身長も180センチ近くあり、左足の踏み込みがしっかりしていて投げ終わってもバランスを崩すようなことはない。
 ピンチを抑えたとき以外にも先頭打者を三振に取った際に空に向かって右手を突き上げたりと、時として求められる強気な面もあ
る。しかし、その割りには強豪校ではない相手に圧倒するようなピッチングはできていなかった。
 理由を推測すれば球持ちが長い方ではないため、相手打者に球速ほどのスピード感を与えられなかったのではないか。歩幅を少し広げるなり、そのあたりに今後の向上の余地がありそうだ。それからピッチャーの生命線であるコントロール。四球を多く出すとこまではいかないもののボール球が少なくなく、球数が増えていた。7回の1イニングを投げて1失点の八木原を始め、この試合でブルペンで肩を作っていた投手を見る限りは矢部とその他の投手の力の差がありそう。
 先輩の岡部のように大黒柱となって暑い夏を乗り切るためには球数を抑え、スタミナの消耗を少しでも避ける必要があるはずだ。


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原武史

ノンフィクション100冊選考にあたり
私にとって絶対に外せない本

 まことに茫漠とした「ノンフィクション」の大海のなかからなにを選ぶか。私がその条件としたのは、以下のようなものだ。
1 20世紀以降に刊行され、20世紀以降を対象としている。
2 特別に意味があるものを除いて、純粋な学術書は除く。
3 他の選者が選びそうにないものであっても、迷わずに選ぶ。
4 内容によっては小説も可とする。
 もちろん、そうは言っても、必ず入ってくる作品というのはある。松本清張や立花隆などの作品がそれに当たるだろう。だが、ここで選んだ100の作品のなかには、いまや絶版となり、完全に忘れ去られたものも少なくない。
 私の専門が政治思想史であるため、近現代の天皇制や日本共産党、創価学会などの新興宗教に関するものが多くなってしまった。これも挙げればきりがないが、全体のバランスを踏まえ、特におもしろいと思われるものだけを挙げている。
 鉄道関係の本が多いのは、完全に私の趣味である。内田百?、阿川弘之、宮脇俊三の「古典」だけでなく、私鉄経営者の回想なども入れた。教育、団地関係の本は、拙著『滝山コミューン一九七四』を書くさいにかなり読みあさった。自然科学では昭和天皇や福岡伸一のほかに、ウイルス関係の本が若干混じっているが、これは父親がウイルス学者だったせいで一時期読んでいたからで、いわば「昔とった杵柄」である。
 ぴったり100の枠におさめるのはどうしても難しい。あれもあったな、これもあったなと思い出すたびに、何度も入れ替えてしまった。おそらく、これからも思い出すだろう。他の選者からは、なぜこんなものが入っているのかとお叱りを受けることも覚悟している。しかし、他人にとってはどうでもよくても、自分にとっては重大な本というのはある。それを外すわけにはいかなかった。


原武史のノンフィクション100選:ベスト10その1
※コメントは選者ご本人によるものです

続 わが異端の昭和史
石堂清倫
勁草書房/1990年
戦後の日本共産党の歩みを知る上で欠くべからざる一冊。ぶれない石堂清倫とぶれてゆく党中央との対比が面白い

愛の空間 (角川選書)
井上章一
角川選書/1999年
皇居前広場が野外性愛の隠れた名所だったことを初めて知った。井上章一の本は、すべてが優れたノンフィクションだと言っても過言ではない

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)
レイテ戦記 (中巻) (中公文庫)
レイテ戦記 下  中公文庫 A 33-4
大岡昇平
中公文庫/1974年
小説とノンフィクションの臨界点に位置する。すぐれた小説家は、すぐれたノンフィクション作家でもあることを示した一冊

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
佐藤優
新潮文庫/2007年
記憶から生々しい言葉のやりとりをそっくりそのまま再生する異能の「力」が、この書を迫力あるものにしている

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街道をゆく〈41〉
街道をゆく (42)
街道をゆく〈43〉
司馬遼太郎
朝日文芸文庫/1978年
近代以前の日本の姿を探しに各地を回るが、ドライブインのまずいカレーライスを食べ、タクシーの運転手とやりとりを交わした現場は、まぎれもなく昭和から平成にかけての日本であった(08年より新装版〈朝日文庫〉刊行中)


「ベスト10その2」に続く
原武史

○明治学院大学教授
Profile
はら たけし
1962年生まれ。早稲田大学卒。日本経済新聞社、国立国会図書館勤務ののち、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。専攻は日本政治思想史。
2001年、『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞受賞。08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞受賞。同年『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞受賞。鉄道ファンとしても知られ、講談社現代新書に『鉄道ひとつばなし』『鉄道ひとつばなし2』がある

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