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『コーポレート コンプライアンス』 季刊第18号
特集 政治とカネと検察捜査 「小沢秘書逮捕」は何を物語るか

郷原信郎監修
  好評発売中  講談社 1575円(税別)

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評者・長谷川幸洋
(東京新聞・中日新聞論説委員 『日本国の正体』(講談社)著者)

 西松建設からの献金をめぐって小沢一郎民主党代表(当時)の公設第一秘書が逮捕された事件は、衆院解散・総選挙が間近に予想されていた中で事件に着手したタイミングや逮捕容疑そのものについて、さまざまな批判が投げかけられた。
 あの事件の本質とはいったい、なんだったのか。
「東京地検特捜部」と聞くと、部外者には内側の様子がまったくうかがい知れない世界だが、今回、緊急出版された『政治とカネと検察捜査/「小沢秘書逮捕」は何を物語るか』は、東京地検特捜部の勤務経験がある名城大学教授の郷原信郎氏が監修し、門外漢にも分かりやすく捜査や法律上の問題点を明らかにしている。
 元東京地検特捜部長で中央大学法科大学院教授の宗像紀夫氏は郷原氏との対談で「おとなしくしていれば、楽な人生を送れるのですが(笑い)、特捜にとって厳しいことでも言うべきことは言わないとけない」とまず前置きする。こんな台詞に(向こう傷を負っても、言うべきことを言うぞ)という宗像氏の気概を感じると同時に、この事件の特異性が肌で伝わってくる。
「まさか出発点の虚偽記載が事件のすべてだとは考えられなかった」「(自民党についても)全部調べたうえで、大久保秘書の関係を着手するならわかるんですが、自民党議員については調べもせず、大久保秘書をいきなり逮捕とは」(宗像氏)。
「法律上、(小沢氏の)陸山会に対して犯罪が成立して、ほかに対しては成立しないという説明も不可能」(郷原氏)。
 2人の対談は、捜査のプロの目から見ても、今回の事件が根本的な問題点を抱えていたことを赤裸々に暴露している。
 驚いたのは「特捜神話の原点・指揮権発動」という論考だ。造船疑獄での指揮権発動は一般に「正義の味方」である特捜部の捜査を「悪のチャンピオン」である政治家が強引に中止させた悲劇的事例と思われているが、それはとんでもない誤解で、実は捜査に行き詰まった特捜部を救うためだったという。こういう話を読むと、やはり永田町や法務・検察を含む霞が関は、とても一筋縄ではいかない「伏魔殿」という思いを深くする。
 ほかにも司法担当記者による内幕ドキュメント「特捜劣化の現場」 など力作論考がそろっている。本当の検察の姿がわかる必読の一冊だ。


(了)

 


郷原信郎(ごうはら のぶお)
1955年生まれ。東京大学理学部卒。1983年検事任官。東京地検特捜部ではゼネコン汚職捜査に携わる。長崎地検次席検事時代には、自民党長崎県連の違法献金事件を立件。2006年検事退官、弁護士登録。同年、株式会社コンプライアンス・コミュニケーションズ設立。2009年より名城大学教授。 『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書) 『思考停止社会』(講談社現代新書)など著書多数 

 




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『日本国の正体』
~政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か~

長谷川幸洋著
講談社 1300円(税別)


 「私はかつて官僚のポチだった」
政府税調委員も務めるエリート記者が本音で綴った懺悔録 


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評者・佐藤優(作家・起訴休職外務事務官)

 長谷川幸洋氏は、中日新聞(東京新聞)のやり手経済記者だ。政官の内幕を書いた本は、それこそ本屋に山ほど並んでいるが、本書には類書と異なる深さ、鋭さがある。
【官僚は表の姿と裏の姿を使い分ける。表では、あらゆる行動が法に照らしてつじつまが合うようにふるまう。政権をお支えするかのように行動する。だが、ひとたび舞台裏に回れば、なにより自分たちの既得権益が侵されないように全力を挙げる。】(40頁)
 この実態を、長谷川氏は、異能の財務官僚で、安倍晋三政権下で内閣参事官として活躍し、その後、東洋大学教授に転出した橋洋一氏と親しくすることを通じ、内側から観察している。橋氏は財布と高級時計を盗んだということで、社会的発言権を抹殺された。長谷川氏には、橋窃盗事件、中川昭一財務大臣のもうろう会見による失脚、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が逮捕された事件が「一つの糸」でつながっていると読み解く。それは霞ヶ関官僚の自己保身と利権保全だ。
 近未来に行われる総選挙をにらんで官僚は生き残りに必死になっている。この官僚という不気味な生物の生態を知るために、本書は最良の参考書だ。一人でも多くの人の目に本書が触れることを望む。(2009年6月22日記)

 


■お詫びと訂正
長谷川幸洋氏の著書『日本国の正体』について

一部のネット書店に、同書の内容が誤って紹介されていました。ネット書店に掲載された内容は、原稿執筆以前の企画段階における担当編集者の草稿であり、著者の意図とは異なっている箇所も少なからず含まれています。読者の方々ならびに著者の長谷川様にお詫び致します。
なお、正しい情報は下記の通りです。


内容紹介
日本を本当に動かしているのは誰か、真の権力者は誰なのか――

「三権分立」「国会 は国権の最高機関」などのタテマエとはおさらば。本当のリアルな姿を知りたい人のために、官僚組織と政権の裏側、そしてそこにビルトインされているマスメディアの実態を、実際に体験した具体例を元に描き出す。
二言目には「財政再建」を唱える財務官僚が不況を大歓迎し、一歩裏に回ると赤字ばらまきのために奔走する理由、経産省の役人らが天下り先を作り出す「専務理事政策」、大手マスコミの「できる記者」ほど役所の「ポチ」に陥りやすい構造などなど、新聞やテレビでは絶対にわからない、教科書には絶対に書かれない「権力の実体」が浮かび上がる。

【目次】
第1章 官僚とメディアの本当の関係
・新聞は何を報じているか
・不可解な事件
・霞が関の補完勢力になった新聞
・転向の理由
・政権を内側からみるということ

第2章 権力の実体
・政治家と官僚
・「増税」をめぐるバトル
・財務官僚の変わり身
・福田首相の本心
・事務次官等会議

第3章 政策の裏に企みあり
・「政策通」の現実
・カネは国が使うべきか、国民が使うべきか
・定額給付金は「ばらまき」か
・「官僚焼け太り予算」を点検する
・政策立案の手法
・「専務理事政策」とはなにか

第4章 記者の構造問題
・記者はなぜ官僚のポチになるのか
・真実を報じる必要はない?
・「特ダネ」の落とし穴
・記者は道具にすぎない
・官僚にとっての記者クラブ

第5章 メディア操作を打破するために
・霞が関幻想
・先入観としての「三権分立」
・「政府紙幣発行問題」の顛末
・記者が陥る「囚人のジレンマ」
・報道の力を取り戻すために

 

 



長谷川幸洋(はせがわ ゆきひろ)
1953年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。中日新聞社入社。ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。東京本社(東京新聞)経済部、外報部、ブリュッセル支局長などを経て、99年から東京本社論説委員。05年~08年まで財政制度等審議会臨時委員(財務相の諮問機関)、06年から政府税制調査会委員、07年から道州制ビジョン懇談会委員を務めるなど政府の委員会を内側からウォッチし続けてきた。また、安倍晋三政権誕生前後から政権の政策運営に関わり、「ブレーン」のひとりとして権力闘争の現場を同時進行で体験。その体験を元にした『官僚との死闘七〇〇日』(08年講談社刊)は永田町・霞が関を震撼させた。ほかに謎とき日本経済50の真相』、『経済危機の読み方』(いずれも講談社現代新書) 、『百年に一度の危機から日本経済を救う会議』(PHP研究所・橋洋一氏との共著)などがある
 




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