■オリジナル読み物は「ISSUE」で、ノンフィクション書籍情報は「BOOK WEB」で、ノンフィクション作家情報は「WHO'S WHO」で
オリジナル読み物満載の現代プレミアブログISSUEページへノンフィクション作品ガイド満載の現代プレミアブログBOOK WEBページへノンフィクション作家の情報満載の現代プレミアブログWHO'S WHOページヘ現代プレミアブログCOMMUNICATIONページヘ現代プレミアブログWORK SHOPページヘ
現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


断末魔の新聞とテレビ

  2月15日に発売された『週刊東洋経済』の特集は「再生か破滅か 新聞・テレビ断末魔」。 日本経済新聞社の喜多社長がインタビューを断ったので、私の寄稿が2ページ載った。 
  タイトルは「日経デジタル事業生みの親が説く 電子版成功の条件~『新聞の命は紙面』と考えている新聞経営者は、もはや生きていけない」。
 
 電子版10万部は弱気すぎる 54ページにわたる大特集で、新聞社・テレビ局の現況について、かなり詳細にわかる特集だ。
 しかし、全面的に暗い話ばかり。前向きな話は日経の電子版だけだ。それにしても初年度10万弱が目標というのは、「何を考えているんだ」と言いたくなる。私なら初年度30万、3年後には60万から80万という線を目標に徹底的に攻めたいところだ。

 たぶん、担当の役員などが、あまり高い目標を掲げて、失敗したら・・・と考えたのだろうが、そういう及び腰では、育つものが育たない。日経は電子版をメインにして、紙を1日でも早くやめてしまうのが、経営的にはベストだと思うのだが・・・。

経営学の基本を学んでください

 『2030年 メディアのかたち』を出してから、講演依頼がいくつも来ている。元時事通信社の湯川鶴章氏と共に読売新聞にインタビューされた内容は以下のURLで読める。
http://www.yomiuri.co.jp/net/report/20100128-OYT8T00770.htm
 年末に日本記者クラブで講演したときとか、業界の人に話をしているときに、この人たちは言論だけしかわからない人なんだと、絶望的になることがしばしばある。
 いま、先進国を襲っているマスコミの危機は、経営の問題であり、技術の問題なので、そこを理解しなければ、何を言っても無駄だ。

 経営の基本はコスト問題とマーケティングだ。クリス・アンダーソンの「FREE」を読むまでもなく、世界は無料経済に流れている。それでもまだ新聞がビジネスとして成り立っていることが不思議といえる情勢だ。「安い、早い、うまい」は牛丼の吉野家の宣伝だが、「安くて、早くて、中身が充実」している電子媒体が登場すれば、紙媒体はひとたまりもない。自動車に駆逐された馬車、電卓に駆逐されたそろばん、デジタルカメラに駆逐された銀塩フィルム、ウィキペディアに駆逐された百科事典・・・。そんな例は山ほどある。
 NHKの今年の大河ドラマは「龍馬伝」。黒船が来て坂本龍馬は「剣道は役に立たない」と思う。正直な感想だ。黒船が浦賀に来たのが1853年で、明治維新が1868年。 黒船が来たときに、それから15年で武士という階級そのものがなくなってしまうと、武士たちは考えただろうか? 今はそういう変化の時代だ。

経営陣の若返りが急務だ

 週刊東洋経済の記事で、新聞経営者の浅知恵に唖然とする。委託印刷、共同配送、共同通信への再加盟・・・こんなのは小手先のとりつくろいに過ぎない。 アテンション・エコノミー、プラットフォーム、ブルーオーシャン戦略、マス・カスタマイゼーション、モジュール化・・・こういうことが素直に理解でき、それが自分たちの経営にどう関係するのか、ちゃんとわかる経営者はマスコミ業界に皆無だろう。クリス・アンダーソンの「FREE」すら読んでないだろう。読んでも自分の問題とは思わなかっただろう。  

「勉強しなさい」。ひたすらそういうしかない。私のように出来の悪い人間でもわかるのだから、難しい話ではないはずだ。 
 とにかく、経営感覚がほとんどないのに、漫然と生きてこられたことのツケがいま回ってきています。若くて元気な人にバトンを渡して、50歳以上の人はできるだけ早く、経営の一線から退場してください。80歳を超えて「会長」で居座れるほど暢気な時代はもうとっくの昔に終わっています。幕末のリーダーたちは20代、30代だったのです(坂本龍馬は31歳で暗殺された)。 本物のジャーナリズムが生きていくために経営陣の若返りは必至だと訴えたい。                         
                       (2月18日)

----------------------------------------
坪田知己著『2030年メディアのかたち』絶賛発売中です!


本書を読んでのご感想、デジタルメディアやジャーナリズムに関するご意見・ご質問を本連載コメント欄にどしどしお寄せください。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ツィッターが演出する個人優位の世界

ツィッターがブームになっている。個人の情報交換もあるが、企業の広報活動やプロモーションにも効果があるとして注目され、週刊ダイヤモンドは、1月23日号で大特集を組んだ。  

ツィッターは脊髄反射のメディア

 2月初め、ナレッジマネジメント学会で、ツィッターについてのシンポジウムがあった。そこでIBMの担当者が、広報活動について効果を上げている事例を説明し、会場から「IBMはすごい」という声が上がった。しかし、その表現は正しくない。「IBMには素晴らしい担当者がいる」というのが正しい表現だ。会社として考えたことではなく、この担当者がたまたまIBMの社員だったということだ。

 この担当者は、ツィッターでやりとりする場合に、会社としてではなく「個人として」のスタンスで応対しているが、やはり「会社として」と見られることを指摘していた。
さらに、会社での承認を取っていると手遅れになる場合、どうするかが悩ましいと述べていた。

ツィッターは即座の反応が求められる。いちいち上司の了解を取って・・・というわけには行かない。つまり「脊髄反射」が必要なのだ。

意思決定のスピードが勝敗を分ける

意思決定を個人がする場合と、組織でする場合・・・その差は大きい。グーグルのCEO、エリック・シュミットは、こんなことを言ったという。
「我々の敵は、すでに大きなビジネスをしている大企業ではない。私たちが知らない小さな企業が、ある日突然、強敵として現れるだろう。小さな組織の決定的な強みは、意思決定が速いことだ」

ナレッジメント学会の議論で、私は、「新しいメディアの登場は個人と企業の関係を変え、個人優位な時代を演出していくだろう」と述べた。

昔は、企業にアプローチする場合、「マーケティング担当の方をお願いします」とか、電話や面会で、担当部署の名前で話を聞いていた。ところが、メールや携帯電話は直接個人と個人を結びつける。個人の名前でアプローチするのが、標準になった。

そしてツィッターは同時性を特徴とするメディアである。これには企業はついていけない。
いま、ビジネスの世界での情報交換は個人単位で行われている。役職、担当を名乗っていても「あの人はイケてない」と思われると相手にされず、情報も入らない。

イケてる社員をたくさん持っていることが企業にとって必要条件になる。

個人本位の野党と、意思統一の与党

話をちょっと変えよう。  
鳩山首相、小沢幹事長の政治資金問題、平野官房長官や岡田外相の発言など、政権を取ったばかりの民主党の未熟さが目立つ。

特に、鳩山首相は政府のトップとして、その機構の中に検察を抱えながら、一方で、被疑者になった小沢幹事長への友情発言が問題になった。  

野党は、個人のセンスで、好き勝手に与党を攻撃していればいい。いわば個人優位。ところが政府は統一性が求められる。「守り」は一枚岩でないとダメだ。そういうことがわかっていない。

マスメディアにとって、閣僚の発言が食い違うのはネタになる。大したことがなくてもその差を誇張して、政権を攻撃する。その好餌となっている。  

個人優位か組織優位か、意思決定とメディアの使い分けをしっかり考えるべきだ。企業や民主党の議員が時代の先端を行こうとツィッターに乗り出すときに、メディア特性と、組織の対応能力をちゃんと考えないと、失態の連続になると、注意すべきだ。                              
                                 2010年2月8日  坪田知己

----------------------------------------
坪田知己著『2030年メディアのかたち』絶賛発売中です!


本書を読んでのご感想、デジタルメディアやジャーナリズムに関するご意見・ご質問を本連載コメント欄にどしどしお寄せください。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )