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現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


保阪正康のノンフィクション100選:翻訳書
※コメントは選者ご本人によるものです

医の倫理 (文庫クセジュ (738))
クレール・アンブロセリ/中川米造訳
白水社文庫クセジュ/1993年
医の倫理は時代の枠組みの中でどう動いたかを見つめる

ウィガン波止場への道 (ちくま学芸文庫)
ジョージ・オーウェル/土屋宏之、上野勇訳
ちくま学芸文庫/1996年
労働者の生活に入り、作家が社会主義者として目ざめる点に興味がある

カール・マルクス―その生涯と思想の形成
E・H・カー/石上良平訳
未來社/1998年
マルクスの存在を、立場を異にする目で書いている

死よ驕るなかれ (1950年) (岩波新書〈第40〉)
ジョン・ガンサー/中野好夫、 矢川徳光訳
岩波新書/1950年
息子の死を通して、死をみつめたジャーナリストの心情がでている

キッシンジャー激動の時代 1
キッシンジャー激動の時代〈2〉火を噴く中東 (1982年)
キッシンジャー激動の時代 3(全3巻)
H・A・キッシンジャー/読売新聞・調査研究本部訳
小学館/1982年
自らの回顧録を残すのが義務との考えで書かれている。20世紀が浮かびあがる

ちょっとピンぼけ
ロバート・キャパ/川添浩史、井上清一訳
文春文庫/1979年
ある写真家が自らを語っていく。そこに20世紀の写真の歴史がある

■『戦争論』(上中下)
カール・フォン・クラウゼヴィッツ/篠田英雄訳
岩波文庫/1968年
戦争論を展開するときは、今なおこの書が下敷きになる

歴史的決断〈上〉 (ちくま学芸文庫)
歴史的決断〈下〉 (ちくま学芸文庫)(上下)
K・R・グリーンフィールド編/中野五郎訳
ちくま学芸文庫/2004年
アメリカの軍事評論家たちが第二次大戦のそれぞれの局面の決断を分析

■『イワン・デニーソヴィチの一日』
アレクサンドル・ソルジェニーツィン/木村浩訳
新潮文庫/2005年
強制収容所での一日の生活を通して政治と人間の闘いを見る

吉田茂とその時代 (上巻) (中公文庫)
吉田茂とその時代〈下〉 (中公文庫)(上下)
ジョン・ダワー/大窪愿二訳
中公文庫/1991年
吉田茂の生と死まで、その全体像を歴史の中に位置づける

天才の通信簿 (講談社文庫)
ゲルハルト・プラウゼ/丸山匠、加藤慶二訳
講談社文庫/1984年
各界の歴史上の人物はどのような学業成績だったのか。その成長を考える

東京裁判―もう一つのニュルンベルク
アーノルド・C・ブラックマン/日暮吉延訳
時事通信社/1991年
UP記者だった著者が30年をかけてまとめた書

コン・ティキ号探検記 (ちくま文庫)
トール・ヘイエルダール/水口志計夫訳
ちくま文庫/1996年
いかだで海をわたることで真の冒険の意味をわからせる

保守主義的思考 (ちくま学芸文庫)
カール・マンハイム/森博訳
ちくま学芸文庫/1997年
保守思想の系譜を辿りながら、それぞれの時代の保守を考える

■『千の太陽よりも明るく 原爆を造った科学者たち』
ロベルト・ユンク/菊盛英夫訳
平凡社ライブラリー/2000年
原爆をつくった科学者たちのその心理のなかにひそむものは何か

ユング自伝―思い出・夢・思想 (1)
ユング自伝―思い出・夢・思想 (2)(全2巻)
C・G・ユング/河合隼雄、藤縄昭、出井淑子訳
みすず書房/1972年
自らの精神遍歴を通して、精神医学の変容を語っている

中国の冬―私が生きた文革の日々
梁恒、ジュディス・シャピロ/田畑光永訳
サイマル出版会/1984年
文革の日々のなかで中国人の生活はどのようなものだったかが理解できる

翼よ、あれがパリの灯だ
C・A・リンドバーグ/佐藤亮一訳
恒文社/1991年
大西洋横断のこの主人公は歴史にふり回されるが、それを前提に読むとわかるところも多い

文明化した人間の八つの大罪
コンラート・ローレンツ/日高敏隆、大羽更明訳
新思索社/1995年
文明化することによって人間は破滅の道への業を背負っていく

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)
E・キューブラー・ロス/鈴木晶訳
中公文庫/2001年
死を迎えたときの人間の記憶はどのようによみがえるかをさぐる


この項、了


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保阪正康のノンフィクション100選:和書その3
※コメントは選者ご本人によるものです

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎
中公文庫/1991年
日本軍の主要な作戦はなぜ失敗したのか。そのからくりを見る

■『昭和史』(Ⅰ・Ⅱ)
中村隆英
東洋経済新報社/1993年
バランスの取れた昭和という時代の通史といえる

原爆はなぜ投下されたか―日本降伏をめぐる戦略と外交 (1971年) (青木文庫)
西島有厚
青木文庫/1971年
原爆投下の本質を日本人の目で検証した最初の書である

昭和ナショナリズムの諸相
橋川文三
名古屋大学出版会/1994年
昭和ナショナリズムを体系だてて論じるための骨格が示される

ある心の自叙伝 (講談社学術文庫 (636))
長谷川如是閑
講談社学術文庫/1984年
言論人として社会をどう見たか。自由人であろうとすることの闘いともいえる

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)(決定版)
半藤一利
文春文庫/2006年
「昭和20年8月15日」を初めて知らしめたノンフィクション

侍従長の回想 (中公文庫)
藤田尚徳
中公文庫/1987年
敗戦をはさんで、天皇の側近が見た天皇と宮中の内容が貴重

細川日記 上 改版 中公文庫 B 1-35 BIBLIO20世紀
細川日記 下 改版 中公文庫 B 1-36 BIBLIO20世紀(上下)
細川護貞
中公文庫BIBLIO20世紀/2002年
近衛文麿の秘書官、高松宮の情報係、旧華族たちの反軍事観が印象的

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)
堀栄三
文春文庫/1996年
大本営情報参謀は決してアメリカに劣ってはいなかったことを裏づける

わたしの山旅 (1968年) (岩波新書)
槇有恒
岩波新書/1968年
山を愛する自由人の心境が時代の空気とは異なった空間を生みだす

上海時代―ジャーナリストの回想〈上〉 (中公文庫)
上海時代―ジャーナリストの回想〈中〉 (中公文庫)
上海時代―ジャーナリストの回想〈下〉 (中公文庫)(上中下)
松本重治
中公文庫/1989年
同盟通信の特派員が見た日中戦争前後の日中関係

絵巻物に見る日本庶民生活誌 (中公新書 (605))
宮本常一
中公新書/1981年
庶民の生活をあらわす絵巻物のなかにそれぞれの階層の姿を見る

女の民俗誌 (岩波現代文庫―社会)
宮本常一
岩波現代文庫/2001年
近代の女性の生き方のなかに伝統の継承と崩壊を見る

ある終戦工作 (中公新書 581)
森元治郎
中公新書/1980年
同盟通信の記者による終戦時の命を賭けた工作がわかる

特攻―外道の統率と人間の条件 (光人社NF文庫)
森本忠夫
光人社NF文庫/2005年
特攻世代が著した同世代の仲間を悼む書。誰かが書かねばならなかった

僕の昭和史 (新潮文庫)
安岡章太郎
新潮文庫/2005年
大正生まれの作家が訥々と語る昭和史の風景

■『近衛文麿』(上下)
矢部貞治
弘文堂/1952年
近衛文麿という昭和の宰相の全貌を史料でえがきだす

道化の民俗学 (岩波現代文庫)
山口昌男
岩波現代文庫/2007年
東西の道化を論じながら、何がそれぞれの文化を具現化するかを問う

回想十年〈1〉 (中公文庫)
回想十年〈2〉 (中公文庫)
回想十年〈3〉 (中公文庫)
回想十年〈4〉 (中公文庫)(全4巻)
吉田茂
中公文庫/1998年
戦後史に名をのこす首相の淡々とした筆調が印象的だ

死の懴悔―或る死刑囚の遺書
吉田大次郎
春秋社/1998年
大正期のアナキストがもっていた直線的な行動は日本人の特性か

零の発見―数学の生い立ち (1979年) (岩波新書)
吉田洋一
岩波新書/1979年
ゼロという概念を人間がもったとき、人類史は変わっていった


「翻訳書」に続く


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保阪正康のノンフィクション100選:和書その2
※コメントは選者ご本人によるものです

■『人間魚雷回天』
神津直次
図書出版社/1989年
回天搭乗員だった学徒兵の体験は何とも痛々しい

びんぼう自慢 (ちくま文庫)
古今亭志ん生
ちくま文庫/2005年
これほど貧しくとも精神の自由は失わない。終戦時のエピソードが秀逸

太平洋戦争 (上) (中公文庫)
太平洋戦争 (下) (中公文庫)(上下)
児島襄
中公文庫/1974年
ジャーナリストが客観的にまとめた太平洋戦争の入門書

逸翁自叙伝―青春そして阪急を語る
小林一三
阪急電鉄総合開発事業本部コミュニケーション事業部/2000年
若き経済人の洒脱さと先見の明が窺える。文人的経済人の書である

考へるヒント
小林秀雄
文藝春秋新社/1964年
青年期に読んで人生を変え、自らの存在を考えることを学ぶ

御前会議 (文春文庫 (115‐11))
五味川純平
文春文庫/1984年
開戦前、御前会議で何が話し合われたかを徹底的に暴く

■『自治民範』
権藤成卿
平凡社/1927年
日本の共同体における社稷の考え方を確認していくことができる

回顧七十年 (中公文庫)
斎藤隆夫
中公文庫/2007年
反骨代議士のその闘いの中から何を学ぶべきかを教えてくれる

堕落論・日本文化私観 他二十二篇 (岩波文庫)
坂口安吾
岩波文庫/2008年
戦後の思想に新しい視点をもちこんだ内容だが、わかりやすいところがいい

復讐するは我にあり
佐木隆三
弦書房/2007年
殺人犯のその破滅的な行動の核に何があったのか。その問いは重い

重光葵―外交回想録 (人間の記録 (7))(人間の記録7)
重光葵
日本図書センター/1997年
戦時下の外相として昭和の外交の実態を正直に語る

私の昭和史 (1974年)
末松太平
みすず書房/1974年
青年将校のシンパが体験した2・26事件の外側の光景

マッカーサーの二千日 (中公文庫)(改版)
袖井林二郎
中公文庫/2004年
マッカーサーという日本占領の最高責任者の素顔が初めて描かれた

戦死―インパール牽制作戦 (文春文庫 (151‐3))
高木俊朗
文春文庫/1984年
軍人(高級指揮官)の性格によってどれだけの悲劇が生まれるかを明かす

二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)
高橋正衛
中公新書/1994年
二・二六事件の全体図を説いた入門書

敗戦日記 (中公文庫BIBLIO)
高見順
中公文庫BIBLIO20世紀/2005年
作家の冷静な筆調が日本の敗戦時の様子を描きだす

日本とアジア (ちくま学芸文庫)
竹内好
ちくま学芸文庫/1993年
日本はアジアに対して過ちを犯したか。ナショナリズム再考の書である

政治家の文章 (岩波新書)武田泰淳
岩波新書/1960年
何人かの政治家の文章をもとにその政治家の人間性を見ていく

■『日本愛国革新本義』
橘孝三郎
建設社/1932年
農本主義者はいかにしてナショナリズムの視点に立ったかがわかる

機密日露戦史
谷壽夫
原書房/2004年
日露戦争で真に語り継ぐべきは何だったのか。それが歪められたのはなぜか。それが本書でわかる

日本海軍の戦略発想
千早正隆
プレジデント社/2008年
若い海軍士官が敗戦直後にまとめた日本海軍の誤り

伝説の時代―愛と革命の二十年 (1980年)
寺尾とし
未來社/1980年
共産主義思想に賭けていく女性たちのその時代を見る

「甘え」の周辺
土居健郎
弘文堂/1987年
「甘え」とは何か。それはあらゆる人間関係にどうあらわれるかを見る

時代の一面―東郷茂徳外交手記
東郷茂徳
原書房/2005年
開戦と敗戦それぞれに外相だった著者の残した歴史的回想記

徳富蘇峰―蘇峰自伝 (人間の記録 (22))(人間の記録22)
徳富蘇峰
日本図書センター/1997年
近代日本を生き抜いた蘇峰がある年代までの自己を見つめる


「和書その3」に続く


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保阪正康のノンフィクション100選:和書その1
※コメントは選者ご本人によるものです

非常民の民俗文化―生活民俗と差別昔話 (ちくま学芸文庫)
赤松啓介
ちくま学芸文庫/2006年
日本の下層社会の人々のありのままの生活感が出ている

平民社時代 (中公文庫 M 42)
荒畑寒村
中公文庫/1977年
日本の社会主義思想の草分け時代を人間模様で捉えている

東京裁判への道(上) (講談社選書メチエ)
東京裁判への道(下) (講談社選書メチエ)(上下)
粟屋憲太郎
講談社選書メチエ/2006年
最新の資料を使って東京裁判までの被告選定の経緯を明かす

苦海浄土―わが水俣病 (講談社文庫)(新装版)
石牟礼道子
講談社文庫/2004年
公害のもつ悲劇とそれが人災であることを明かした歴史的な書である

太平洋戦争日記 (1)
太平洋戦争日記 (2)
太平洋戦争日記 (3)(全3巻)
伊藤整
新潮社/1983年
作家の戦時下の日記。戦況に一喜一憂するところがよい

花々と星々と (中公文庫 M 7)
犬養道子
中公文庫/1974年
祖父犬養毅のテロ事件のとき七歳の少女。彼女は何を思って育ったか

■『昭和史』
今井清一、遠山茂樹、藤原彰
岩波新書/1955年
戦後の論壇をリードした昭和史論。唯物史観の立場である
私記・一軍人六十年の哀歓 (1970年)
今村均
芙蓉書房/1970年
軍人として正直に生きた人物の自省を交えてのその生活

辻の華―くるわのおんなたち (中公文庫)
上原栄子
中公文庫/1984年
沖縄の遊郭がもつ共同体にも似たつながりの強さに打たれる
あゝ祖国よ恋人よ―きけわだつみのこえ 上原良司
上原良司
信濃毎日新聞社/2005年
特攻として逝った学徒兵の遺稿集。自由主義者としての誇りある死

余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)
内村鑑三
岩波文庫/1958年
日本の知識人による宗教的体験を本格的に語っている
日中十五年戦争と私―国賊・赤の将軍と人はいう (1974年)
遠藤三郎
日中書林/1974年
戦後、非武装中立を主張した元軍人の昭和の戦争での処し方

二・二六事件への挽歌―最後の青年将校 (1971年)
大蔵栄一
読売新聞社/1971年
青年将校のシンパの見た事件までの道筋と事件の裏側

日本語はどこからきたのか―ことばと文明のつながりを考える (中公文庫)
大野晋
中公文庫/1999年
日本語の由来を辿ることで、私たちは新たな視点をもつ

原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈上〉 (岩波文庫)
原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈下〉 (岩波文庫)(上下)
長田新編
岩波文庫/1990年
原爆に被災した子供たちの手記を同世代として忘れてはいけない

近衛内閣 (中公文庫 M 185)
風見章
中公文庫/1982年
近衛内閣の書記官長だった人物の近衛を見つめる目の温かさ

新版 日本のヤクザ
加太こうじ
大和書房/1993年
日本のアウトローを歴史のなかに位置づけている。ユニークな見方である

夢酔独言 他 (平凡社ライブラリー)
勝小吉
平凡社ライブラリー/2000年
辛口の口調で語る人生修養へつながる書。重みがある

現代史の課題 (岩波現代文庫)
亀井勝一郎
岩波現代文庫/2005年
唯物史観に異議を申し立てた評論家の現代史観。独自の見方の部分もある

サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書 (同時代ライブラリー)
亀井俊介
岩波同時代ライブラリー/1992年
大衆に愛される演芸の発達のなかに人類の芸能への関心を見る

三光―日本人の中国における戦争犯罪の告白 (1957年) (カッパ・ブックス)
神吉晴夫編
光文社カッパ・ブックス/1957年
日本軍が中国で行った作戦。その手記はある時代には大問題に

■『日本改造法案大綱』
北一輝/西田税
1926年
若き革命家の冷徹な革命プログラム。その怖さはあまり知られていない

側近日誌
木下道雄
文藝春秋/1990年
敗戦直後の侍従次長が天皇を見つめた記録になっている

暗黒日記〈1〉 (ちくま学芸文庫)
暗黒日記〈2〉 (ちくま学芸文庫)
暗黒日記〈3〉 (ちくま学芸文庫)(全3巻)
清沢洌/橋川文三編
ちくま学芸文庫/2002年
戦時下の外交評論家が見つめているリベラリズムの社会観


「和書その2」に続く


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保阪正康

ノンフィクション100冊選考にあたり
奇妙なアンバランスを抱えたリスト

 私にとって、ベスト・ノンフィクション(厳密に言えば非ノンフィクションもあるのだが)とは、記憶に残る作品という意味だ。一時期、明治・大正の作品を集中的に読んだことがあるが、記憶に残る作品はそれほど多くはなかった。確かに陸羯南(くがかつなん)、中江兆民、矢野龍渓、それに木下尚江、横山源之助などの著作もあげたかったが、私の関心事である昭和史のノンフィクションを中心にリストをつくってみた。
 ここにあげた昭和史関連の著作は、その視点、構成、記述などでなんらかの形で記憶に残っている。たとえば森本忠夫の『特攻』などは、まるで著作自体が墓碑銘の如くである。堀栄三の『大本営参謀の情報戦記』は、大本営にもこういう参謀がいたのかと驚かされる内容だ。和田洋一(私の恩師だが)の『灰色のユーモア』は戦時下に特高警察の取り調べを受けたときのやりとりが何よりも面白い。私の考えでは、ただ一つでもいいから心に止まる何かがあれば、それがベストなのである。逆に言えば、いくつも心に残ったり、無数の教えを受けた著作はベストとはならない。なぜならそれは自分の骨肉の一部となっていて、傍観者然として論じることができないからだ(もっともそういう書は少ない)。
 外国人作家の作品については、青年期に読んで忘れられない作品(『世界をゆるがした十日間』『カタロニア讃歌』など)と、こういうテーマをこのような手法で書きたいとの思いのある作品(『死よ驕るなかれ』『現代史(上・下)』)をあげた。トルーマン・カポーティの『冷血』なども印象に残っているが、あのような手法では書けないと思うので省いた。私はアメリカ文学に関心を持っているが、たとえばスタインベックが採りあげたテーマは日本的ノンフィクションになると考えている。
 こうしてベスト100を並べてみると、私の関心は奇妙なアンバランスを抱えていることに気づく。あえて自己弁護風に言えば、だからジャーナリズムの世界で棲息できるのかもしれない。



保阪正康のノンフィクション100選:ベスト10
※コメントは選者ご本人によるものです

ある昭和史―自分史の試み (中公文庫 M 24-2)
色川大吉
中公文庫/1978年
満州事変から太平洋戦争、〈戦争〉を挟んで自らの人生の歩みと心情を綴っているのだが、この書は自分史、時代回想記の範となる書だ。「この本のどこかに読者がいる。あなたがいる」との姿勢に共鳴を覚える

宇宙からの帰還 (中公文庫)
立花隆
中公文庫/1985年
20世紀を代表するノンフィクション作品。日本からこのような作品が生まれたことを誇りとする。宇宙飛行士たちの宇宙体験は私たちの心底に眠る地球の生命体としての本能に気づかせてくれる

あるおんな共産主義者の回想 (1982年)
福永操
れんが書房新社/1982年
思想に殉じるとはどういうことか。一途に思想に入りこんでいく女性の姿に、戦慄さえ覚えるが、理屈より直観を大切にしての思想運動は20世紀の反体制運動のある一面を代弁しているのではないか

昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈2〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈3〉 (文春文庫)
昭和史発掘 (4) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 (5) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 6 (文春文庫)
昭和史発掘 (7) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 8 (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 9 (文春文庫)
(全9巻)
松本清張
文春文庫/2005年
二・二六事件に関するあらゆる資料を揃え、それをもとにこの事件の本質を浮かびあがらせる。著者は同時代人として、この事件の入り組んだ層を理解したうえで、独自の視点を打ちだしている。基本的文献である(新装版)

旅人―ある物理学者の回想 (角川文庫ソフィア)
湯川秀樹
角川ソフィア文庫/1960年
科学者には感性が大切だということを教えてくれる。精緻な文体で、自らの半生をえがいているのだが、「私は孤独な散歩者だった」という表現が胸を打つ。常に読み返したくなる貴重な書でもある

戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)
吉田満
講談社文芸文庫/1994年
日本の象徴ともいうべき戦艦「大和」は、昭和20年4月の沖縄特攻に出撃するが、その途次、アメリカ軍の猛攻撃を受けて沈没する。乗り合わせていた学徒兵が見た極限の人間模様とは何だったのか。重い告発だ

灰色のユーモア―私の昭和史ノォト (1974年)
和田洋一
理論社/1974年
著者は、戦時下に治安維持法違反で逮捕された京都の大学教員。特高刑事の取り調べに困惑しながら答える著者の言は、まさにブラックユーモアである。治安維持法の不気味さがよくでている

カタロニア讃歌 (ちくま学芸文庫)
ジョージ・オーウェル/橋口稔訳
ちくま学芸文庫/2002年
スペイン戦争に共和国政府側の義勇兵として参加したジャーナリストのドキュメントだが、その政府側にもさまざまな考えや対立があり、結果的に反政府のフランス軍に敗れる。その内部抗争も明かしている

現代史〈上〉
現代史〈下〉(上下)
ポール・ジョンソン/別宮貞徳訳
共同通信社/1992年
イギリスの歴史家であり、ジャーナリストでもある著者は、客観的、実証的に20世紀の全体図をえがいている。アインシュタインやフロイトから始まる20世紀の意味がよく説明されていてわかりやすい

世界をゆるがした十日間〈上〉 (岩波文庫)
世界をゆるがした十日間〈下〉 (岩波文庫)(上下)
ジョン・リード/原光雄訳
岩波文庫/1957年
ロシア革命を実際に目撃したアメリカ人ジャーナリストの歴史的ノンフィクション。レーニンを中心とする革命勢力がどのように権力をにぎっていくか、世界で初めての共産革命の内実がわかる


「和書その1」に続く
保阪正康

○ノンフィクション作家
Profile
ほさか まさやす
1939年生まれ。同志社大学卒。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。2004年、一連の昭和史研究によって、菊池寛賞受賞。昭和史研究と並行して、医療問題の取材にも取り組んでいる。『大学医学部の危機』(講談社文庫)、『あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書』(新潮新書)、『〈敗戦〉と日本人』(ちくま文庫)、『昭和陸軍の研究(上・下)』(朝日文庫)など著書多数

My Bookmark
「インターネットは使わない(ただし、必要なときは私の主宰する研究会のメンバーが調べてくれる)」


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原武史のノンフィクション100選:翻訳書
※コメントは選者ご本人によるものです

明治天皇〈1〉 (新潮文庫)
明治天皇〈2〉 (新潮文庫)
明治天皇〈3〉 (新潮文庫)
明治天皇〈4〉 (新潮文庫)
ドナルド・キーン/角地幸男訳
新潮文庫/2007年
和歌の解析を通して明治天皇の生涯を描こうとする手法が斬新だ

ニッポン日記 (ちくま学芸文庫)
マーク・ゲイン/井本威夫訳
ちくま学芸文庫/1998年
占領期に米国のジャーナリストが見た東京や地方の実態が細かく記録されている

もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書)
コンスタンチン・サルキソフ/鈴木康雄訳
朝日選書/2009年
日本海海戦をロシア側から見るとこうなる

アドルフ・ヒトラー〈1〉ある精神の形成 (集英社文庫)
アドルフ・ヒトラー〈2〉仮面の戦争 (集英社文庫)
アドルフ・ヒトラー〈3〉第二次世界大戦 (集英社文庫)
アドルフ・ヒトラー〈4〉奈落の底へ (集英社文庫)
ジョン・トーランド/永井淳訳
集英社文庫/1990年
ヒトラーと鉄道の密接な関わりを考える上で欠かせない

天皇の逝く国で
ノーマ・フィールド/大島かおり訳
みすず書房/1994年
昭和から平成にかけて全国を覆った「天皇制の全体主義」に抗する三人の足跡を丹念に追う筆致にひかれた

毛沢東の私生活〈上〉 (文春文庫)
毛沢東の私生活〈下〉 (文春文庫)
李志綏/新庄哲夫訳
文春文庫/1996年
毛沢東が乗る列車にダイヤは存在しない。戦前の御召列車との違いがよくわかった


この項、了


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原武史のノンフィクション100選:和書その4
※コメントは選者ご本人によるものです

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)
摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)
永井荷風
岩波文庫/1987年
やっぱり挙げてしまった。敗戦直後の京成沿線の風景描写が、荷風の心象風景と重なっている

常盤平団地発信 孤独死ゼロ作戦―生きかたは選べる!
中沢卓実/結城康博監修
本の泉社/2008年
総戸数5000戸以上、全戸賃貸ながら自治会が建て替えを拒否した常盤平団地自治会で、孤独死の問題に先駆的に取り組む現場からの貴重な記録

満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎
中田整一
幻戯書房/2005年
まだこんな資料が埋もれていたとは知らなかった。溥儀という人物の深淵が垣間見えた

新編「昭和二十年」東京地図 (ちくま文庫)
西井一夫、平嶋彰彦
ちくま文庫/1992年
地図と写真を通して、1945年の東京と1987年の東京を往還する手法の斬新さにひかれた

西山光一日記 1925‐1950年―新潟県一小作農の記録
西山光一
東京大学出版会/1991年
新潟の小作農の日記。ふだんは農作業について淡々と記述しているのに、即位礼当日になるとがらりと変わる

倫敦!倫敦? (岩波文庫)
長谷川如是閑
岩波文庫/1996年
鉄道から都市を観察するという視点は、おそらくこの書が初めて確立したのではないか

放浪記 (新潮文庫)
林芙美子
新潮文庫/1979年
芙美子といえば尾道。山陽本線が尾道の街に入ってくる風景だけは、いまも昔も変わらない

大本襲撃―出口すみとその時代
早瀬圭一
毎日新聞社/2007年
第二次大本事件で検挙された出口王仁三郎とその妻、すみの闘いを多角的に描く

聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎 (PHP文庫)
半藤一利
PHP文庫/2006年
昭和天皇が終戦をはっきりと決断したのは、1945年6月に大宮御所で皇太后と会ってからだという推理に唸らされる

新ウイルス物語―日本人の起源を探る (中公新書 (789))
日沼頼夫
中公新書/1986年
成人T細胞白血病のキャリア分布が偏っていることに気づいて隠岐を訪れた著者の仮説が、古老の一言によって覆る

■『相模湾産ヒドロ虫類』
裕仁
皇居内生物学研究所/1988年
太平洋戦争が勃発した1941年、昭和天皇が4度も葉山御用邸に足を運び、採集に熱中した生物の正体はこれだったのか

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
福岡伸一
講談社現代新書/2007年
ノンフィクション、エッセイ、学術作品。どう呼んでも違和感のない不思議な本

建築探偵の冒険〈東京篇〉 (ちくま文庫)
藤森照信
ちくま文庫/1989年
平明な言葉でさまざまな空間の本質をぴしゃりと言い当てる視点がすごい。拙著『皇居前広場』はここから生まれた

■『学問へのひとつの道 働くことと学ぶこと』
藤原保信/藤原貞子
(私家版)/1995年
長野県安曇野で農業高校に通い、上京して紡績会社に勤めながら夜間の大学に通った青年が、日本を代表する政治学者の一人になるまでの足跡

箱族の街
舟越健之輔
新潮社/1983年
1973年3月の上尾事件の背景に、埼玉県随一の団地都市だった上尾市の住宅事情があったことがわかる

追いつめられた信徒―死なう団事件始末記 (講談社文庫)
保阪正康
講談社文庫/1990年
私にとっての「保阪昭和史学」との最初の出会い。「死なう団」の存在を初めて知った

天皇が十九人いた―さまざまなる戦後 (角川文庫)
保阪正康
角川文庫/2001年
かつての自称天皇を探してあちこちを取材する手法にノンフィクションの王道を感じた

チンチン電車と女学生
堀川惠子、小笠原信之
日本評論社/2005年
女子学生、原爆、路面電車の接点。路面電車が原爆ドームの目の前を走る風景はいまも残っている

本庄日記
本庄繁
原書房/2005年
二・二六事件に対する昭和天皇の怒りを生々しく記述

日本の黒い霧〈上〉 (文春文庫)
日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)
松本清張
文春文庫/2004年
いまとなっては破綻した推理もあるが、その推理そのものが魅力でもある

昭和天皇最後の側近 卜部亮吾侍従日記 第1巻 昭和45年~59年
昭和天皇最後の側近卜部亮吾侍従日記 第2巻 昭和60年~昭和61年
昭和天皇最後の側近 卜部亮吾侍従日記 第3巻 昭和62年~昭和63年
昭和天皇最後の側近卜部亮吾侍従日記 第4巻 昭和64年~平成2年
昭和天皇最後の側近 卜部亮吾侍従日記 第5巻 平成3年~平成14年
御厨貴、岩井克己監修
朝日新聞社/2007年
昭和から平成にかけての多摩田園都市の開発がいかにすさまじかったかがわかる

木村伊兵衛と土門拳 写真とその生涯 (平凡社ライブラリー)
三島靖
平凡社ライブラリー/2004年
二人の対照的な写真家が撮影した大量の写真を通して、昭和の日本が浮かび上がる

増補版 時刻表昭和史 (角川文庫)
宮脇俊三
角川文庫/2001年
著者が乗った列車を通して見た昭和初期の記憶が語られる。山形県の今泉で玉音放送を聞く場面が圧巻

最長片道切符の旅
宮脇俊三
新潮社/2008年
1978年、国鉄のローカル線から見えた日本列島の秋の風景は、もう二度と戻ってこない

女官 (1960年)
山川三千子
実業之日本社/1960年
昭憲皇太后に仕えた女官の体験記。遠眼鏡事件に対する貴重な証言もある

椿の局の記 (近代文芸社新書)
山口幸洋
近代文芸社新書/2000年
元高等女官へのインタビュー記録。大正天皇を押しこめられた天皇と語るのが興味深い

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
湯浅誠
岩波新書/2008年
政治思想史研究と反貧困ネットワーク運動の見事な結節点

月島物語 (集英社文庫)
四方田犬彦
集英社文庫/1999年
私も一度でいいからこんな東京のど真ん中に浮かぶ島に住んでみたい


「翻訳書」に続く


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原武史のノンフィクション100選:和書その3
※コメントは選者ご本人によるものです

■『佐藤榮作日記』(全6巻)
佐藤榮作
朝日新聞社/1997年
佐藤栄作という人は、本当に昭和天皇のことが好きだったことがわかる

自壊する帝国 (新潮文庫)
佐藤優
新潮文庫/2008年
『国家の罠』同様、深く溜め込んだ記憶を一気に吐き出す佐藤優の圧倒的な力にただただ恐れ入る

阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)
佐野眞一
新潮文庫/2008年
「満州国」の闇の部分を鮮やかに浮かび上がらせる気迫と執念に脱帽

旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三 (文春文庫)
佐野眞一
文春文庫/2009年
柳田國男や折口信夫に比べて評価が低かった民俗学者、宮本常一に対する著者の熱い思いが胸を打つ

安田講堂 1968‐1969 (中公新書)
島泰三
中公新書/2005年
あの「紛争」をいまだになかったことにしている当事者が多いなか、沈黙を破った勇気に何はともあれ敬意を表する

メディアの興亡〈上〉 (文春文庫)
メディアの興亡〈下〉 (文春文庫)
杉山隆男
文春文庫/1998年
私が一時、日本経済新聞社の記者だったのは、この本からの影響が大きい

高松宮日記〈第1巻〉
高松宮日記〈第2巻〉
高松宮日記 (第3巻)
高松宮日記〈第4巻〉
高松宮日記〈第5巻〉
高松宮日記〈第6巻〉
高松宮日記 (第7巻)
高松宮日記〈第8巻〉
高松宮宣仁
中央公論新社/1996年
靖国神社の宮司の「忠告」を無視して、よくぞ出してくれた。戦後篇ももっと出してほしい

敗戦日記 (文春文庫)
高見順
文春文庫/1991年
占領期の横須賀線車内で見られる米国人、日本人女性、日本人男性の人間模様に対する観察が秀逸

宮中賢所物語―五十七年間皇居に暮らして
高谷朝子
ビジネス社/2006年
宮中祭祀に奉仕する巫女、内掌典の世界を初めて赤裸々に語った衝撃は大きい
団地ママ奮戦記 (1976年) (新日本新書)
滝いく子
新日本新書/1976年
1960年代の東京郊外の団地の実態を、一主婦の視点から描く

転形期―戦後日記抄 (1974年)
竹内好
創樹社/1974年
都立大を辞めた後の60年代前半の日記が面白い。安保闘争には負けたのに、在野になってかえってさっぱりした気分が、文章に漂っている

日本共産党の研究 (1) (講談社文庫)
日本共産党の研究 (2) (講談社文庫)
日本共産党の研究 (3) (講談社文庫)
立花隆
講談社文庫/1983年
「文藝春秋」に連載され、単行本化されなかった「不破・上田兄弟論」の原点として読んだ

東北日記 (1の巻)
東北日記 (2の巻)


■『東北日記』(全8巻)
月の家
あいぜん出版/1999年
昭和天皇の即位にぶつける形で、植民地を含む全国を回った鬼才の歌日記

命あまさず―小説 石田波郷 (ハルキ文庫)
辻井喬
ハルキ文庫/2005年
詩人にして西武の一時代をつくった辻井喬が、俳人にして西武沿線の結核療養所に長く住んだ石田波郷の生涯を描いた傑作

父の肖像〈上〉 (新潮文庫)
父の肖像〈下〉 (新潮文庫)
辻井喬
新潮文庫/2007年
小説ではある。しかし西武の社史すらもない現在、堤康次郎と堤清二の複雑な親子関係をこれほど深く描いた文章はほかにない

苦闘三十年 (1962年)
堤康次郎
三康文化研究所/1962年
どんな美人でも臭い糞はすると言い放ち、「黄金電車」を走らせたことを得々と語るこの経営者の「哲学」はどこにあるのか

日米交換船
鶴見俊輔、加藤典洋、黒川創
新潮社/2006年
第二次大戦中に稀有な体験をした一日本人のオーラルヒストリー

昭和天皇独白録 (文春文庫)
寺崎英成、マリコ・テラサキ・ミラー
文春文庫/1995年
昭和天皇の貴重な肉声を活字にしたものだが、この独白録をどこまで信じたらいいのか、正直言ってためらわれるところがある

遠山啓著作集〈別巻 1〉日記抄+総索引 (1983年)
遠山啓
太郎次郎社/1983年
1970年代、「ひと」を発刊し、水道方式を普及させるために各地を歩いた数学者の足跡が興味深い

徳富蘇峰 終戦後日記ーー『頑蘇夢物語』
徳富蘇峰 終戦後日記IIーー『頑蘇夢物語』続篇
徳富蘇峰 終戦後日記 (3) 『頑蘇夢物語』歴史篇
徳富蘇峰 終戦後日記 (4) 『頑蘇夢物語』完結篇
徳富蘇峰
講談社/2006年
あれだけ自分が煽った戦争に負け、80代になってなお意気盛んな精力は不気味なほどである

昭和二十年 第一部 (1) 重臣たちの動き 【1月1日~2月10日】
鳥居民
草思社/1985年
私と見方は違うが、この時期の皇太后(貞明皇后)の動きに注目しているのは鋭い


「和書その4」に続く


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原武史のノンフィクション100選:和書その2
※コメントは選者ご本人によるものです

入江相政日記〈第1巻〉昭和十年一月~昭和十四年十二月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第2巻〉昭和十五年一月~昭和二十年八月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第3巻〉―昭和二十年九月~昭和二十二年十二月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第4巻〉―昭和23年1月~昭和25年12月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第5巻〉 (朝日文庫)
入江相政日記〈第6巻〉昭和三十三年二月~昭和四十年十二月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第7巻〉昭和41年1月~昭和44年12月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第8巻〉昭和45年1月~昭和47年12月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第9巻〉 (朝日文庫)
入江相政日記〈第10巻〉 (朝日文庫)
入江相政日記〈第11巻〉昭和五十五年一月~昭和五十七年十二月 (朝日文庫)
入江相政日記〈第12巻〉昭和五十八年一月~昭和六十年九月 (朝日文庫)
入江相政/朝日新聞社編
朝日文庫/1994年
60年代から70年代にかけて、宮中で起こった「魔女問題」が目を引く

戦後革命論争史〈上巻〉 (1956年) (戦後日本の分析)
戦後革命論争史〈下巻〉 (1957年) (戦後日本の分析)
上田耕一郎
大月書店/1956年
中野で地域活動に励み、構造改革派に属していた時代の上耕の記念碑的著作

マルクス主義と現代イデオロギー (1979年)
上田耕一郎、不破哲三
大月書店/1979年
1960年代に入ってからの、上田、不破兄弟の「変貌」がよくわかる。『戦後革命論争史』と併せて読みたい

秘境駅へ行こう! (小学館文庫)
牛山隆信
小学館文庫/2001年
日本にはこんな駅がいまでもあることを気づかせてくれた功績は大きい

第一阿房列車 (新潮文庫)
内田百けん
新潮文庫/2003年
ヒマラヤ山系を同伴しての汽車旅は、鉄道から見た1950年代の日本各地の姿を活写している

班のある学級―大西忠治実践記録集 第2部 (1964年)
大西忠治
明治図書/1964年
1960年代、「班」を小中学校に本格的に導入した一教師の実践論

■『有名中学合格!』
大森篤子
講談社/1976年
長男と次男の双方を東京教育大附属駒場中学に合格させた元祖教育ママの貴重な体験記

梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和 (小学館文庫)
小田部雄次
小学館文庫/2008年
(元)女性皇族の日記は珍しい。玉音放送を聞いた日の憤怒が、当時の日本人一般の反応とは極めて異なっている

一殺多生―血盟団事件・暗殺者の手記 (1974年)
小沼正
読売新聞社/1974年
茨城県大洗出身の純朴な青年が、テロリストへと「成長」してゆくまでの回想記

平成ジャングル探検 (講談社文庫)
鹿島茂
講談社文庫/2007年
れっきとした大学教授が、東京の風俗店をあちこち歩いてその実態をルポした危険行為に感嘆する

羊の歌―わが回想 (1968年) (岩波新書)
加藤周一
岩波新書/1968年
没後に読み返してみると、これもまたノンフィクションと文学を架橋した作品だったと実感する

六ケ所村の記録―核燃料サイクル基地の素顔 (講談社文庫)
鎌田慧
講談社文庫/1997年
ふるさと青森に対する著者の熱き思いが20年にわたる不屈の取材を可能にした

教祖誕生 (講談社文庫)
上之郷利昭
講談社文庫/1994年
新興宗教のルポ物としては初期のものだろう。著者は明治学院大学出身のノンフィクション作家として唯一かもしれない

天然痘が消えた (1982年) (中公新書)
北村敬
中公新書/1982年
1970年代にインドに派遣され、現地の風俗・習慣に悩まされながら天然痘を根絶させるまでの悪戦苦闘が伝わってくる

木戸幸一日記 上巻 (1)
木戸幸一日記 下巻 (2)
木戸日記研究会校訂
東京大学出版会/1966年
この日記は何度読み返してもやっぱり面白い。戦中期の皇太后と昭和天皇の関係を知る上でも数多くの貴重な記述がある

編集者 国木田独歩の時代 (角川選書)
黒岩比佐子
角川選書/2007年
専門分化がまだ進んでいなかった20世紀初頭の日本を鮮やかに照射

将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事情
国分隼人
新潮社/2007年
金日成と鉄道の深い関係に初めてメスを入れた一冊。付録のDVDも見ごたえがある

■『小林一三日記』
小林一三
阪急電鉄/1991年
太平洋戦争末期、空襲でボコボコにされた阪急沿線を丹念に視察する創業者の姿に感銘を受けた

逸翁自叙伝―青春そして阪急を語る
小林一三
阪急電鉄総合開発事業本部コミュニケーション事業部/2000年
サラリーマンが郊外の分譲住宅地から定期券で通勤するライフスタイルはここから始まった

安吾新日本地理 (河出文庫)
坂口安吾
河出文庫/1988年
いまだ敗戦の傷が癒えぬ日本各地を訪れ、見たまま、聞いたままを記した貴重な記録

あさま山荘1972〈上〉
あさま山荘1972〈下〉
坂口弘
彩流社/1993年
拙著『滝山コミューン一九七四』を書く際の道標となった作品


「和書その3」に続く


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原武史のノンフィクション100選:和書その1
※コメントは選者ご本人によるものです

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈上〉 (ちくま文庫)
わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)
愛新覚羅溥儀/小野忍ほか訳
ちくま文庫/1992年
嘘をついているという意味ではノンフィクションではない。しかし、その嘘から昭和史の一齣が浮かび上がるという意味ではすぐれたノンフィクションである

アーロン収容所 (中公文庫)
会田雄次
中公文庫/1973年
「やっぱり、とうとう書いてしまったのか」という冒頭の一文が重い。学者が記した貴重なノンフィクション作品

南蛮阿房列車 (光文社文庫)
阿川弘之
光文社文庫/2007年
狐狸庵、マンボウを同伴しての珍道中に、中学、高校時代の私は幾度笑わされたか

朝倉毎人日記〈大正15年~昭和8年〉 (1983年) (近代日本史料選書〈9-1〉)
朝倉毎人日記 (昭和9年~昭和11年) (近代日本史料選書 (9‐2))
朝倉毎人日記 昭和12年~昭和15年6月 (近代日本史料選書)
朝倉毎人日記 昭和15年7月~昭和17年 (近代日本史料選書)
朝倉毎人日記〈昭和18年~昭和20年〉 (近代日本史料選書)
朝倉毎人日記〈昭和21年・自伝草稿・関係書簡〉 (近代日本史料選書)
朝倉毎人/阿部武司ほか編
山川出版社/1983年
政府が定めた「国民奉祝の時間」や「全国民黙祷時間」に忠実に従う経済人の姿が何ともおかしい

ヒトラー全記録―20645日の軌跡
阿部良男
柏書房/2001年
ヒトラーの自決までの日々の記録。眺めているだけで飽きない

寒村自伝〈上巻〉 (1975年) (岩波文庫)
寒村自伝〈下巻〉 (1975年) (岩波文庫)
荒畑寒村
岩波文庫/1975年
明治社会主義者のなかで最も長く生きた人物の自伝。大学時代に読み、岩波文庫に入ったことを素直に喜ぶ無邪気さに好感をもった

三島由紀夫「日録」
安藤武
未知谷/1996年
三島由紀夫の日記に代わり得る、自決までの日々の記録。三島に言及することが多いので愛用している

人間革命〈第1巻〉 (1965年)
新・人間革命 (第1巻) (聖教ワイド文庫 (011))
池田大作
聖教新聞社/1965年、2003年
小説の体裁をとっているが、創価学会の歴史を知る上には欠かせない

若き日の日記 (1) (聖教ワイド文庫 (021))
若き日の日記〈2〉 (聖教ワイド文庫)
若き日の日記 (3) (聖教ワイド文庫 (023))
若き日の日記 (4) (聖教ワイド文庫 (024))
池田大作
聖教ワイド文庫/2005年
池田大作が戸田城聖にいかに私淑していたかがわかる。この日記が「若き日」に書かれたままの文章であることを信じたい

Emperor of Japan
伊奈英次
Nazraeli Press/2008年
神武から昭和までの天皇陵の写真集。忘れられた時代の記憶がここにある

兵役を拒否した日本人―灯台社の戦時下抵抗 (岩波新書)
稲垣真美
岩波新書/1972年
明石順三率いる灯台社の戦時下における苛烈な抵抗に胸を打たれる

パンツが見える。―羞恥心の現代史 (朝日選書)
井上章一
朝日選書/2002年
こういう研究を真面目にやることで成り立つノンフィクションもあることを教わった

ペルソナ―三島由紀夫伝 (日本の近代猪瀬直樹著作集 2)
猪瀬直樹
小学館/2001年
猪瀬自身が明大大学院出身ということもあり、三島と橋川文三の関係を重視しているところに魅力を感じた

ミカドの肖像 (小学館文庫)
猪瀬直樹
小学館文庫/2005年
いろいろ言いたいこともあるが、プリンスホテルと皇族の関係に光を当てた功績はやはり認めねばなるまい


「和書その2」に続く


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原武史のノンフィクション100選:ベスト10その2
※コメントは選者ご本人によるものです

田中角栄研究―全記録 (上) (講談社文庫)
田中角栄研究―全記録 (下) (講談社文庫)立花隆
講談社文庫/1982年
私がまだ小学生のとき、立花隆がすでに「田中角栄研究」を月刊「文藝春秋」に掲載していたのは驚きである。ノンフィクションが現実の政治を動かした記念碑的著作に敬意を表さずにいられない

ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行(新装版)
都築響一
アスペクト/2001年
日本には、こんなにたくさんのいかがわしいスポットがあったのかと、ひたすら感心させられる

昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈2〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈3〉 (文春文庫)
昭和史発掘 (4) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 (5) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 6 (文春文庫)
昭和史発掘 (7) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 8 (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 9 (文春文庫)
松本清張
文春文庫/2005年
二・二六事件に収斂する昭和史の流れとは別に、島津ハル事件、神政龍神会事件、皇太后と昭和天皇の確執など、宮中に絡む不穏な動きを察知する清張の視点が鋭い(新装版)

時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))
宮脇俊三
角川文庫/1984年
1977年に国鉄全線完乗を達成するまでの真面目にしてユーモラスな記録。私個人にとってのノンフィクションの原点

アンダーグラウンド (講談社文庫)
村上春樹
講談社文庫/1999年
これもまた『レイテ戦記』同様、すぐれた小説家がすぐれたノンフィクション作家であることを示す見本と言える


「和書その1」に続く


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原武史

ノンフィクション100冊選考にあたり
私にとって絶対に外せない本

 まことに茫漠とした「ノンフィクション」の大海のなかからなにを選ぶか。私がその条件としたのは、以下のようなものだ。
1 20世紀以降に刊行され、20世紀以降を対象としている。
2 特別に意味があるものを除いて、純粋な学術書は除く。
3 他の選者が選びそうにないものであっても、迷わずに選ぶ。
4 内容によっては小説も可とする。
 もちろん、そうは言っても、必ず入ってくる作品というのはある。松本清張や立花隆などの作品がそれに当たるだろう。だが、ここで選んだ100の作品のなかには、いまや絶版となり、完全に忘れ去られたものも少なくない。
 私の専門が政治思想史であるため、近現代の天皇制や日本共産党、創価学会などの新興宗教に関するものが多くなってしまった。これも挙げればきりがないが、全体のバランスを踏まえ、特におもしろいと思われるものだけを挙げている。
 鉄道関係の本が多いのは、完全に私の趣味である。内田百?、阿川弘之、宮脇俊三の「古典」だけでなく、私鉄経営者の回想なども入れた。教育、団地関係の本は、拙著『滝山コミューン一九七四』を書くさいにかなり読みあさった。自然科学では昭和天皇や福岡伸一のほかに、ウイルス関係の本が若干混じっているが、これは父親がウイルス学者だったせいで一時期読んでいたからで、いわば「昔とった杵柄」である。
 ぴったり100の枠におさめるのはどうしても難しい。あれもあったな、これもあったなと思い出すたびに、何度も入れ替えてしまった。おそらく、これからも思い出すだろう。他の選者からは、なぜこんなものが入っているのかとお叱りを受けることも覚悟している。しかし、他人にとってはどうでもよくても、自分にとっては重大な本というのはある。それを外すわけにはいかなかった。


原武史のノンフィクション100選:ベスト10その1
※コメントは選者ご本人によるものです

続 わが異端の昭和史
石堂清倫
勁草書房/1990年
戦後の日本共産党の歩みを知る上で欠くべからざる一冊。ぶれない石堂清倫とぶれてゆく党中央との対比が面白い

愛の空間 (角川選書)
井上章一
角川選書/1999年
皇居前広場が野外性愛の隠れた名所だったことを初めて知った。井上章一の本は、すべてが優れたノンフィクションだと言っても過言ではない

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)
レイテ戦記 (中巻) (中公文庫)
レイテ戦記 下  中公文庫 A 33-4
大岡昇平
中公文庫/1974年
小説とノンフィクションの臨界点に位置する。すぐれた小説家は、すぐれたノンフィクション作家でもあることを示した一冊

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
佐藤優
新潮文庫/2007年
記憶から生々しい言葉のやりとりをそっくりそのまま再生する異能の「力」が、この書を迫力あるものにしている

街道をゆく (1)
街道をゆく (2)
街道をゆく (3)
街道をゆく (4)
街道をゆく (5)
街道をゆく (6)
街道をゆく (7)
街道をゆく (8)
街道をゆく (9)
街道をゆく (10)
街道をゆく (11)
街道をゆく (12)
街道をゆく (13)
街道をゆく (14)
街道をゆく (15)
街道をゆく (16)
街道をゆく〈17〉
街道をゆく (18)
街道をゆく〈19〉
街道をゆく〈20〉
街道をゆく〈21〉
街道をゆく〈22〉
街道をゆく〈23〉
街道をゆく〈24〉
街道をゆく〈25〉
街道をゆく〈26〉
街道をゆく (27)
街道をゆく〈28〉
街道をゆく〈29〉
街道をゆく〈30〉
街道をゆく〈31〉
街道をゆく〈32〉
街道をゆく〈33〉
街道をゆく〈34〉
街道をゆく〈35〉
街道をゆく〈36〉
街道をゆく〈37〉
街道をゆく〈38〉
街道をゆく〈39〉
街道をゆく (40)
街道をゆく〈41〉
街道をゆく (42)
街道をゆく〈43〉
司馬遼太郎
朝日文芸文庫/1978年
近代以前の日本の姿を探しに各地を回るが、ドライブインのまずいカレーライスを食べ、タクシーの運転手とやりとりを交わした現場は、まぎれもなく昭和から平成にかけての日本であった(08年より新装版〈朝日文庫〉刊行中)


「ベスト10その2」に続く
原武史

○明治学院大学教授
Profile
はら たけし
1962年生まれ。早稲田大学卒。日本経済新聞社、国立国会図書館勤務ののち、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。専攻は日本政治思想史。
2001年、『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞受賞。08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞受賞。同年『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞受賞。鉄道ファンとしても知られ、講談社現代新書に『鉄道ひとつばなし』『鉄道ひとつばなし2』がある

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野村進のノンフィクション100選:写真集・追悼集
※コメントは選者ご本人によるものです

写真集
戦場―沢田教一写真集 (1971年)
沢田教一
毎日新聞社/1971年
ベトナム戦争を撮った報道写真で、比肩するものはほかにあるまい。ピュリッツァー賞を受けた「安全への逃避」も所収

古寺巡礼〈第1集〉 (1963年)
古寺巡礼〈第2集〉 (1965年)
古寺巡礼〈第3集〉 (1968年)
古寺巡礼〈第4集〉 (1971年)
古寺巡礼〈第5集〉 (1975年)
土門拳
美術出版社/1963年
筑豊と古仏を並行して撮影していたのが、土門の端倪すべからざる才能である

筑豊のこどもたち
土門拳
築地書館/1977年
"炭住"に暮らす子どもらの姿を、ひりひりするような感覚で映し出した作品集
新宿 1965‐97―娼婦、ヤクザ、オカマ、ヌード嬢…彼らが「流しの写真屋」の客だった (フォト・ミュゼ)
渡辺克己
新潮社/1997年
新宿に群れ集うホステス、ゲイ、風俗嬢、やくざ、ホームレスらを、長年かけて写しつづけた写真家の集大成。最近、欧米でも注目が集まっている

An Uncertain Grace
セバスチャーノ・サルガド
シグマユニオン/1991年
以下の4冊はブラジル出身の報道写真家による写真集。本書はその代表作を集めたもの。ドキュメントなのに神話的な深い輝きを帯びているのが、サルガド作品に共通する特徴である

■『WORKERS』
セバスチャーノ・サルガド
岩波書店/1994年
世界各地の労働現場を撮影した一冊

Migrations: Humanity in Transition
セバスチャーノ・サルガド
Aperture/2000年
世界中の移民に焦点をあてた一冊

Africa
セバスチャーノ・サルガド
Taschen America Llc/2007年
アフリカの諸相を凝縮した一冊

Nuba (1981年) (PARCO view〈7〉)
レニ・リーフェンシュタール
PARCO出版/1981年
アフリカ・スーダンに住むヌバ族を、"美"の観点のみからとらえたドイツ人女性映像作家による作品集

追悼集
■『今村淳追悼集 1953-1998』
今村淳を偲ぶ会
非売品
ノンフィクションの"縁の下の力持ち"を続けながら急逝した編集者に捧げる追悼文集。非売品だが、こういう編集者がいたことを一般の読者にもぜひ知っていただきたかった


この項、了



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野村進のノンフィクション100選:翻訳書
※コメントは選者ご本人によるものです

翻訳書
比較の亡霊―ナショナリズム・東南アジア・世界
ベネディクト・アンダーソン/糟谷啓介ほか訳
作品社/2005年
東南アジア史を通じてナショナリズムの淵源に迫った名著

最底辺―トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ
ギュンター・ヴァルラフ/マサコ・シェーンエック訳
岩波書店/1987年
ドイツ人ジャーナリストがトルコ人に変装して体験した移民労働者の日々の記録

大統領の陰謀―ニクソンを追いつめた300日 (文春文庫)(新装版)
ボブ・ウッドワード、カール・バーンスタイン/常盤新平訳
文春文庫/2005年
ニクソンを辞任に追い込んだウォーターゲート事件に深くかかわった記者たちの記録。ウッドワードの原点

ヒトラー・コード
H・エーベルレ/M・ウール編/高木玲訳
講談社/2006年
戦後ソ連の捕虜となったヒトラーの側近たちの証言を、スターリンというたった一人の読者のためにまとめた異様なドキュメント。ノンフィクションとは何かをも考えさせられる

シャドウ・ダイバー 上―深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち (ハヤカワ文庫 NF 340)
シャドウ・ダイバー 下―深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち (ハヤカワ文庫 NF 341)
ロバート・カーソン/上野元美訳
ハヤカワ文庫NF/2008年
死と隣り合わせの深海ダイバーたちが、たまたまナチスの沈没潜水艦を発見したことから始まる、あまりにもドラマティックなノンフィクション。近年の収穫のひとつ

アメリカン・ビート〈1〉 (河出文庫)
アメリカン・ビート〈2〉 (河出文庫)
ボブ・グリーン/井上一馬訳
河出文庫/1991年
アメリカの代表的なコラムニストだった著者は淫行容疑で(?)職を追われたが、本書の価値は不変。井上一馬による名訳のおかげもある

周恩来秘録 上
周恩来秘録 下
高文謙/上村幸治訳
文藝春秋/2007年
中国共産党の機密ファイルから浮かび上がる暗闘の歴史。毛沢東と周恩来、江青らの入り組んだ愛憎と猜疑の人間関係に驚かされる

アキノ大統領誕生―フィリピン革命はこうして成功した
ルイス・サイモンズ/鈴木康雄訳
筑摩書房/1989年
フィリピンのアキノ元上院議員暗殺からマルコス独裁政権崩壊にいたる過程を、丹念な調査報道で明らかにしている

中国の赤い星〈上〉 (ちくま学芸文庫)
中国の赤い星〈下〉 (ちくま学芸文庫)
エドガー・スノー/松岡洋子訳
ちくま学芸文庫/1995年
黎明期の中国共産党指導部と農民たちを描いたルポルタージュの古典。共産党寄りの著者をすら毛沢東はスパイ視していたことが、のちに判明した

仕事(ワーキング)!
スタッズ・ターケル/中山容訳
晶文社/1983年
現代アメリカの115種類もの仕事に従事する人々にインタビューした、広辞苑のような一冊

汝の父を敬え〈上〉 (新潮文庫)
汝の父を敬え〈下〉 (新潮文庫)
ゲイ・タリーズ/常盤新平訳
新潮文庫/1991年
マフィアのボスのかたわらから見たアメリカ裏社会の実相。ニュージャーナリズムの代表作のひとつ

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人
敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人
ジョン・ダワー/三浦陽一、 高杉忠明訳
岩波書店/2004年
アメリカの現代史家がまとめた日本占領期の記録。日本人には書けなかった一冊

ソングライン (series on the move) (series on the move)
ブルース・チャトウィン/北田絵里子訳
英治出版/2009年
若いイギリス人作家が、オーストラリアの旅で出会ったアボリジニの人々に魅惑されていく物語。文章も構成も"ノマド的"

ブラザー・エネミー―サイゴン陥落後のインドシナ
ナヤン・チャンダ/友田錫、滝上広水訳
めこん/1999年
ベトナム戦争終結後のインドシナの混迷を、いわば"鳥瞰図"と"虫瞰図"の双方から描いた大著

中国農民調査
陳桂棣、春桃/納村公子、椙田雅美訳
文藝春秋/2005年
現在の中国で貧苦にあえぐ農民たちの実情と共産党地方官僚の腐敗ぶりを、地道な調査の積み重ねによりあばいたドキュメント

カシアス・クレイ (1972年)
ホセ・トレス/和田俊訳
朝日新聞社/1972年
世界チャンピオンだった著者から見たボクシングは、あたかもチェスのような頭脳戦・神経戦であることがよくわかる。ノーマン・メイラーに絶讃された一冊

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (朝日文庫)
ベスト&ブライテスト〈中〉ベトナムに沈む星条旗 (朝日文庫)
ベスト&ブライテスト〈下〉アメリカが目覚めた日 (朝日文庫)
デイヴィッド・ハルバースタム/浅野輔訳
朝日文庫/1999年
ケネディ・ジョンソン政権の「最善にして最も賢明な」はずの指導者層がベトナム戦争の泥沼にはまりこむ過程を、精緻に検証したニュージャーナリズムの記念碑的な作品

夜と霧 新版(新版)
ヴィクトール・E・フランクル/池田香代子訳
みすず書房/2002年
あまりにも有名なナチス強制収容所での手記。フランクルは「生かされた」との推測もある

それでも家族を愛してる
ポー・ブロンソン/桐谷知未訳
アスペクト/2006年
複数の一般家族を描いて珍しく成功したノンフィクション

完訳マルコムX自伝 (上) (中公文庫―BIBLIO20世紀)
完訳マルコムX自伝 (下) (中公文庫―BIBLIO20世紀)
アレックス・ヘイリー/濱本武雄訳
中公文庫BIBLIO 20世紀/2002年
のちに暗殺される黒人解放運動指導者への徹底したインタビューからなる自伝

ザ・ファイト
ノーマン・メイラー/生島治郎訳
集英社/1997年
アフリカ・ザイールにおけるアリ対フォアマンの"世紀の一戦"を至近距離から描いたドキュメント

タリバン―イスラム原理主義の戦士たち
アハメド・ラシッド/坂井定雄、伊藤力司訳
講談社/2000年
パキスタン人のベテラン・ジャーナリストによる厚みのある報告。オバマが直面する"敵"の実像が知りたいなら、必読の書

歓喜の街カルカッタ〈上〉 (河出文庫)
歓喜の街カルカッタ〈下〉 (河出文庫)
ドミニク・ラピエール/長谷泰訳
河出文庫/1992年
スラム街でインド人車夫、フランス人神父、アメリカ人医学生らが織りなす人間讃歌

パリは燃えているか?(上) (ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース)
パリは燃えているか?(下) (ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース)
ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ/志摩隆訳
早川書房/2005年
ナチス占領下のパリが解放されるまでの決定的な数日間を、驚くほど広範なインタビューと資料によってよみがえらせている

さもなくば喪服を (ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース)
ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ/志摩隆訳
早川書房/2005年
スペイン現代史を背景に、伝説的な闘牛士の苛烈な半生を、彼の目を通じてあざやかに描く

毛沢東の私生活〈上〉 (文春文庫)
毛沢東の私生活〈下〉 (文春文庫)
李志綏/新庄哲夫訳
文春文庫/1996年
毛沢東の主治医による赤裸々な回想記。著者は本書の出版後、亡命先のアメリカで謎の死を遂げた


「写真集・追悼集」に続く


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野村進のノンフィクション100選:和書その4
※コメントは選者ご本人によるものです

ことばへの旅 (森本哲郎 世界への旅)
文明の旅 サハラ幻想行 (森本哲郎 世界への旅)
生き方の研究・続 生き方の研究・あしたへの旅 (森本哲郎 世界への旅)
人間へのはるかな旅・戦争と人間・ある通商国家の興亡 カルタゴの遺書 (森本哲郎世界への旅)
ぼくの旅の手帖・四季の旅・音楽への旅 (森本哲郎 世界への旅)
おくのほそ道行 月は東に 日本の挽歌 (森本哲郎 世界への旅)
日本語表と裏 日本語根ほり葉ほり 「私」のいる文章 (森本哲郎世界への旅)
ゆたかさへの旅 読書の旅 (森本哲郎 世界への旅)
そして文明は歩む・中国幻想行 (森本哲郎 世界への旅)
森本哲郎世界への旅〈第2巻〉
森本哲郎 世界への旅〈別巻〉
森本哲郎
新潮社/1994年
日本人による世界紀行および文明論として空前絶後のスケール

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 (文春文庫)
柳田邦男
文春文庫/1999年
自裁をこころみた子息との最期の日々を綴った鎮魂の記録。ノンフィクションの書き手はみな、家族の命をも削っているのである

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))
山際淳司
角川文庫/1985年
本書収録の「江夏の21球」は、スポーツ・ノンフィクションの新たな地平を開いた作品

サンダカン八番娼館 (文春文庫)(新装版)
山崎朋子
文春文庫/2008年
女性史研究者が、ある老女との出会いを機に、貧苦ゆえアジアに身を売られていった少女たちの歴史に分け入っていく

インド ミニアチュール幻想
山田和
平凡社/1996年
インドの細密画に魅せられた著者にしか書けなかった文章。目くるめくような世界が繰り広げられる

新装版 戦中派不戦日記 (講談社文庫)(新装版)
山田風太郎
講談社文庫/2002年
医学生時代の日記だが、作品として完成している

墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)
吉岡忍
新潮文庫/1989年
日本史上最悪の航空機墜落事故を緻密に再現

森の回廊〈上〉ビルマ辺境に生きる山地民の心根にふれる (NHKライブラリー)
森の回廊〈下〉山の民と精霊の道を辿る (NHKライブラリー)
吉田敏浩
NHKライブラリー/2001年
ビルマ山中で民族独立運動を続ける山岳民族に長年同行した驚異の記録。「戦後最大の冒険」との評価もある

戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)
吉田満
講談社文芸文庫/1994年
独特の文語体によって綴られた、限りなく叙事詩に近い世界


「翻訳書」に続く


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