蜘蛛網飛行日誌

夢中説夢。夢の中で夢を説く。夢が空で空が現実ならばただ現実の中で現実を語っているだけ。

自己投資? 自己浪費?

2005年11月20日 13時46分16秒 | 本屋古本屋
性懲りもなく、また都丸を覗いてしまった。「都丸支店で運試し」の回で「この店は二週に一度のサイクルで覗くと必ずなにか良いものに出逢うことができる」と書いた。だから月に二度くらいのペースがわたしにとってはベストなのだけれども、このところちょっと欲が出てきて三回続けて土曜日に出向いていたが、でもやはり二週に一度のサイクルを遵守したほうがよいと悟った。
昨日はさすがに廉価本コーナーに見るべきものはなかった。そりゃそうだろう、わたしが毎週買っていたのだから。それにしても自宅から高円寺の都丸まではお世辞にも近いとはいえない。なにも買わずに帰るのも癪だと思い、ちょうどイタリア語の辞書が欲しいところだったので"Dizionario della Lingua e della Civilta Italiana Contemporanea"を買うことにした。値段が八百円だったのが購入の決め手となった。少々重かったがなにしろ八百円なので我慢した。
店内を見て回ると仏教書の棚に大久保道舟の岩波書店版『道元禪師傳の研究』が税込み千五百七十円で出ていたのでこれも頂くことにした。隣にこの本の筑摩書房版も置いてあって価格は八千四百円ほどだった。岩波版は一九五三年三月の発行で、いっぽう筑摩版は一九六六年五月発行されている。筑摩版は修訂増補ということで岩波版よりページ数が若干多いけれども、わたしは専門の研究者ではないので知りたいことは岩波の旧版で充分間に合ってしまう。イタリア語と禅師様、二冊ともけっして高くはなかったのだが、それでも合計二千三百七十円というのはこの店で使う金額としては多い方だと思う。ここ数年で都丸支店で購入した二千円を超える「高額」商品を確認してみたら次のようなものがあった。
1."Wörterbuch der deutschen Gegenwartspräche" ベルリンAkademie-Verlagの全六巻ドイツ語辞典を五千円。
2.Moriz Heyne著"Deutsches Wörterbuch"全三巻の三修社復刻版を六千三百円。これも読んでの通りドイツ語辞典
3.Hans HaasとRichard v. Kienleによる"Latenisch-Deutsches Wöterbuch"全一巻の羅独辞典を三千百五十円。これはハイデルベルクのF.H.Kerle Verlagより出版されたもの。
4.Librarie HachetteのFélix Gaffiot著"Dictionnaire abrégé Latin-Français Illustré"二千百円。こちらは羅仏辞典。
5.Franz Altheim著"Geschichte der Lateinischen Sprache"も同じく二千百円。フランクフルト・アム・マインのVittorio Klostermannから出版されたソフトカバーの本。ラテン語史の専門書だがまだ読んではいない。
それにしても、随分とシケた買い物だ。どう贔屓目に見てもわたしは都丸書店にとって上客とはいいかねる。そりゃあ金がタンマリとあればどんどと買うさ、でも無いのだからどうしようもない。それにくわえて古書店は都丸だけではないのだ。
買うものがないと判断したならとっとと撤収し神保町に向かうべく総武線で移動した。いつもは古書会館の即売展を覗くため御茶ノ水まで行くのだけれども、昨日は即売展が開催されなかったので、一つ手前の水道橋で下車した。白山通りの古書店も結構なくなってしまっている。日大経済学部前の丸沼書店は最近は古書のスペースが少なくなってしまった。この店は歴史、法律、会計、経営等の新刊書や日大の教科書なんかも扱っている。不幸なことにわたしは法律にも会計にも、ましてや会社経営にもまったく興味が無いので(だから貧乏なのだが)滅多に入ったことがない。それでも今年の六月に偶々この店の前を通ったら、廉価本コーナーに竹内与之助の『字喃字典』が出ていたので衝動買いしてしまった。大学書林から出ているこの本はベトナム漢字の辞典で「字喃」はチュウノムと読む。もしかしたら高校時代に歴史の授業で習った方もいらっしゃるかもしれない。それをなぜ衝動買いしたかというと、じつはこの『字喃字典』、定価が一万五千円するのだがそれがなんと千円、つまり十五分の一の値段で出ていたからなのだ。さしあたってベトナム語を勉強しようという気はもうとうなかったが、美本だったこととそして千円だったことで後先考えずに買い込んでしまった。
即売展も開かれていないのに神保町にまで来たのには理由があって、11月16日に岩波文庫の新刊が発売されたのでそれを購入したかったから。いつもは信山社で買っているのだけれども、昨日は日本特価書籍で誂えた。竹越与三郎の『新日本史(下)』、レヴィナスの『全体性と無限(上)』、ディッケンズの『アメリカ紀行(下)』そしてアレクシス・デ・トクヴィルの『アメリカのデモクラシー第一巻(上)』の四冊。この店はわたしが学校に通っていた時分からお世話になっているが、新しく出た本なら大体定価の一割引で売っているし返品物ならばもっと安いので、新刊書を買うときには先ずこの店からチェックすることをお勧めします。しかし扱っている品は人文系図書なので、理科工学系、また経済、法律等の実務書はないものと思って訪ねてください。
そんなこんなで昨日の収穫はさっぱりだった。そういえば今日は横浜反町で反町古書会館展が開催されているはずなのだが、今回も覗くことができなかった。う~ん、残念、残念、残念~んっ。