蜘蛛網飛行日誌

夢中説夢。夢の中で夢を説く。夢が空で空が現実ならばただ現実の中で現実を語っているだけ。

すずらん通りでカツカレーっ!

2006年03月15日 00時42分36秒 | 彷徉
明日が確定申告の最終日なので、今日の朝までかかって書類をまとめて税務署に提出してきた。窓口では形式的なチェックだけだったので提出作業はすぐに終わってしまった。そこで残った時間を神保町チェックにあてた。
古書モールを覗いてみたら名著刊行会から復刻出版された岡田宜法師の『禪學研究法と其資料』があったのでとりあえず買っておいた。二千円なのでちょっと躊躇しはしたものの、いずれ何かの役に立つかもしれないと思ったからだ。岡田宜法師には『正法眼蔵思想大系』という八巻ものの正法眼蔵註解本があるがわたしも時折参照している。師は埼玉県出身の僧侶、教育者であり戦後駒澤大学が総合大学になったときには初代総長に就任している。それにしても『禪學研究法と其資料』が無造作に転がっている古書モールもちょっとおもしろい。以前ひどくこき下ろしたことがあったけれども、これからは評価を改めなくてはならないということか。
伊和辞典を買おうと神保町の店々を覗いて歩いたが、不思議なことに和伊辞典はあるのに伊和辞典がない。もちろん新刊書店や日本特価書籍には置いてあるが、定価六千八百円もするのでとても新品では誂えられない。だから古書店を巡るわけだが、大島書店はおろか悠久堂書店にも巌松堂にも高山本店にも置いていないのには少々驚いた。あと一軒期待の持てる店が大雲堂だったので入ってみたら、なんと小学館の伊和中辞典が二千五百円で出ていた。コンディションもまあまあ許容できるものだったので迷わず買ってしまった。
それにしても英語以外の外国語辞書のなんと値が張ることか。大学書林から最近出版された国原吉之助の『古典ラテン語辞典』はたしか三万五千円くらいはしているが、わたしが重宝しているランゲンシャイトの"Großes Schulwöterbuch Lateinisch-Deutsch"などは三千九百円だからこの落差には唖然とさせられる。ちなみにオクスフォードの一番小さなラテン語辞典でも五千円くらいのはずだ。需要が少ないから利益を回収するためには必然的に一冊あたりの単価が上昇するという理屈は理解できる。しかしそれでもわたしには納得できない。要すれば金のある奴らが「知」を独占している状況をこの辞書の一件が象徴しているように思えてならないのだ。
ちょっと遣り切れない気分で原書店の店先ワゴンセールを見たら國書刊行會の『百家随筆』の第二巻と第三巻がそれぞれ三百円で出ていたので、これも迷わず購入しておくことにした。このシリーズは全三巻なので第一巻がかけているわけだ。だからこのようなほとんど捨て値で売っていたのだろう。全巻揃だったらいくら位するものかと「日本の古本屋」で検索してみたが一件もヒットしなかったのにはこれまた少々驚いた。単にいま現在市場に出回っていないだけのか、あるいは古書店がまったく商品価値なしと判断して扱っていないのか、そこのところは寡聞にして知らない。
時刻は三時を少し過ぎていた。昼食を摂っていなかったのでますます苛ついてきた。これじゃあいけないと考えて、久方ぶりに南海にいってみた。食事の時刻とはとてもいい難いにもかかわらず、店は六割ほどの客で埋まっていたのにはさすがだと感心した。厨房の料理人の顔ぶれも昔とあまり変わっていないように思われた。それにしてもあのシェフはいったい何歳くらいになったのだろう。わたしが始めてこの店に入ったときとほとんど変わっていないように見えた。
注文した「カツカレー」は六百五十円で、とても美味い。しかもむかし食べたときのように美味い。これはじつはたいへんなことなのだ。一概に言えるかどうかはなんとも判断しかねるのだけれども、年をとると舌が肥えてくるらしい。少なくともわたしは若い頃よりも格段に美味いものに敏感になってきている。これは自信を持っていえる。そこいらへんのタレントグルメなんかはわたしには到底太刀打ちできないだろうという自負がある。そのわたしが美味いというのだから、これは本物。
丸い皿にたっぷりと盛られた「カツカレー」はおなじみ真っ黒カレーで、揚げたてトンカツも程よい厚さと柔らかさ、そしてもちろんよい味だ。神保町三丁目で昼食をとるならいつもここにしたいところなのだが、残念ながら昼時は混んでいてなかなか入れない。


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