蜘蛛網飛行日誌

夢中説夢。夢の中で夢を説く。夢が空で空が現実ならばただ現実の中で現実を語っているだけ。

古本まつりのあと。

2005年11月06日 15時27分15秒 | 古書
古本まつりの余波がまだ続いている。じつは古本まつりが終わったあとの神保町のうほうが面白い。売れ残った品がまるで嵐の後の浜辺みたいに店頭に並ぶので、古本まつりがまだ終わっていないような雰囲気で、要するに賑やかなのだ。
昨日は神保町に行く前に高円寺の都丸支店を覗いた。二週間ぶりなので何か面白いものはないものかと探したら、店内に衛藤即應の『宗祖としての道元禪師』が千二百円で出ていたので買ってしまった。あとは店外の廉価本コーナーで数冊。店内の語学書コーナーにSandersのドイツ語文法書があったけれども三修社からの復刻版だったのと、お値段高めだったので今回は見送った。そんなわけで都丸での成果は、
1.『宗祖としての道元禪師』衛藤即應著 岩波書店 千二百円。
2."Grammatica Italiana Descrittiva Su Basi Storiche e Psicologiche"M. Regula J. Jernej Franke Verlag Bern und München 1965. 五百円。
これはイタリア語で書かれたイタリア語文法書。ただし出版社はドイツ語圏の会社というのがいかにもヨーロッパだ。
3."Gramatica Portuguesa"Pilar Vazquez Cuesta Maria Albertina Mendes da Luzcho著 Gredos Madrid 1961. 三百円。
スペイン語で書かれたポルトガル語文法書。
4."Gramatica Catalana"全二巻 Antonio M. Badia Margarit著 Gredos Madrid 1962. 六百円。
同じくスペイン語で書かれたカタルーニャ語の文法書。表紙が痛んでいたので糊で修繕した。
3.4.はともに仮綴本。どうもラテン系の言葉を研究していた人の放出品らしかったが、有り難いことに傍線、書き込み等一切無しだったので、保存の悪さには目をつぶることにした。
この日は店内が混んでいた。古書店で混み合うなんてのは常識的にはおよそ考えられない。ところが都丸はわたしが訪れるときはいつも必ず客が入っているからすごい。しかし、すごい、すごいと思いつつも成果としては今ひとつだった。
ここは神保町でリベンジだっ、てなわけで勇んで古書会館のぐろりや会に臨んでみたら、
1."Erkrälendes Handbuch der Fremdwörter"F. A. Weber著 Verlag von Bernhard Tauhchnitz 1888. 八百円。と、
2."Dictionnaire Médical des Langues Allemande et Française"Paul Schober著 Verlag von Ferdinand Enke Stuttgart 1908. 八百円。
があったので買った。武蔵野市境にある泰成堂書店の出品で、1.はドイツ語における外来語の辞書で、2.は医学用語辞典。こちらは二部構成になっていて一部は仏独、二部は独仏のリファレンスとなっている。安いだけあって二冊とも背の皮装丁が少々痛んでいたが、これはワセリンをすり込んで修理できる。こんな作業ができるのも洋古書を買う楽しみのひとつなのです。
しかしぐろりや会での成果はこれ止まりで、わたしとしてはかなり前向きな姿勢で書架を漁ったのだけれども、気に入りの品は見出せなかった。ぐろりや会では八月に宇井伯壽の『佛教汎論』を三千円で購入したことは前に書いたことと思うが、どちらかというとこのところ不調に終わることが多い。
そこで最後の勝負、ということですずらん通り入口の大島書店を覗いてみた。Ph. Plattnerの"Ausfuhrliche Grammatik der franzosischen Sprache"全五巻を二千円で購入した。ところでわたしの記憶に間違いがなければ、この本は先般の洋書展でたしか都丸支店から三千円で出品されていたはずだが、それと同じ品なのだろうか。わたしには同じものに見えて仕方がないのだ。でもそんなことってあるものだろうか。昨日は都丸、今日は大島なんてちょっとねえ。なぜ洋書展のときに購入しなかったかというと、その時点ではフランス語文法書に興味がなかったのと、荷物が多すぎて持ちきれなかったからなのだ。たしかにこれはわたしの原則「古書は気合で買う」に反した行動だったけれども、結果として千円分得をすることとなった。それにしても、この大島書店という店はどうもよくわからない。とにかく安いのだ。薄利多売を営業方針としているのだろうか。
その後、三省堂裏の古書モールをチェックした。左近義慈の「新約聖書ギリシャ語入門」を五百円ということと、小口も見た目がきれいだったのでコンディションチェックをしないまま買ってしまった。かなり疲れていたので、そんなことになったのだが、カフェテラス・古瀬戸でキリマンジャロを飲みながら改めて点検してみた。27ページ位まで鉛筆で傍線や書き込みがされていたが、それ以降は手付かず。つまりこの本の旧所有者は第六課「未完了過去直説法能動相」までで挫折してしまったらしい。ま、外国語学習の典型的なパターンです。