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怪奇大作戦~京都買います~

2006年11月06日 | 怪奇大作戦
DVD 怪奇大作戦 Vol.6

ビクターエンタテインメント

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 前回「怪奇大作戦」を取り上げたのが、5月12日。実に半年振りのレビューとなりました。感無量であります。何でこんなに間が空いてしまったのかと申しますと、第25話『京都買います』について述べるには、少々気合を入れねばならず、そのエネルギーが夏場には溜まらなかったというわけです。本格的な秋になり、エネルギーの充填もばっちり!さあ、書くぞ、となったわけです。何はともあれ、あらすじをどうぞ。
 
牧は、考古学の権威、藤森教授の研究所を訪ねていた。京都で仏像が消失してしまうという怪事件が続出していたが、それらは全て、藤森教授が研究していた国宝だったのだ。そこで牧は、須藤美弥子という女性に出会う。藤森同様、彼女もまた、仏像の魅力に取り付かれた人間のひとりなのだ。そして牧は、意外な場所で美弥子と再会を果たすことになる。
 若者達の喧騒と熱気がほとばしる喫茶店にフラリと現れる美弥子。彼女は、そこに牧がいるとも知らずに、「京都の町を売ってくれ」と若者達に語りかけ、ビラを配っていく。怪訝に思った牧が近寄ると、美弥子はハッとして走り去った。とある寺で美弥子を見つけた牧は、京の町を買おう、と言う美弥子の心境を尋ねた。「買ってしまいたいんです。仏像の美しさを分からない人たちから・・・、京の都を」
 牧の心は、急速に美弥子に引かれていった。が、どうやら仏像消失事件と彼女は、何らかの関わりがあるようだった。捜査と美弥子に対する愛情に板ばさみになる牧。そして京都を買いたい、という美弥子の真意とは?

「怪奇大作戦」最大の傑作にして、1969年3月2日の放映時には最低の視聴率16.2%(番組の平均視聴率は22%)しか取れなかったという、実相寺昭雄監督と岸田森入魂の一作です。
 そりゃ、子供たちにはチンプンカンプンだったことでしょう・・・「怪奇」な部分は仏像が伝送されるトリックぐらい。謎の雲水達も、映像としては地味ですしね。『呪いの壺』みたいに派手に死んでいく人間もいませんし・・・何と警察に捕まるのも藤森教授だけ!?全体的に地味~なお話です。それでも最後までチビッ子たちが我慢して見続けると、最大のチンプンカンプンが待ち受けているというわけです。(ネタばれになりますので、書きませんが・・・)あのラストシーンの不可解さは、18禁なんてものじゃないですね。定年退職後、暇に任せて京都に通い詰め、古刹の仏像を千体位鑑賞して、初めて理解できる世界です。そう言えば、当時、ゴーゴー喫茶で踊っていて「京都売ります」と署名捺印した方々が、ちょうどそんなお歳になったんですね・・・60になって、しみじみ分かる、「あの時、京都の町を売らなくてよかった・・・」

 茶化すのはこれぐらいにして。30分の子供番組枠で、こんな凄いドラマを作っていた時代があったんですね・・・いや、ゴールデンタイムに、家族が茶の間に揃ってテレビを見た時代だから、成立したドラマというべきでしょうか。
 仏像の美を愛でる者だけが棲む理想郷。そんな古典美を夢想する大人たちが、極めて先鋭的な科学技術を駆使して犯行を重ねるという逆説。そして、その計画が頓挫した時、彼らが帰っていくべきところは、自らの殻の中しかなかった・・・最終シーンが示そうとしたものは、そんなことだったのでしょうか。私は、京都には数えるほどしか行ったことがないので、語る資格もないのですが、そんなことをふと思ってしまいました。私のような、普段ものを考えない人間にも考えることを促す、深い寓意を持った傑作だと思いました。

 ああ・・・またもや、まとまりのない文になってしまいました・・・反省。