北の狩人〈上〉 (幻冬舎文庫)大沢 在昌幻冬舎このアイテムの詳細を見る |
○○の秋…とくれば、やっぱ「読書の秋」でしょう!というわけで老眼に鞭打って『北の狩人』を読みました。
最近は、少しでも目を酷使すると頭痛が襲ってくるので、本を読むのも戦々恐々という状態です。が、この小説は一気に読了となりました 大沢在昌の新宿ものと来れば面白くないわけがないのですが、今まで読むのを避けてきました。何故って?もちろん、私の中の「新宿鮫ワールド」を壊したくなかったからです。 「北の狩人・上」文庫版の裏表紙には次のように書かれています。
新宿に北の国から謎の男が現れる。獣のような野性的な肉体は、特別な訓練を積んだことを物語っていた。男は歌舞伎町で十年以上も前に潰れた暴力団のことを聞き回る。いったい何を企んでいるというのか。不穏な気配を感じた新宿署の刑事・佐江は、その男をマークするのだが…。新宿にもう一人のヒーローを誕生させた会心のハードボイルド長編小説!
新宿にヒーローは一人でいいぜ… と長く思っていたのでした。それが大沢氏の最新作『黒の狩人』が出たという新聞広告を見て、この『狩人シリーズ』に対する大沢氏の入れ込みを感じ、ならばと文庫本を購入したわけです。毎度ながら、「テンポ良く場面が変わり、危機がやって来て、息継ぐ暇もなし」という状態で最後まで読ませてしまうのは、さすが大沢!という感じ。主人公の造形もいいですね 「今の言葉でいうなら濃い顔で」東北弁丸だしの田舎者…しかし、その正体は「マタギの血を引く」秋田県警捜査一課の刑事!やっぱり田舎者なんですが、その野性の勘と情熱で、新宿のウラ社会を震撼させる動きを見せる…恐ろしい若者です。その純粋な言動に、やくざが惚れ、ジュクのギャルが惚れ、新宿署のマル暴も惚れる。もうため息モノです
でも、主人公の魅力だけで引っ張っていく小説ではありません。「新宿鮫」同様、ワルがギラリと光っているんですよ 特に宮本VS近松のやりとりは絵になってますねえ… ぶつかり合って果てていく二人なんですが、最後の会話が
「…お前とは杯を交わすチャンスがなかったな…」
宮本がつぶやいた。
「地獄で兄弟になろうや」
ですぜ!ハードボイルドだなあ…