SMEI / ドラベ症候群 / 重症乳児ミオクロニーてんかん について

SMEIの診断を受けた長男に関連して調べたことたち

乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)の診断に関する情報について(更新)

2015年01月27日 | 症状・診断など

小児慢性特定疾病の診断を目的に、日本小児科学会が主体となり作成した「診断の手引き」が小児慢性特定疾患情報センターで公開され、広く使用されている。

乳児重症ミオクロニーてんかんの概要については、下記のように示されている。

疾患概念

乳児期発症の難治てんかんであり、入浴や発熱で誘発されやすい焦点性、片側性もしくは全般性の間代性けいれん発作を繰り返し、重積・群発傾向があるのが特徴である。抗てんかん薬治療に抵抗性で非常に難治である。1歳頃より、けいれん発作のみならずミオクロニー発作や非定型欠神発作、複雑部分発作が出現し、精神運動発達も停滞する。また一部の例では光・図形過敏を呈する。全般性や片側性のけいれん発作と複雑部分発作のみ呈し、ミオクロニー発作や非定型欠神発作を併存しない症例も存在する。本症候群では70-80%の症例でナトリウムチャンネル遺伝子SCN1Aのヘテロ異常を有する。てんかん発作は学童期以降に軽減傾向となるが、失調や不器用,多動,知的障害や自閉性障害が明らかとなる。発生率は2~4万人に1人とされる。1989年の国際てんかん症候群分類では全般てんかんと部分てんかんの両者の特徴を併有する未決定てんかんに、2010年分類試案では乳児期発症のてんかん性脳症に含まれる。かっては乳児期発症で、ミオクロニー発作を伴うことより乳児重症ミオクロニーてんかんと呼ばれたが、必ずしもミオクロニー発作を伴う症例ばかりではないこと、乳児期発症ではあるが成人期まで続く難治てんかんであることより、最近では本症候群を提唱したDravet の名に因んでDravet症候群と呼ばれている。

病態

先天的なナトリウムチャンネル遺伝子SCN1A異常によるGABA作動性介在ニューロンの機能障害が原因と考えられている。精神運動機能の停滞・退行には、繰り返すけいれん重積や抗てんかん薬の多剤併用が関連すると考えられていたが、このナトリウムチャンネル遺伝子SCN1A異常によるGABA作動性介在性ニューロンの機能障害自体により自閉性発達障害が引き起こされる可能性が本症動物モデルで明らかになっている。

診断

臨床経過,発作型,脳波所見から総合的に診断する。遺伝子解析は有用であるが、SCN1A遺伝子変異を伴わない症例も20-30%あるので臨床診断が重要である。最近、1歳までの経過によるスクリーニングテストが開発され、早期診断に有用とされている*。

(1)発作型
1) 全般性もしくは片側性発作
全般性もしくは片側性の(強直)間代発作で1歳未満に発症する。発熱,入浴で誘発されやすく、その際には長時間の発作を起こしやすい。片側性けいれん発作は乳児期に多く,左右独立して生ずる、もしくは一回の発作中に左右交代性の片側発作を起こすことも特徴の一つとして挙げられている。
2) ミオクロニー発作
一瞬の動きから転倒するものまで様々である。3~4Hz全般性(多)棘徐波を伴う。一部に光・図形刺激による誘発もあり、けいれん発作に移行することがある。
3) 非定型欠神発作
ミオクロニーや短い脱力を伴って段付きで前傾することがある。2.5~3.5Hzの全般性棘徐波群発を伴う。
4) 部分発作
焦点性の運動発作から二次性に片側ないし、全般化する場合もあるし、1歳頃よりは眼球偏倚や硬直性肢位、チアノーゼなどの自律神経症状を伴う複雑部分発作となる場合もある。 
5) 意識混濁状態(Obtundation state)
不規則なミオクロニーを伴う変動性意識減損状態が長時間持続する発作も特徴的な発作とされ、多焦点性棘波か広汎性棘徐波を混じた広汎性不規則徐波が連続するが、比較的稀である。

(2)検査 
1)脳波:乳児期には正常あるいは非特異的背景脳波活動の徐波化のみであるが、1歳頃より広汎性(多)棘波複合、多焦点性棘波が出現する。広汎性棘徐波複合も当初は3Hz棘徐波であるが年齢とともに不規則な多棘徐波複合となっていく。
2)MRI:乳児期は正常だが幼児期以後は非特異的萎縮が多く,海馬硬化を伴うことがある
3)遺伝子検査:SCN1A遺伝子のヘテロ変異を70~80%に,微小欠失を数%に認める。SCN1A遺伝子異常の90%以上がDravet症候群である.SCN1BSCN2AGABRG2変異の報告もまれにある.

治療

非常に難治で、長時間けいれん発作を繰り返すためで多剤併用が一般的である。日本においては従来臭化Kを軸としてバルプロ酸、ゾニサマイド、クロナゼパム、クロバザム等を併用していたが、最近、新規抗てんかん薬の導入が進み、欧米で使用されているスチィリペントールを軸としてバルプロ酸とクロバザムを併用する治療法が普及してきている。その他にトピラメートやレベチラセタムなども試みられている。またカルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインは発作を悪化させる可能性が報告されている

予後

発作予後、知的予後ともに不良であるが、思春期以降はけいれん発作回数自体は軽減する場合が多い。また発熱誘発性も軽減するとされる。中等度以上の知的障害を伴うことが多く、神経学的にも失調や下肢の痙性を伴う。平均寿命に関するデータはないが思春期までの死亡率が約10%との報告があり、突然死や急性脳症による死亡率が高いとされる

 

また、診断の手引きについては下記のように記されている。

診断方法

I. 主要臨床症状

  1. 乳児期より入浴・発熱で誘発されやすい部分、一側性あるいは全般性の間代発作を繰り返し抗てんかん薬治療に抵抗する。
  2. 発作は、長時間持続しやすく発熱時には容易に30分以上続く重積状態となる。
  3. 1歳頃からミオクロニー発作、非定型欠神発作、複雑部分発作が出現する。
  4. 1歳頃から知的発達が伸び悩み、歩行獲得しても失調性となる。

II. 他の重要な臨床所見および検査所見

  1. 脳波:1歳までは正常であるが、1歳以降に背景活動徐波化、広汎性(多)棘波複合、多焦点性棘波が年齢に伴って消長する。一部の例では1歳を過ぎてから強い図形過敏性、光過敏性を伴う。
  2. MRI:乳児期は正常だが幼児期以後は非特異的萎縮が多く、海馬硬化を伴うことがある。
  3. 遺伝子:SCN1A遺伝子のヘテロ変異を70~80%に、微小欠失を数%に認める。SCN1A遺伝子異常の90%以上がDravet症候群である。SCN1BSCN2AGABRG2変異の報告もまれにある。

I.のすべてを満たす場合、あるいはI.の1.とII.の3.を満足する場合、本症と診断する。

当該事業における対象基準

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合

その他の情報として、下記のようなものがある。

・疾患に関する一般情報:小児の難治てんかん 松坂哲應(長崎大学医学部小児科) 

・臨床診断因子のスコア化によるスクリーニング: 難治てんかんの早期発見・診断法および即効性の発作抑制剤 大内田 守、大守 伊織(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究)

 

 


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