胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

ポストピロリ時代の胃炎「胃炎は病気と言えん」

2023-06-03 | 胃炎
毎度おなじみ「早期のAIG」です(写真クリック)。最近、このような組織像をみるとAIGと秒殺できるようになりました。

1)医学生~大学院生の頃、「胃炎は病気と言えん」と恩師から習いました。
2)その後、「ピロリ胃炎」ブームが訪れ、「除菌後胃炎」、ほんで「未感染胃」へ
3)「ポストピロリ時代の胃炎」やって

胃生検マニアとしては対象に事欠きまへん。もうちょっときばらんと。


残存給水塔(篠目駅にて)

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Volcano shaped, pseudomembranous colitis, 偽膜性腸炎と噴火様所見

2023-05-28 | 大腸炎症
 大腸粘膜の表層部から炎症性滲出物があたかも火山の噴火のようにみえる組織像です(写真クリック!)。Volcano shapedとかvolcano likeとか言われています。特異的とまでは言えませんが、clostridium difficileによる偽膜性腸炎の教科書的写真として知られています。このような美しい噴火像を久しぶりにみつけました。
 Clostridium difficile腸炎の場合、菌のもつtoxinが毛細血管と大腸上皮の両方を傷害し、蛋白が噴出すると説明されています。

*読者からのご指摘:最近Clostridium difficileとは言わなくなったようで,クロストリジオイデス・ディフィシル Clostridioides difficileと名前が変更になった様です。


木曽の御嶽山です。

富士山と製紙工場です。
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剥離性食道炎,ツートンカラー像. Sloughing esophagitis, two-toned appearance

2023-04-03 | 食道非腫瘍
 剥離性食道炎(Sloughing esophagitis)ツートンカラー像(two-toned appearance)です。写真クリック!(参考 PMID: 22282305)。検索すると、抗凝固剤ダビガトランという関連キーワードが出できます。

今まさに剥がれんとするところです。

ステマ(ステルスマーケティング)してみました(下記画像クリック!)。

力作満載!

ウインナーコーヒー(初恋の味)
Wien(Vienna)のカフェ・ザッハーで先月飲んだ本物です。ソーセージはのっていません。
Wiener Melangeといいますが、ここのカルテには単にMelangeと書いてありました。


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好酸球性胃腸炎 Eosinophilic Gastroenteritis EGE

2023-03-18 | 消化管全般
・見出し写真は好酸球性胃炎です(写真クリック!)
・好酸球性腸炎に関する質問があり、ネット上で「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン 2020 年 09 月 14 日」のPDFが拾えたので読んでみました。
・また、先日、好酸球性消化管疾患を多くやってはる臨床の先生から、「病理診断の20個以上」という所見が独り歩きして・・・というお話を浜名湖で聞きました。

現在日本の好酸性胃腸炎(食道ではなくて)の診断基準では(このガイドラインの15頁)
*「好酸球主体の・・・」*「20/HPF以上・・・」*「他の・・・を除外」
となっています。20個/HPFの妥当性はさておき、病理では「主体」が重要、臨床では「除外」が重要、と思います。食道重層扁平上皮内の判定と異なり、胃粘膜固有層や小腸・大腸の粘膜固有層では、好酸球は生理的にもあるし、他の胃腸炎でも好酸球数はすぐに20個を超えてしまいます

このガイドラインにも「食道以外では生理的好酸球が存在し注意を要する。消化管好酸球数につ いては一定の傾向はあるが (文献4個)、国際的に確立された基準値はない。一般に終末回腸から右側結腸では健常者でも 20/HPF 以上の高値をとることがある。また上皮内、胃腺や陰窩、 筋層への好酸球浸潤、好酸球性膿瘍、シャルコー・ライデン結晶などが参考所見として有用である。また内視鏡所見が肉眼的に正常であっても、正確な診断には数箇所の生検が必要で ある。」という大事な記述もありました。

同盟国の文献(PMID: 31008735)では
As there are no consensus diagnostic guidelines for non-esophageal EGIDs, when pathology reports enumerating eosinophil counts were available, these reports were reviewed to confirm if the number of eosinophils reached a threshold level based upon the area of biopsy: stomach ≧30 eosinophils/high-powered field (hpf); small intestine ≧50 eosinophils/hpf; or colon ≧60 eosinophils/hpf.と、「胃では30個以上、小腸では50個以上、大腸では60個以上」とする記述もありました。



滋賀の狸が静岡出張中(写真クリック:神尾駅)。私も縁あってちょくちょく静岡に行きます。
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gastric NHPHの免疫染色;intestinal spirochetosisの免疫染色

2023-03-17 | 免疫染色
 ヘリコバクター菌属のうち胃に感染しうるH. pylori以外の菌 non-Helicobacter pylori Helicobacter (gastric NHPH)をH. pylori用の免疫染色をしてみました。真っ茶に染まり、特徴がよくわかります(写真Click!)。
〇組織学的特徴のまとめ
1.ピロリ菌より長い,大きい。
2.しっかりとしたコイル状である。4~8周程度のしっかりとしたコイルを形成している。
*Fusilli(ショートパスタ)様、*電気ドリル様
3.腺窩上皮細胞表面に付着しにくい。
4.上皮傷害がH. pyloriより弱い。
5.壁細胞に感染する(分泌細管に侵入)
〇内視鏡的特徴
体部の萎縮・炎症は乏しい。前庭部中心に霜降り状、ひび割れ、不定形発赤・・・
〇腫瘍との関連
MALT-lymphomaと・・・

ハイルマニー菌とは呼ばなくなりましたね。NHPHと言うらしい。Heilmann先生の友人で、最初の英語論文(PMID: 1864530)の責任著者であったBorchard先生の弟子としてはちょっと寂しいですね。お二人とも既に故人です。


ついでに, 写真Click!

Intestinal spirochetosisです。Treponema pallidumに対する免疫染色です。真っ茶に染まります。



昨夏、近鉄大和西大寺駅です(合掌)。
中高時代の乗り換え駅。あの頃は単に「西大寺駅」でしたね。


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Epithelioid cell granuloma in vessles. 脈管内の類上皮細胞肉芽腫、Crohn's disease, IBD

2023-03-12 | 小腸炎症
Crohn's diseaseの回腸生検でみられた脈管内(リンパ管または毛細血管)の類上皮細胞肉芽腫です(写真クリック)。
とても重要な所見です。参考文献(PMID: 24730532, 32589075)
Intra-vessel (lymphatic or capillary) epithelioid cell granuloma seen in an ileal biopsy (click photo). This is a very important finding (PMID: 24730532, 32589075).



If "回送 9〇〇 この列車にはご乗車いただけません" is displayed on the electronic bulletin board on the Shinkansen platform, both the sensitivity and specificity of the appearance of Doctor Yellow are 100%.
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胃生検あるある:激しいびらんと上皮の剥がれ

2023-01-28 | 胃炎
 びらんが強く、上皮剥離が強いと、一見異型性が強くみえます(写真クリック!)。これで、依頼書にIIcなんて書いてあったら、ヤバいですね。若い先生が「・・・・Group 5」とよく書いてきます。
 多くの核の周囲が白く抜けている(halo?)のも再生・変性異型をみるコツだ、と東京の師匠に習ったことがあります。確かに!

 
 これは"剥き出しの胃底腺”です。こちらも過剰評価あるあるです。

 
 こいつが来るとなんか嬉しいですね。
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SSLD (sessile serrated lesion with dysplasia) その2

2023-01-24 | 大腸腫瘍
 SSLD (sessile serrated lesion with dysplasia)その2です(写真クリック!)。領域性をもって周囲より少し異型性のみられる上皮があります。

MLH1免疫染色です(写真クリック!)。

ついでにPMS2免疫染色です。


 異型性は低いですが、” Stratification of dysplasia into low-grade vs high-grade is not recommended, because it may be difficult and not reproducible due to the heterogeneity of morphological changes and the lack of correlation with loss of MLH1 expression‟ ということなので、low-grade dysplasia (LGD)とは言えません。日本語で何と言えば??"腺腫?” 、”腺腫相当?” 、”癌?” 、”癌相当?” 、あるいはそのまんま”SSLD?”

 Nozomi Super-express bound for Tokyoからきれいな富士山が撮れました!

 領域性をもった宝永火口が右方にみられます。
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AIG最前線!幽門前庭部大弯側生検組織第2弾 biopsy from the distal antrum, greater curvature (A2)

2023-01-22 | 胃炎
 Autoimmune gastritis; AIG (Anti-parietal cell antibody; APA高値です) の幽門前庭部大弯側生検組織です。
 写真の右側では腺頸部以深のリンパ球浸潤が(写真の左側に比べて)強いですよね(写真クリック!)。
 つまり、ここは元々腺境界部粘膜で写真右側が胃底腺側、左側が幽門腺側であって、右側からAIGが攻め寄せている像ではないかと想像しています。壁細胞達は殲滅されています。
 頑張れ壁細胞!
 
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領域性とは:GA-FG(OGA)を対象として

2023-01-19 | 胃癌全般
 腫瘍診断に領域性、大事ですね。見出し写真は(クリック!)は胃底腺型腺癌 Gastric adenocarcinoma of fundic gland type (GA-FG)あるいはoxyntic gland adenoma (OGA)といわれる病変です。腫瘍内MUC5AC陰性は確認済み。

 ちょっと拡大しました(写真クリック!)。非腫瘍(正常)胃底腺との境界がわかりますか?


 境界部に線(赤点線)を描いてみました(写真クリック!)。


 軍事境界線 Military Demarcation Line (MDL) ホンマもんのデマルケーション・ライン(DL)です。私にとってDLとはDL (Diesel Locomotive) ですね。DF50とかDD54。

(2015-3. 판문점 板門店にて Dr. Qussie撮影)
 なお、見張りの兵隊さんを”歩哨”と言いますが、英訳するとsentinelセンチネル・リンパ節のセンチネル)です。
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SSLD (sessile serrated lesion with dysplasia)

2023-01-12 | 大腸腫瘍
 SSLD (sessile serrated lesion with dysplasia)です(写真クリック!)。異型性のない鋸歯状上皮、少し腫瘍性異型のある鋸歯状上皮、そしてあからさまに腫瘍性異型のある鋸歯状上皮が認められます(Multiple morphological patterns of dysplasia often occur in a single polyp)。しかし、"Stratification of dysplasia into low-grade vs high-grade is not recommended, because it may be difficult and not reproducible due to the heterogeneity of morphological changes and the lack of correlation with loss of MLH1 expression"とDigestive System Tumours (5th)に記載されています。

同じ病変内の別のところです(写真クリック)。

粘膜筋板を越えて浸潤しています。これなら世界中のどこでもadenocarcinomaと言ってくれます。

というわけで、本例は"Tubular adenocarcinoma (tub1=tub2), invasive, in SSLD"というタイトルにしました。pT1bで、Ly1(D2-40)でした。


Heterogeneity in 東北新幹線

どっちもwithout dysplasiaです。
 
 
 
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幽門前庭部大弯側生検組織 biopsy from the distal antrum, greater curvature (A2)

2023-01-09 | 胃炎
 Updated Sydney Systemでは5点生検が推奨されていますが、現実的には前庭部大弯(A2)体部大弯(B2)の2点生検を行うことが多いようです。3点生検の場合は胃角(IA)の追加がいいとされています(https://doi.org/10.11280/gee.51.1588)。
 A2の生検組織は"幽門腺型粘膜 pyloric gland mucosa”を代表する部位と思われがちですが、H. pylori未感染の非萎縮性粘膜では、実際のところ見出し写真(クリック!)のように、胃底腺(写真左側)と幽門腺(写真右側)が混在する腺境界部粘膜であることも多いです。主細胞がなくとも壁細胞はしばしば観察されます。また、胃角の粘膜(IA)はほとんどの場合胃底腺粘膜か腺境界部粘膜であり、純粋な幽門腺粘膜であることは極めてまれです(PMID: 32239550)。
 本ブログ「膵上皮化生 pancreatic acinar metaplasia (2) AIG vs. H. pylori胃炎」(2022年11月8日投稿)の見出し写真も前庭部大弯生検(除菌後)です。


 これは上記のガストリン免疫染色です。Vonoprazanの作用で、G細胞過形成が生じていますが、胃底腺側の粘膜ではもともとG細胞はありません(写真クリック!)。
 なお、(B+A型胃炎ではない)自己免疫性胃炎(AIG)で「萎縮がない」と思われているA2生検では、腺密度や粘膜厚としての萎縮はあまりありませんが、やはり壁細胞が減少している印象を受けます(あるいは消失)。IA生検でも壁細胞が減少(~消失)します。したがいまして、AIGでも、体部だけでなく、B2やIAの生検を追加していただけるとわかりやすくなると思います。



線路内立入禁止


年賀状です。明けましておめでとうございます。
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腺窩上皮型腺腫 Foveolar-type adenoma: Raspberry type vs. FAP-GAPPS associated

2022-12-20 | 胃腺腫
"Well-vascularized broad stroma"

H. pylori未感染胃(H. pylori naive gastric mucosa)に発生する胃腺窩上皮型腺腫 gastric foveolar-type adenomaです。
Raspberry typeとFAP/GAPPS associatedの違いは?
ラズベリー型(写真左)では"well-vascularized broad stroma"が特徴の一つであると神国出雲からの原著では記載されています(PMID:34043063) 。
GAPPS-associated(写真右)の間質は狭いですね。血の巡り具合が色調の違いの原因のひとつです。
参考:PMID 35968980


左:Broad stroma. 右:Narrow stroma
(博多駅にて)
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Prolapse-type misplacement vs. True expansive invasion

2022-12-20 | 胃癌全般
Oxyntic Gland Neoplasia (OGN); Gastric Adenocarcinoma of Fundic Gland Type (GA-FG) 胃底腺型腺癌 またはOxyntic Gland Adenoma (OGA)です(写真クリック!)。

腫瘍腺管がちょくちょく粘膜下組織に入り込みます。ほとんどの症例で間質反応(desmoplastic reaction)はありません。

粘膜下組織に腫瘍が入るのだから、invasionと思いきや、欧米の文献ではprolapse-type misplacementとかherniationと表現されています。

こいつらは粘膜筋板を国境と思っていないならず者なのか?
粘膜筋板に根性がないのか?


海上保安庁 Japan Coast Guard, JA906A Bell412EP
ならず者から主権を守ってください!
(海上保安大学校にて)

地対空誘導弾ペトリオット(PAC-3)
ならず者から主権を守ってください!
(防衛大学校にて)

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Reactive gastritis. Chemical gastritis. Corkscrew. 反応性/化学性胃炎、コルクスクリュー

2022-12-11 | 胃炎
 コルクスクリュー状にみえる胃腺窩上皮です。
 反応性胃炎とか化学性胃炎と呼ばれる胃炎でよくみられる所見だと教科書に書かれています。
 内視鏡的に隆起性びらんといわれる粘膜や、残胃粘膜の吻合部に近いところ、あるいはNSAIDs胃炎でよくみられます。前庭部の隆起性びらんはH. pylori未感染胃にみることが多いですが、除菌後でも出現しますね。除菌後隆起性びらんの生検では、しばしば腸上皮化生も混じています。もちろん、未感染胃の隆起性びらんからの生検でもまれに腸上皮化生が出現します。
 粘膜固有層内では毛細血管が拡張し、ニュルニュルっと平滑筋線維が下から伸びています(線維筋症)。慢性炎症細胞浸潤は軽度で、非活動的です。
 生検病理組織診断名は"Reactive gastritis, inactive, Group 1"、吻合部ならば”Stomal gastritis, inactive, Group 1"と書いてもいいでしょう。"Group 1"だけの記述は”診断”ではありません。
 内視鏡的に”隆起性びらん”とか”良性びらん”言ってとられた生検でも、組織所見でホンマに”びらん”(上皮が剥がれて滲出性変化がみえる)が見えなければ, ”Erosive”と形容するのは好ましくありません。


聖地のひとつ、JR北海道苗穂工場です。

*インスタグラムを始めました。
doctor_qussie
です。

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