有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

Chem. Communn. 2581-2583

2005-06-22 23:20:09 | 新着論文
A novel one-pot three-component synthesis of 3-halofuranes and sequential Suzuki coupling

酸クロライドとプロパギルアルコールエーテルとの園頭反応、生じたプロピオン部位へのハライドの1,4付加、環化を経てハロフランの生成。続く鈴木カップリングにより3置換フランを合成。以上の工程はワンポットで行える。収率は中程度。

フランつながりでもう一報。反応で生じた官能基が次の反応に活かされるつくりになっていて、良く設計されたワンポットによる多成分連結法です。他のヘテロ原子では可能なのでしょうか?フランをカップリング後再度開環させたりAchmatowicz 反応などdiverseが展開が期待できる系です。
フランの構築で上手いなと思ったのは、昨年のICOSで知った台湾のT.-Y. Luhです。プロパギルジチオアセタールへ求核攻撃してアレニルメタル種を発生させアルデヒドとの反応によりフランを構築しています。(JACS, 2000, 122, 4992., Chem. Communn., 2002, 2824.)

JOC 2005, 70, 4531

2005-06-22 22:53:38 | 新着論文
Cu(I) catalyst in DMF: An efficient catalytic system for the synthesis of furans from 2-(1-alkynyl)-2-alkene-1-ones

2-アルキニルエノンの銅触媒による5-endo-dig環化、マイケル型付加によるフラン合成。
安価かつハンドリングの容易な銅触媒を用いることによるアドバンテージ。

東北大の山本先生のペーパーです。オキソニウム中間体を用いた反応をここ数年報告されています。数年前山本先生の講演をお聞きしたことがありますが、話がとてもうまいです。講演で、「要旨にはこう書いていますが、今回は別な話をさせてもらいます」と言って、と驚いたのですが要旨がなくてもストーリーがわかり易く、適度に笑いを混ぜて、すごいなと思いました。

Angew Chem Int Ed 2005, 44, 3885

2005-06-21 08:38:52 | 新着論文
Axial ligand effects: Utilization of chiral sulfoxide additives for the indction of asymmetry in (salen)ruthenium(II) olefin cyclopropanation catalysts

salen-Ru錯体とキラルスルフォキシドを用いた触媒的不斉シクロプロパン化。
salen-Ru錯体の配位座に着目して、不斉スルフォキシドを配位子として添加することで不斉シクロプロパン化を進行。・・・読んだときはアプローチが非常に面白いと思ったのですが、文章としてまとめようとしたら、なんだ反応系中に不斉源つっこんだだけかいなという印象をうけました。Jacobsenも触媒を二つあわせた相乗効果を報告していますし、効率は悪いですが光反応では同様なアプローチといえるものがあったような気がします。反応機構解析では詳細にNMRを検討しています。salenの不斉とマッチ、ミスマッチなどを検討すればeeや一般性が上がるような気がしました。
恥ずかしい話ですが、salen錯体の不斉がどのように出ているのかついこの前までわかりませんでした。香月先生のTCIへの寄稿論文を読んでなるほどと納得しました。
http://www.tokyokasei.co.jp/kikou/bun/124dr.pdf

有機と関係ないですが

2005-06-19 12:27:10 | 記事
総合的な学習の時間、中学教師の6割が「不要」と回答

 「ゆとり教育」見直しの焦点になっている「総合的な学習の時間」について、中学校教師の約6割が「なくした方がよい」と考えていることが18日、文部科学省の「義務教育に関する意識調査」で明らかになった。準備に手間がかかることなどを理由に挙げた教師が多く、「国語や数学などの学習を重視すべき」という声も中学校教師全体の8割から上がった。これに対し、小学校教師は総合学習を肯定的にとらえる傾向が強かった。(中略)全体の84・6%が「教材作成などの準備に時間がかかり、負担が大きくて大変」と感じており(後略)
yahoo Newsより

自分のやってきた勉強会の方法、まとまらず草稿のままになっている。考える訓練、基本知識の習得、そして何より取り組む人間の情熱、それらをどうプラスにしていくか、さらには足を引っ張るような人、できごとなどをどうクリアしたかをまとめたいのだが・・・
そんなおりにみたニュース。
ものごとをはじめる時、ある程度形ができるまでは大変だし試行錯誤は当然。あくまでも目的を据えた指針というかビジョンがあれば、最終的に形になってくるだろう。
で、「総合学習」とやらが始まって数年、学校が年単位で動くことを考えると、成功、失敗など反省していくべき段階だろう。あまり効果がないと考えるという結論は早いと思うが・・・

ん?


教材作成などの準備に時間がかかり、負担が大きくて大変




仕事だろ? 負担が大きいからやめましょう? こいつらの睡眠時間、俺の知っている人達より短い奴がいるとも思えない。そんなやる気のない奴らがやるから失敗するんだ。
俺の分野でいえば、溶媒を蒸留するのが大変とか、カラムで精製するのが大変とか、本質的に解決できないわけでもない理由で研究をやめるようなものだと思う。教師自身興味のある題材を持ってくれば負担に感じることもなかろうに。数年間手塩にかけた子供を怠惰な人間にモノを教わる、親御さんにしてみたら金を使って馬鹿にされていることになる。やるせない話だ。

JACS ASAP

2005-06-19 09:01:14 | 新着論文
Polaron Delocalization in Ladder Macromolecular Systems

ハシゴ状のトリアリールアミンを設計、合成、電気化学、各種スペクトルの検討。
Pd catによるアミノ化を上手に使い、ladder型のトリアリールアミン骨格を上手く合成しています。後半部位の測定に関しては、既知のトリアリールアミン誘導体でも行われている測定ですが、その解釈を図示しているところが勉強になりました。誰にでもわかるようにとは、プレゼンの基本です。しかし、本質だけをまとめようとすると極論になる傾向があり、ディスカッションが進まなくなる恐れもあります。Hartwigはうまいなと思います。後半部位のディスカッションは頭の中が痒くなり、ギブアップ。この測定は何ができるかという原理だけでもおいかけ、議論にもついていけるようにとしているのですが、勉強不足です。自身、合成から学べることが減ってきたので、合成技術を手段にどのように新しい分野に貢献していくか、模索中です。