有機化学にっき

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Org Lett. ASAP

2005-06-12 14:26:54 | 新着論文
Gram-Scale Synthesis of (-)-Epibatidine

エピバチジンのグラムスケール合成です。補助基を用いたイミンへの不斉アリル化、RCMを鍵段階に合成しています。残念なことに分子内環化のためのオレフィンの臭素化で、目的と逆の立体の化合物がmajorで得られ、還元で再生するという手法をとっています。グラムスケールで合成でき、鏡像体や誘導体の合成も容易とのこと。

ヤドクガエルの皮膚から採取された鎮痛作用をもつ化合物で 「メディシン・クエスト―新薬発見のあくなき探求」という書籍で初めて知りました。かなりの不斉合性や誘導体合成の研究がされているはずなのに・・・?と疑問に思って読んでみましたが・・・自分がレフリーならrejectします。大抵論文では比較的良いデータを出すので12ステップでoverall 12%、精製もカラムを用いているので話になりません。また、再生できるとはいえ、undesireなジアステレオマーがmajorでは面倒です。どこで落ちているのかをみると、C-C bondを作り上げた後、やっつけで進めたようにみえます。最終段階は毒性の高いものを分けるので落ちても仕方ないかなとも思いますが・・・。前半はかなり効率がよいので、不斉補助基を結晶性の高いものに変えて結晶化できるのがよいかと。臭素化がaxialでいくのは避けられそうになので、窒素原子上の保護基を変えて求核性をあげて分子内環化を達成できれば・・・とは思います。筆者もうまくいっていないようなので難しいでしょう。変えた保護基は最終段階で最終段階の手前で毒性がなく、脱保護の操作、精製が容易なもので成功すればベストですが。
referenceも少ない気がします。もっといろいろなグループが手がけていてもおかしくないと思うのですが・・・? epibatidineを検索したところ素晴しくまとめられたサイトがありました。
 ttp://www.chemsoc.org/exemplarchem/entries/2004/icl_Pan/index.html