有機化学にっき

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Organometallics ASAP

2005-06-09 23:05:47 | 新着論文
A Bowl-Shaped Phosphine as a Ligand in Rhodium-Catalyzed Hydrosilylation: Rate Enhancement by a Mono(phosphine) Rhodium Species

bowl shapedの立体的にかさ高いホスフィンを用いると、ケトン、ケチミンのヒドロシリル化が加速され、その理由を考察。
北大の辻先生のペーパーです。以前JACSにPd Blackが発生しないホスフィンということで報告されていまして、なぜこのようなかさ高いホスフィンでは発生しないのかが疑問でした。今回の報告では、ヒドロシリル化がなぜ加速されるのかを検討していて勉強になり、なんとなくPdの方も納得できました。辻先生がデンドリマー型の触媒の開発をしていたので、勘違いしていましたが、bowl shapedは東大の川島先生、後藤先生の開発のようです。
P-Se のカップリングからホスフィンのbasicityを求めたり、リンNMRで詳細に錯体の性質を追い、Rh錯体を単離し、X線による構造決定を行っています。かなりの苦労があったろうと思います。discussionのしっかりした内容でひきこまれました。Ni(CO)4を使わなくても塩基性はだせるのですね。
結論として、活性な錯体種が立体障害により安定化され、また反応するのに十分な空間的余地があるためとのこと。この結論は岡崎先生、川島先生などの分子設計と一致します。触媒設計の面白さとなんとなく、bulky and electron rich phosphineの反応性の原因もわかったような気になりました。(以前Hartwigの講演でエネルギーダイアグラムでの、原系、遷移状態への効果による説明を聞いたのですが、わかりやすいけれども、いまいち納得がいかなかったので)