たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (9)

2008年12月04日 14時42分45秒 | 砂電車の冒険
砂 電 車 の 冒 険  ( 1-9)

エステマはようやく白兎海岸にある道の駅に到着しました。
「みんな着いたよ~」
陽朗さんは運転席から“ジー”と海を眺めています。
「今日は波が高くて潮干狩りはできそうもないな~」
残念そうに後部座席の砂千子さんを振り返りました。
「せっかく白兎海岸まで来たんだから浜におりてみようよ!海人、奈美どうする?」
砂千子さんは二人の顔を促すように覗きこみました。
「僕、浜辺で遊びたい!」
「私、砂遊びがしたい!」
海人君と奈美ちゃんは海を見ながら、待ちきれない様子で“そわそわ”しています。
「それなら海におりてみるか?」
海人君はさっそく車から降りると荷台からチロを降ろしました。チロはうれしそうに飛び跳ねています。
陽朗さんはエステマのエンジンを切ると、後部座席のドアーを開けました。
「さあ~、ママ、ナミ、降りて!」
陽朗さんはみんなが降りるのを確かめると、車に載せてきた荷物をおろしはじめました。
「海人パラソルを運んで。奈美はスコップとバケツ。ママはお弁当を持って」
次々に荷物を降ろし、最後に陽朗さんがシートとクーラーボックスを担ぎました。
大海さん一家は陽朗さんを先頭に、陸橋を渡り白うさぎに歌碑を眺めながら浜辺に下りて行きました。
「ここに荷物を置こう!」
陽朗さんが浜辺の高台にシートを広げると、みんなは提げてきた荷物を置きパラソルを立てました。
「ママ、一休みしようか?」
みんなはシートに腰を下ろしました。海からは入道雲のように次々と波が湧きあがり、美しい波紋を描いて砂浜に押し寄せています。
「みんな、波打ち際まで競争しよう!」
陽朗さんは渚君の手を握り立ち上がりました。
「よ~い、ドン」
陽朗さんの号令で海人君と奈美ちゃんは一目散に駆け出していきます。
チロに引かれるように海人君が先頭を走ります。奈美ちゃんも長い髪をなびかせながら続いていきます。
渚君も砂まみれになりながら一生懸命に走っています。
「渚、ガンバレ、ガンバレ」
陽朗さんは渚君をはげましながら後を追います。砂千子さんはみんなを見守るようにゆっくりと後を歩いています。


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