たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (24)

2009年04月01日 17時31分06秒 | 砂電車の冒険
砂電車の冒険 (3-3)

海人君はお爺さんとの約束をすっかり忘れ、再びお城に向かい歩きだしました。
しだいにお城に近づいていくと、幾何学的に柱が建ち並ぶギリシャ宮殿風の砂のお城が見えてきました。
ようやくお城に辿りついた海人君たちが砂丘を振り返ると、ここまで歩いてきた足跡が砂の上にくっきりと残っていました。
「お城に入ってみようか?」
海人君はお城の様子を“そ~と”窺がうと、柱の陰に隠れるように恐る恐る中に入っていきますが人の気配はありません。
「奈美、もっと奥に入ってみようか?」
三人は海人君を先頭に柱の陰に身を隠しながら、おくへ奥へと進んでいきました。
アーチ型の薄暗い回廊の横には、小さな部屋がいくつもいくつも並んでおり、さらに奥に進んでいくと広いホールが見えてきました。
「奈美、何か動いているよ!」
海人君が声を殺し囁くように言いました。
「奈美、渚、ここで待っていて!」
海人君は柱の陰に隠れながら静かにホールに近づいていきました。
するとホールには体長15cmくらい、茶褐色の砂ネズミたちが滑り台、車輪、ブランコなどで楽しそうに遊んでいます。
海人君は奈美ちゃんと渚君を振り返り手招きをしました。
奈美ちゃんはチロの首輪を“ギュウー”と掴み、渚君の手を握って近づいてきました。
「ほら、あそこにたくさんの砂ネズミガいるよ!」
海人君がホールの砂ネズミを指差しました。
「わ~、可愛い!」
ホールに駆けだそうとする渚君の腕を、海人君がようやく掴み静止しました。
「渚、ちょっと待ちなさい!」
海人君は奈美ちゃんと渚君をその場に残し、腰をかがめながら砂ネズミのいるホールの中に静かに入っていくと、砂ネズミたちは一斉に動きを止め“キョトン”とした顔で海人君を見上げました。




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