たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (25)

2009年04月15日 15時57分03秒 | 砂電車の冒険
砂電車の冒険 (3-4)

海人君が手を差しのべると、砂ネズミたちが“ちょこちょこ”と近づき指を“ペロペロ”と舐めはじめました。
「奈美、渚、こっちにおいで!」
海人君が小声で囁くように呼ぶと、奈美ちゃんはチロを柱につなぎ渚君と静かに近づいてきました。
「奈美もやってみる!」
奈美ちゃんは腰をかがめると、砂ネズミの中に入り手を伸ばしました。
すると砂ネズミは手のひらから、肩、背中へと“スルスル”と登ってきます。
「ワ~くすぐったい!」
奈美ちゃんは“ニコニコ”しながら、肩に乗った砂ネズミを手に取り、優しく撫でてやりました。
渚君の周りにもたくさんの砂ネズミが集まり、渚君がホールの中を走ると一斉に後を追いかけていきます。
三人が砂ネズミとすっかり仲良しになり楽しく遊んでいると、回廊の横にある部屋の砂ネズミたちも次々に集まり、ホールは海人君たちと砂ネズミの運動場のように騒がしくなっていきました。
そのうちに砂ネズミは二本足で立ち、前足を頭まで持ち上げ輪になると、ネズミのダンスを踊りだし、海人君たちもネズミの動きに合わせ、手拍子をしながら一緒になって踊りました。
チロだけは前足を“だら~ん”と投げ出しおとなしくこの様子を眺めています。
あまりの楽しさに時間のたつのもすっかり忘れ遊んでいると、砂ネズミたちは一匹、また一匹と姿を消し、ホールは“シーン”と静まり海人君は我に帰りました。
「ワー大変だ、早く砂電車に帰らなくては!」
海人君たちが慌ててお城の外に飛び出すと、太陽は西に傾き、空は茜色に染まっていました。




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