たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (22)

2009年03月14日 17時08分04秒 | 砂電車の冒険
砂電車の冒険 (3-1)

砂電車がようやく岬を過ぎると急に視界が広がり、前方に白い砂におおわれた砂丘が太陽の光を浴びて眩しく輝いて見えてきました。
砂電車はなだらかな浜辺を過ぎ起伏にとんだ砂丘へと進み、いくもの峠を越えると今にも崩れそうな大きな砂山の麓にさしかかりました。
すると“バラバラバラ”と乾いた砂が電車の屋根に落ちてきました。
「お兄ちゃん怖いよ!」
奈美ちゃんが椅子にしがみつきました。
海人君は電車のスピードを落とし“ゆっくり、ゆっくり”通り過ぎていきました。
“ドスン!”大きな音とともに電車は“グラグラ”左右に大きく揺れ、倒れそうになりました。
海人君が驚いて振り返ると、砂のかたまりが雪崩のように線路に覆いかぶさっていました。
海人君はその場から逃げるようにスピードを上げさらに行くと、遠くの砂山の頂に蜃気楼のように駅が見えてきました。
「ナミ、渚、もうすぐ砂丘駅に着くよ!」
海人君が砂丘駅を指差すと、二人は待ちきれない様子で“ソワソワ”動き始めました。
「お待たせ。砂丘駅に着いたよ!」
砂電車が静かに砂丘駅のホームに滑り込むと、渚君と奈美ちゃんは飛び跳ねるように椅子から降りました。
海人君が砂時計に目をやると、時計の砂はすでに半分近くまで減っています。
「奈美、渚、ちょっとココにおいで!」
海人君は二人に運転席の砂時計を見せながら言いました。
「この時計の砂が下の胴に落ちるまでに白兎駅に帰らないと、パパ、ママに会えなくなるから遠くに行ってはダメだよ!」
奈美ちゃんと渚君は不思議そうに海人君の顔を見つめながら頷きました。
「さぁ~砂丘に降りてみよう」
「ワァ~広い、広いな~」
チロは奈美ちゃんにリールを外してもらうと勢いよく砂丘を走りだし、チロの後を追うように、美しい続く風紋を眺めている海人君の頬を涙が濡らしていました。




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