たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

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お地蔵さんは百面相 (その三)

2011年09月24日 17時50分04秒 | 雲雀のさえずり

今日は久々の秋晴れ

澄み切った日本海の沖合に、隠岐諸島がくっきり見える。

日本の三名山の一つ、大山も久々に山頂まで望める。

先週は台風12号が襲来し家に籠っていた。

「こんなに天気がいいのに、何処かに出かけてみようよ」

恐妻家の妻に言われると逆らうことはできない。

「何処に行く?」

「何処でもいいよ」

目的もなく車を走らせていると、地蔵滝の案内板が目に留まった。

「地蔵滝に行ってみようか?」

地蔵滝は大山を源流として、大山山麓から湧き出る名水で、佐陀川に注いでいる。

地蔵滝が近づき佐陀川を見ると、辺り一面、土砂に押し流され無残な姿。

「お地蔵さんは大丈夫だろうか? 」

心配しながら下りて行くと、地蔵滝から流れ出ていた川は原形を見る影もない。

雨風を伴って荒れ狂った台風12号、改めて、その破壊力の凄まじさを実感した。

お地蔵さんは何事もなかったように、河原に向かって静に座っている。

お地蔵さんに手お合わせお祈りしていると

「長い年月にはこんなことも起こるよ。ジタバタするな、これが自然というものだ!」 

と、ささやく声が聞こえたような気がした。           

 

 

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「大山登山」山頂への挑戦

2011年09月19日 17時09分40秒 | 雲雀のさえずり

学校から帰ってきた小学五年生になる孫の龍之介が、私の顔を見るなり開口一番

「おじいちゃん、大山に登らん」

「どうして」と、私が尋ねると

五年生全員で9月9日(金)に大山登山をすることになったが、先生だけでは生徒を引率するのに十分でなく、保護者などにも参加していただくよう協力を求めているのだという。

「うぅ~ん、もう10年以上も登っていないから、自信ないな~」

とは言ったものの、久々に登ってみたい気持がふつふつと湧いてきた。

しかし、子供たちを引率して登る立場が、逆に引率される羽目になっては面目丸つぶれである。

「龍ちゃん、おじいちゃんも登ってみたいけど、もう年だし、皆さんに迷惑をかけたらいけんけえ、先にゆっくり登って、頂上でみんなが登って来るのを待っちょうって先生に言っておいて」

この老体、無事に頂上までたどりつけるだろうかという不安と、久々に大山山頂の征服に挑戦できると言う、かすかな胸のときめきを抱きながら登山の当日を迎えた。

孫たちは8時に学校を出発して、9時頃から登山を開始する予定であった。

私は6時に家を出発して、夏山登山口近くの下山駐車場に6時30分頃に到着した。登山靴に履き替え、弁当とわずかな装備品を詰めたリックを背負い、山頂を目指して登山を開始した。

登山口から4合目までは一気に登ったが、5合目、6合目と進むにつれ、しだいに足が重くなり6合目の避難小屋で長い休憩をとった。

6合目の休憩場所から山頂を見上げると、7合目付近から山頂にかけ濃いガスに覆われていた。

6合目から8合目にかけてが、大山登山の一番の難所で気力体力を消耗する区間でもある。

6合目で十分な休憩を取り体力の回復を待って、7合目に向かって石のむき出しになった石段のような急斜面を登っていると、左の太もものあたりが“ピクピク”と小刻みに震えだした。

「とうとう、足に来たか」

このままのペースで登れば痙攣を起こしかねないと考え、一歩一歩、太ももの状況に注意を払いながらペースを落とし、20メートルほど登っては一服、太ももを揉んではまた登る。

こんな動作を、何度も何度も繰り返し、足をだましだまし登っていったが、8合目を目前にして思うように足が動かなくなってしまい、その場で暫らく休憩をとり、体力の回復を待った。

気力、体力が少しばかり回復したところで再出発、ようやく8合目までたどり着いたが、辺りは濃いガスに覆われていた。

それでも幸いなことに、ここから山頂までは木道が造られており比較的平坦な道が続いた。

「大山登山はやはり、8合目までが勝負だな~」

太ももの痛みが和らぎ、改めて実感しながら濃いガスの中に、おぼろげに山頂の山小屋が霞んで見えると急に足取りも軽くなった。

9時20分、ようやく山小屋に到着し、分厚い板の重い引き戸を開けると、中に20~30人くらいの登山客が休んでいた。

山小屋で弁当を食べて頂上に登ると、濃いガスに覆われて視界の悪い中にかかわらず7・8人の登山客が休息を取っていた。

私は、もう二度とこの山頂に立つことはあるまいと思い、濃いガスの中ではあったが、カメラを片手に辺りの写真を撮っていると、三脚を立て山頂の写真を写そうたしていた45歳前後のいかにも都会的で理性的な男性が

「写真を写しましょうか」と言ってくれた。

「お願いします」

私は何の躊躇もなく好意に甘えた。

「お宅も写しましょうか」と言うと、相手の男性も、私の言葉を待っていたかのように

「お願いします」と即座に答えた。

二人で山頂付近の写真を数枚づづ撮り合っている内に、少しづつ親しくなり

「お宅はどちらから来られましたか」と尋ねたみた。

すると彼は、昨日の夜行バスで東京を出発し、今朝、米子に着き、その足で大山に登ったのだと教えてくれた。

「せっかく遠くから来られたのに、この悪天候で残念ですね」私が言うと、彼は辺りを見渡し残念そうに

「しかたないです。今日は山小屋に一泊して、明日、下山します」と言った。

彼は、数年の計画で、日本百名山の踏破に挑戦しているが、まとまった休みを取るのが難しく、遠くの山にはなかなか登れず大山でようやく70数名山目だと言った。

私も山が好きで若かりし頃には、あちこちの山に登った経験があったので、山の話題に花が咲き、もっと長く話をしていたい気持に駆られたが、いつまでも話しているわけにもいかず彼に別れを告げ山小屋へ引き返した。

山小屋で横になりながら休息を取り、12時まで待ったが孫たちは登ってこない。

「小学5年生の足でも3時間あれば登れるはず、この悪天候で中止したのかも?」

私は山小屋を後にして、もう一度頂上に登り、子供たちのいないのを確認して下山していると、9合目付近で元気の好い100人くらいの男女の中学生の集団に出くわした。

木道の端によって中学生のにぎやかな集団をやり過ごし、さらに下っていると木道に覆い被さるように生えたキャラ木も間から、小学生らしい姿が見えてきた。

「あれが、龍之介たちかも知れない」

正面登山道と夏山登山道の木道の三差路で彼らの到着を待っていると、50~60人の生徒が引率の先生に先導されながらやって来た。

杖で先生にひかれながら歩く子、足取り重くへとへとになった子、まだまだ元気で走りだしそうな男子などが通り過ぎて行く。

「あと、どのくらいかかりますか」一人の女子小学生が私に話しかけてきた。

「あと、15分か20分ぐらいかな?ガンバレ」と励ます。

「僕たちは何処の小学生」と聞くと

「○○小学校の五年生です」との返事。

残念ながら孫たちの小学校ではなかった。

孫に良いところを見せてやりたかったのに、少しばかり残念な気持ちを抱きながら木道を過ぎて、7合目に向かって下りていると、また小学生の集団が登ってくるのが見えた。

先頭は見覚えのある先生、かなり疲れた様子で足取りも重い、孫たちの学校に校長先生た。

「お疲れさんです」私が声をかけると、校長先生は息を弾ませながら

「もう下りられたんですか、頂上はどうでした」と尋ねた。

「山頂はガスが濃くて何も見えません。山小屋でだいぶ待ったんですが、なかなか登ってこられないので中止にでもなったのではないかと思って下りてしまいました」と答えた。

校長先生は一瞬不満げな表情を浮かべたが、すぐいつもの優しい表情を取り戻すと、後ろに連なる生徒たちに声をかけ、元気づけながら頂上を目指して登って行った。

「おじいちゃん、おじいちゃん」

龍之介が私の姿を見つけ声お掛けてきた。

「どおして、龍ちゃんのおじいちゃんがここにいるの」

孫の友達の一人が言うと、他の友達も不思議そうに私を見つめた。

「おじいちゃん、もう一度頂上に登ろうよ」と孫に言われたが、そんな気力も体力も残ってはいなかった。

「もう少しだけん、頑張って登ってきない」

孫と別れ4合目付近まで下りると、前方に若い二人ずれの女性の姿が見えた。

二人の女性はブナ林を眺め、楽しそうに会話を弾ませながらゆっくりと歩いていたので、彼女たちは私が真後に追いつくまで存在に気がつかない様子であった。

「こんにちは、何処から来られましたか」

私が声をかけると、彼女たちは突然の呼びかけに、びっくりしたように振り返ったが、そこは山ガールの素晴らしさ

「私は京都からです」

「私は大阪からです。今日は二人で山陰に一泊して明日帰る予定です」と言った。

彼女たちとの爽やかで清々しい会話を楽しみながら歩いていると、いつしか疲れもどこかにふっ飛び、瞬く間に登山口まで帰っていた。

もし、こんな若くてかわいらしい彼女たちに、都会の真ん中で声でもけたら、痴漢か変質者に間違われるかもしれない。

山は不思議な力を持っている、山の自然は人の心を清め、赤ちゃんのような純粋無垢な心を取り戻させ、人の心を素直にしてくれるものだと思いながら、久々に山登りの楽しさを満喫した。

彼女たちに別れを告げ、駐車場で靴をはきかえながら、明日からしばらくは足に痛みが残り歩くのもおぼつかなくなることだろうと思いながら家路についた。

ところが一夜が明けてみると、予想に反し、足の痛みは思ったより軽く、これなら、まだまだ山登りに挑戦できそうだと自信が湧き、山頂で出会った登山客の顔を思い浮かべ、今の私でも百名山の踏破が出来るかも知れないとの思いが強くなってきた。

 

 

 

 

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からす天狗の恩返し (9)

2011年09月14日 17時54分30秒 | カラス天狗の恩返し

村では怪物の噂を聞いた女や子供たちに交じって、ようやく元気を取り戻した礼香が茅葺の屋根から、簾のように氷柱の下がった、義助の家の軒先に集まり誠輝たちの帰りを待っていた。

 

「あ!あそこに灯りが見える」

 

村人の一人が叫ぶと、今か、今かと帰りを待ち構えていた人々は、一斉に村人が指差す先を食い入るように見つめた。

 

すると、暗い雪原の雪明かりの中に、ロウソクの炎ようにかすかの揺れる灯りが見えた。

 

その灯りは、しだいに近くなるにつれ大きくなり、松明をもつ男たちの灯りとなって村に向かって来た。

 

誠輝を先頭に天狗を乗せた橇が義助の家の軒先に着くと、橇を引いた男たちが、天狗をくくりつけていた縄を解き、被せていたムシロをはぐった。

 

息を殺してこの様子を見守っていた、女や子供たちが死んだように橇に横たわった天狗を取り囲むと、義助は村人に言った。

 

「この怪物が、大山の山奥に住んでいるといわれているカラス天狗だよ」

 

村人は食い入るように天狗を見つめながら一応に驚きの声を上げた。

 

「いったいどうして、こんなところに現われたのかしら?」

  

「あぁ、かわいそう。まだ若い天狗さんみたいなのに」

 

などと口々にささやいた。

 

男たちが天狗の衣に着いた雪を払い落し、氷のように冷たくなった身体を抱え、囲炉裏の傍らに横たえると、女たちは天狗の身体を温めながら懸命に介抱した。

 

一時間くらいたったころ、死んだようになっていた天狗の顔にほんのりと赤みが戻ってきた。

 

「もう大丈夫、きっと助かる」

 

義助が天狗の顔を覗き込みながら言った。

 

「よかった、よかった」

 

天狗を取り囲んでいた村人は、お互いに手を取り一応に“ほっと”した表情を浮かた。

 

礼香は天狗を取り囲んでいた村人の間から、覗き込むようにして天狗の顔を見ると目頭にそっと手を運んだ。

 

それから間もなくして天狗は薄目を開き、ぼんやり周りを見回していたが、あまりに多くの人たちに取り囲まれているのに驚き、咄嗟に立ち上がろうとした。

 

しかし、衰弱しきった天狗には立ち上がるだけの体力は残っておらず、“ヨロヨロ”と倒れそうになるところを村人に支えられ、再び囲炉裏の傍らに寝かされた。

 

「心配せんでも大丈夫、安心してやすみなさい」

 

 義助は孫でも諭すように優しく言った。

 

「ここは、いったいどこですか?」

 

天狗は、弱々しい口調でおおいかぶさった顔に向かって尋ねた。

  

「ここは種原という大山の麓の小さな村だ」

 

と、義助が答えた。

 

そして、天狗が大野池の崖下で雪埋めになって倒れていたのを、村に運んで介抱したしたのだと教えてやった。

 

すると天狗は、事の成り行きをようやく悟ったように村人の顔を見まわした。

 

「ところで天狗さんは、どうしてあんなところで倒れていたんだね?」と、義助が尋ねると 

  

「実は、私は大山に住む、カラス天狗の勇翔というものです。今年の冬はこれまで経験したことのないほどの大雪で食べ物にも事欠くありさまで・・・・・・・・・・」と、この冬の苦しい実情を語った。

 

カラス天狗と言えば、超人的な霊力や神通力を備え、時に、人々から恐れられ、また崇拝されてきた怪物。

 

その天狗でさえ、この年に降った大雪の猛威に太刀打ちすることが出来ず、こうして目の前に横たわっている。

 

村人はこの現実を目の当たりにして、自然の厳しさ、恐ろしさを改めて思い知らされたのだった。

 

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お地蔵さんは百面相 (その二)

2011年09月07日 18時18分25秒 | 雲雀のさえずり

野分が過ぎ去り、すいこまれそうな青空が深く広がっていた。

 

肌を包み込むような穏やかな風が、爽やかにほほを通り過ぎ、うねりの残る日本海ではサーファーの群れが燕のように波と戯れている。

海辺の断崖下の狭い道を進むと、傍らに、西国を見つめて立つ、お地蔵さんが不動の姿で祀られている。

 

「お地蔵さん、お地蔵さん、お地蔵さんはどうしてこんな寂しいところに立っているの?」

「わしには、足があっても歩けない。わしを祀った人間に聞いてくれ」

 

「お地蔵さん、お地蔵さんはいつも何を考え、何を見ているの?」

「わしは何も考えていないし、何も見てはいないよ」

 

「お地蔵さん、お地蔵さんはどうしてそんなに大きな頭をし、大きく眼を見開いているの?」

「そんなこと、わしを彫った石工に聞いてくれ」

 

「お地蔵さん、お地蔵さん、毎朝のように賽銭を供えているのにどうして願いを叶えてくれないの?」

「お前はバカか、わしが、お前の賽銭で、一度でも美味いものを食ったところを見たことがあるのか」

 

「お地蔵さん、お地蔵さん、お地蔵さんに願いを叶えてもらうにはどうすればいいの?」

「わしは、ごらんのとおりの石頭、脳もなければ動きもできぬ。わしに、願い事をするのなら、お前も、わしのようになることだ」

 

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