たわいもない話

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電力事業の変遷

2022年09月27日 10時24分40秒 | 雲雀のさえずり

我が国の電力事業の歴史は、明治16年東京電灯会社が民間資本で設立されたのが始まりで、同21年から30年にかけて主要都市でも民間資本による電灯会社が相次いで設立されると、それが地方の中核都市にも次々と波及していった。


その後、日露戦争後の明治40年頃の急激な経済拡大に伴う好景気を背景に、参入企業はさらに増大して電力事業は活況を呈した。


しかし、明治42年から43年の日露戦争景気の反動を契機に起こった不況で、基盤の脆弱な企業は整理統合される一方、不況を乗り越えた会社でも企業間競争が激化した。


大正3年に第一次世界大戦が勃発すると、翌4年から7年にかけて好景気を迎えて、急激な工業化によって電力需要が増大し供給力に不足をきたしたため、卸売火力発電会社が設立されるに至った。


しかし、第一次世界大戦後の大正10年頃になると、一転して大恐慌となり既設電力会社に甚大な影響を及ぼし、合同、合併、譲渡が進んだ。


このような過程を経ながらも明治40年から大正14年の間に、事業者数は116から738社と約6倍に、また、発電量は12万kwから280万kwと24倍に増大し、日本の経済活動ならびに国民生活にとって重要かつ主要な地位を占めるようになった。


昭和2年頃から政府内部において、日本経済の伸長に対応する電力供給の長期安定化を趣旨とする、電力統制の議論が持ち上がるようになった。


同5年4月に第二次若槻内閣は、電力統制を目的とした電気事業法の抜本的改革案を提出し、翌6年4月に以下の内容で公布し同7年12月より施行した。


1.電気事業統制下における発送電設備の建設と利用面の合理化。


2.供給責任と需要家の保護。


3.電気事業会計規定の改定。


同年10月、岡田内閣により設置された内閣調査局の「電気は空気、水、光と同じくこれを営利事業の対象とすべきではない、良質な電気を、豊富・低廉に供給するには国営にすべし」との主張の下に、電力国営化論が台頭した。


これに対し電気事業者からは「政府が電力を国家管理しようとするのは、経済構造全般を変革しようとするもので国営論には幾多の無理がある。これは一電力会社だけの問題ではない、国家主義を基にした思想的な問題である」と、一般世論を巻き込んだ反対運動が起こり成立に至る過程には紆余曲折があったが、同13年3月に国家管理法を次の要旨で決定した。


1.管理の範囲


(1)    主要新規水力発電設備、主要火力発電設備は国家がこれを管理する。


(2)    (1)の設備は、新たに設立する特殊会社において新設し、既存の設備はこの特殊会社に出資させる。


2.配電事業


(1)    配電事業についても統制強化を図るため、区域の整理統合を行い供給事態の改善、電気利用の普及促進を図るとともに、料金の低廉かつ均衡を得るよう監視を拡大する。


上記の国家管理法の基、昭和14年に日本発送電(以下、日発という)が発足した。


その後、日発の発送電管理は更に強化されることになり、同17年には国内の発電設備の65%を所有することになった。


また、配電会社についても昭和16年の国民総動員審議会において、全国9特殊配電会社を設立するとの審議を経て410余りの電気事業者を、第一次、第二次統合を経て、同18年に9配電会社の体制が完了した。


我が国の電気事業は、戦時経済という特殊な条件の中で、既存の電気事業者の全面的な合同の基に、日発と9配電会社の10社による独占体制となった。


第二次世界大戦の敗北を機に、電気事業の運営体制について活発な議論が巻き起こるようになった。


地区別配電一貫論、日発および配電会社の拡充強化論、発送配電一元論等、電力事業再編案は激しい論議を経ながらも、三鬼隆(日本製鉄社長)松永安左衛門(東邦電力社長)などの努力によって作成された「発送配電一貫経営の全国9ブロック会社案」が、昭和25年10月の国会に提出され、同26年5月1日から現在の9電力会社体制が発足した。


その後の各電力会社は、昭和40年代後半までの高度成長の波に乗り、自由化の下に


安定経営に努めてきた。


昭和40年代後半からは、二度にわたって石油危機に襲われて調整期を迎えたが、昭和60年代に入って円高不況を克服するとバブル経済による平成景気を迎えた。


平成5年頃からの長期不況に襲われながらも、公益事業としての地域独占体制の基に着実の発展を続けてきた。


しかし、平成23年3月11日の東日本大震災に伴い発生した、東京電力福島第一原子力発電所事故対応の不手際から、原子力発電所の全面停止という非常事態に追い込まれ電力の需給バランスが逼迫し、各電力会社は未曽有の危機に直面している。


競争力導入を目的として平成12年3月21日に公布された、電力の自由化議論が東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、官民の間でさらに活発に行われるようになり数年後には、電力の完全自由化が実施される見通しとなっている。


今日までの電気事業の歩み大きく分類すれば、明治16年から大正14年頃までの電気事業創業時期を第一期、昭和2年から同25年までの電力統制を含めて時期を第二期、昭和26年から平成12年の9電力体制下での地域独占時期を第三期、平成12年から現在に至るまでの電力の部分自由化の時代を第四期とするならば、地域独占による9電力体制を解体し、平成26年より順次実施されようとしている、発電、送配電、販売を分離した電力全面自由化の時代を第五期として分類できるのではないか。


 


電気事業を取り巻く政治情勢


 


景気回復が一向に進まず閉塞状態が続く中、小泉純一郎氏は「構造改革なくして景気回復なし」を旗印に掲げ自民党総裁選に臨み、国民の世論を背景に自民党員の高い支持を得て、4月24日橋本龍太郎首相他の候補を大差で破り新総裁に選任され、4月26日の首班指名選挙で首相に就任した。


小泉内閣の支持率は、各種世論調査で80%以上の圧倒的な国民の支持率を得て順風満帆な船出をした。


小泉首相が掲げる「構造改革なくして景気回復なし」の政策実現の施策は、以下の4点に要約できるのではないか。


1.特殊法人で民営化できるものは民営化し、民間活力を活かす。


2.規制の緩和、撤廃の見直しを徹底的に行い競争力に導入を図る。


3.緊急経済対策の速やかな実行。


4.不良債権の早期処理。


しかし、これらの政策実現には当然痛みを伴うものであるが、先般報道されたフジテレビ系で放映された「報道2001」の世論調査では「構造改革には痛みが伴うが我慢できるか」の問いに対して、我慢できる65.6% 我慢できない27.4% と多くの国民は小泉首相の政策を支持している。


従って、これらの世論の趨勢から考えると、電力事業においても規制の緩和、撤廃は更に進み、新規参入企業を含めた各電力間の競争が激しくなることが予想され、早急な企業体質の強化が求められる。


 


電気事業の現状


電力業界が現在の9電力体制に再編されて、平成13年5月1で創立50周年を迎えた。


この半世紀の間に全国の電力需要は27倍に増加し、各電力会社は着実に成長を遂げてきたが、平成不況による景気低迷で電力需要に急ブレーキのかかる中、第三期時代に風穴を開け第四期時代の引き金となったのは、平成12年3月21日から始まった電力の部分自由化である。


総合商社、石油会社、ガス会社、外国企業等が電力市場に参入するとともに、地域独占に守られてきた既存の電力会社間の競争も始まった。


電力安定供給を目指す自民党のエネルギー政策基本法(案)の評価には「米カリフォルニア州の電力危機を受け、やみくもな自由化は危険である」との意見もあったが。冒頭で述べてように、小泉内閣の発足の経緯から推測すれば、二年後の制度見直しでは自由化対象が拡大されるのは確実で、新規参入者を含めた競争の激化は避けられないものと考えられた。


本格化する電力自由化は、電力事業の第一期後半から第二期前半かけて電力会社が乱立して、競争が激化した時代に戻る可能性もとの指摘もある。


自由化の行くつく先は、サービス、料金値下げの競争であり体力勝負となることは容易に予想され、また、石油、ガス、燃料電池、自然エネルギー、分散型電源などを含めた各エネルギー間の競争も激化するであろう。


しかし、この半世紀にわたって電気事業者が営々と努力し築き上げた「良質な電力の安定供給体制の確立」この精神は、電力事業がいかなる形態に変容しようとも確実に継承しなければならない。


 


<p/p>

政治に望むこと


  これまで述べてきた、政治の流れ、電気事業の変遷と現状、現業部門での対応策等は、電気事業の未来を危惧し記述したものであり、電気事業がいかなる形態に変わろうとも電気は国民生活にとって欠かすことのできないエネルギー源であることには変わりはない。


ひとたび、過去のアメリカ カリフォルニア州で発生したような大停電が日本で発生すれば、日本経済、国民生活にとって計り知れない大打撃を与えることになろう。


今後、電力事業は新規参入企業、各電力会社、エネルギー源間での激しいお客さまの争奪戦が起こるであろうが、国民生活を守るためには競争の中にも秩序ある政策を望むものである。


 


 


 


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