たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (14)

2008年12月25日 18時01分56秒 | 砂電車の冒険
砂 電 車 の 冒 険  ( 2-3)

「奈美、もう大丈夫よ!」
砂千子さんは奈美ちゃんを抱きしめ、陽朗さんを見つめました。
波はしだいに高くなり、遠くの浜辺で7.8人のサーファーが気持ちよさそうに波乗りを楽しんでいます。
「グーグー」
陽朗さんはみんなの顔を見まわしました。
「パパ、お腹がへったよ~」
海人君が、お腹を押さえています。
「ママ、お弁当にしようよ!」
陽朗さんは砂千子さんを促すと、中腰になり奈美ちゃんに背中を差し出しました。
「ママ、奈美を背負わせて!」
奈美ちゃんの濡れた服のしずくが、陽朗さんの背中に伝わってきます。
「奈美、寒くない?」
陽朗さんは奈美ちゃんをいたわるように“そぉ~”と立ち上がりました。
砂千子さんも渚君の砂をはらい落とし、陽朗さんの後に続きます。
海人君とチロは、電車をつくっていた砂浜まで帰ってきました。
「あ!電車が壊れている」
砂電車は大きな足で踏みつぶされ跡形もありません。海人君は壊れた砂電車に駈け寄ると、砂を集めて直そうとしますがどうすることもできません。
「ゴメンネ~海人、パパが奈美を助けに行くときに踏んづけたみたいだな~」
陽朗さんは“ペコン”と頭を下げ壊れた砂電車をのぞきこみました。
「お兄ちゃんゴメンネ!」
奈美ちゃんは悲しそうに海人君をみつめました。
「波にさらわれなくて本当に良かったね~」
海人君は陽朗さんの背中の奈美ちゃんを見上げると“ニッコリ”笑みをうかべました。
大海さん一家は浜に道具を残し、陽朗さんを先頭にパラソルの高台に歩いて行きます。後を歩く海人君は、みんなに気づかれないよう壊れて砂電車を“そぉ~”と振り返りました。




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