私が住んでいる北九州市出身の平野啓一郎氏の芥川賞受賞作「日蝕」。私は受賞当時に同作の単行本を買っていたが、内容が重くて文章も読みづらい作品ということを知り、一度も表紙を開けないまま本箱の隅に並べていました。そして、「いつか読まなければ…」と思いながら今日まで経ってしまいました。
平野氏の新刊文庫「文明の憂鬱」を読んだ私は、再び本箱から「日蝕」(昨年、新潮文庫にもなりました)を出してみました。発行は1998年、あれから8年もたっていることに驚くと同時に、平野氏が私の1歳下というのを思い出しました。
舞台は異端信仰の嵐が吹き荒れる15世紀末のフランス。賢者の石の創生を目指す錬金術師との出会いが、神学僧を異界に導きます。洞窟に潜む両性具有者、魔女焚刑の只中に生じた秘蹟、めくるめく霊肉一致の瞬間……。
同作品はキリスト教をテーマにした重々しい内容であるだけでなく、今ではあまり使用されない漢字(フリ仮名付き)を多用しているので、本をあまり読まない人には読みづらく、最初のページで挫折しそうになるかもしれません。
しかし、読み進めると、内容はそんなに難しいものではありません。作者がわざと背伸びをして難解な文章にしているという感じで、随所に安易で稚拙な表現、後半からは無理なストーリー展開が目立ちます。平野氏は当時、大学生。若気の至りしょうか……? 若い頃の「大江健三郎」を思わせます。
平野氏の新刊文庫「文明の憂鬱」を読んだ私は、再び本箱から「日蝕」(昨年、新潮文庫にもなりました)を出してみました。発行は1998年、あれから8年もたっていることに驚くと同時に、平野氏が私の1歳下というのを思い出しました。
舞台は異端信仰の嵐が吹き荒れる15世紀末のフランス。賢者の石の創生を目指す錬金術師との出会いが、神学僧を異界に導きます。洞窟に潜む両性具有者、魔女焚刑の只中に生じた秘蹟、めくるめく霊肉一致の瞬間……。
同作品はキリスト教をテーマにした重々しい内容であるだけでなく、今ではあまり使用されない漢字(フリ仮名付き)を多用しているので、本をあまり読まない人には読みづらく、最初のページで挫折しそうになるかもしれません。
しかし、読み進めると、内容はそんなに難しいものではありません。作者がわざと背伸びをして難解な文章にしているという感じで、随所に安易で稚拙な表現、後半からは無理なストーリー展開が目立ちます。平野氏は当時、大学生。若気の至りしょうか……? 若い頃の「大江健三郎」を思わせます。