THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「俺はその夜多くのことを考えた」(三谷幸喜/幻冬舎文庫)

2006年02月26日 | Weblog
 1月公開の新作映画「THE 有頂天ホテル」が大ヒットの三谷幸喜(監督)。私は朝日新聞に連載中の「三谷幸喜のありふれた生活」が大好きで、その単行本をすべて買って読んでいます。彼のエッセイは平明で分かりやすく、嫌味がありません。そして、すごく謙虚な姿勢で書いています(自虐的なところが多いのですが、それをさわやかなタッチでうまく描いています)。
 そんな三谷氏の名短編といわれるのが本書です。唐仁原教久氏のカラーイラストもおしゃれで、文章とよく合っています(絵本としても十分楽しめます)。
 ある消極的なサラリーマンがやっとの思いで職場のかわいい女性(入社時にひと目ぼれした)をデートに誘うことに成功します。そして、映画を2人で見て、夜に帰宅するのですが、自分が彼女にどんな彼女に与えたのか、彼は心配になり、確かめの電話をしたくなります。しかし、こんな電話をすると逆効果になると思った彼は思いとどまろうとします。でも…。
 「電話したい電話したい電話したい電話したい、気が付いたら彼女の家の番号をダイヤルしていた」。煩悶した末にかけた1本の電話が、不幸な夜の幕開きだったのです!……そして、「俺」が学んだ〈恋愛に関する7つの真理〉とは?
 本書に出てくる「俺」のような経験をした人は少なくないと思います。私も人のこと(「こうしたいけれど、ヘンに思われるのではないか?」など)ばかりを気にする性格なので、彼の気持ちがよく分かり、彼への親しみも感じました。
 彼は三谷氏の等身大のようにも思えます。エッセイの中の三谷氏も、彼のように「小心者」のキャラクターなので…。
 
 幻冬舎文庫に入っている三谷氏のエッセイ集「オンリー・ミー 私だけが」もオススメですよ!