映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『凱里ブルース』ネタバレあり 40分長回し!ビー・ガン監督最高! 

2022-02-28 | 映画感想
凱里ブルース(2015年製作の映画)
路邊野餐/Kaili Blues
監督 ビー・ガン
脚本 ビー・ガン
出演者 チェン・ヨンゾン




面白いっ!


ノスタルジックな中国の田舎の物語かと思いきや、
なんとトリッキーなっっ!

***

前半の場所は凱里(カイリ)。

凱里は中国のめちゃくちゃ内陸の町。
監督の出身地だそう。

カメラはビッタリと固定。
完璧でひたすら美しい構図の連続。

後半は蕩麦(ダンマイ)という不思議な町。

主人公が移動し始めると、ぬる〜っとした手持ちカメラでの撮影に。
挙句、画面には主人公さえいなくなり、カメラは途中で登場した女性を追う。
そうこうしてるうちにまた主人公が現れて過去を話し出す。

何かと思えば、これ長回しだ!!!

中盤の40分が長回し!

しかもめちゃくちゃ移動する。
すげー夢みたい!
しかも夢と過去と未来が混在した世界なのか!
表現したいことと手法と、完成した映像がバッチリ合致してる!

映画マジック!!
ありがとう!


**

2回目観てやっとわかったけど
前半でも過去と現在がワンカットで交互に描かれてますね。

シューイン(ボスの息子の指を切らせた女)のシーン。
雨漏りするテーブルを映してる間に恐らくチェンはカメラの後ろで着替えてるんだよね。

で、
弟(ウェイウェイの父)との喧嘩シーンへの切れ目なく続く。

**

ネタバレは以下に。







チェンは、奥さんが病気なったがその治療費を払えない。
以前世話になったボスから金を借りるも、いざこざに巻き込まれて殺人を犯してしまう。
逮捕。9年の刑期を過ごし出てきた時には奥さんは既に亡くなっていた。
というところからスタート。
映画始まる前に起きたことで一本映画撮れるくらいに話がパンパン。
この映画は続編のよう。
**
開始は20分あたりでウェイウェイが壁に描いた時計の針が少し動く。
ここでウェイウェイの未来の姿が生まれたのかな。
そしてそのあと、壁に映写機で写された列車が延々と走る。
未来のウェイウェイはこの列車に乗って蕩麦(ダンマイ)という不思議な町に移動したんだろうか。
**
弟はそんなに悪い人だろうか。
もちろんウェイウェイに対して酷すぎるけどシングルファーザーは大変そうだし
家を守ることと老いた母の世話は大変だったのでは。
しかも家を奪われて。
弟は恐らく「あんな奴(ウェイウェイ)売り払ってやる」と本気とも嘘とも判別つかないことを言ったのでしょう。
それを聞いた子供好きのホワ(チェンの父?)がウェイウェイを鎮遠連れて行って保護した。
チェンはウェイウェイを迎えに鎮遠に行こうとする。
老女医は、鎮遠に行くんだったらってのことで昔の恋人が鎮遠にいるから服とテープを渡すようチェンにお願いする。
**
チェンは列車で鎮遠に向かう。
列車は蕩麦(ダンマイ)という町までしか行かない。
そこからバイクタクシーと船で鎮遠に行く。
列車乗り中、回想シーンはじまり。
刑期を終えて出てくるチェンを弟分が迎えにくる。
その車中で
・チェンの母が家をチェンに譲ろうとしていること
・ボスはチェンに大金を授けようとしていること
・母はその金で診療所を買うように言っていること
・弟はチェンに家と一緒にウェイウェイの面倒を見ろと言っていること
・チェンの奥さんが既になくなっていること
を知る。
**
【ここから】
蕩麦(ダンマイ)。
バイクタクシーの青年に乗せてもらう。
のちにこの青年が未来のウェイウェイだと知る。
シャツのボタンが取れたチェンは途中で仕立て屋に寄るよう青年に頼む。
仕立て屋の女性ヤンヤンと青年は知り合い。
ヤンヤンは凱里出身。凱里の観光ガイドを目指して勉強中。
チェンは、ボタンを付け直してもらっている途中で老女医から預かった服を着て、散髪屋に入る。
ヤンヤンは船に乗り対岸のポップスライブを聴きに行く。
(ボタンは!?)
そして船で対岸に渡るかと思いきや、船はぐるっと180度回転しさっきまでいた岸に帰ってくる。
凱里の観光ガイドのセリフを暗唱していると
同じく観光ガイドのセリフを暗唱している青年(未来のウェイウェイ)と声が重なる。
岸についたヤンヤンは露天商の女性から風車を買う。
風車は1秒も回らない。
(ここでは時間が進まない?)
岸では青年(未来のウェイウェイ)が待っている。
「風がないと風車は回らない」
ライブを聴き行くと言ってヤンヤンと未来ウェイウェイは、こんな橋絶対嫌だと思うボロい吊り橋を渡って対岸へ行く。
対岸では、チェンが洗髪を受けている。さきほどの散髪屋。
(チェンがいたのは元の岸のはず。空間がねじれてる。)
チェンの友人の話として自分の過去を散髪屋の女性に話す。
(チェンは老女医の元恋人の服を着ている。)
海が見たいと言っていた奥さん。
近くには青い池があったが、そこは水銀の混じった危険な池。
泳ぐはずはないが、チェンがたびたび思い浮かべる映像では青い水の中に女性ものの靴が浮遊している。
ポップスライブに行く。
チェンは君に歌うよと散髪屋の女性に言ってから、バンドと合流し歌い始める。
奥さんとその散髪屋の女性は似てるのかもしれない。
もしかしたら出会う前の奥さんかもしれない。
女性はまぶたがピクピクすると言って涙を流しながら歌を聞く。
〜僕のジャスミン 陽が登ったら会いにくるから〜
チェンは老女医からもらったテープを女性にあげる。
未来ウェイウェイ「ヤンヤンが言ったんだ。時を戻せたら凱里に戻ってくると。凱里に向かう石炭輸送列車があるんだ。その車両の全てに時計を描けば時が繋がるはずだろ。それを彼女に見てもらうんだ。」
チェン「君の名は?」
未来ウェイウェイ「ウェイウェイ」
チェン「これは夢か」
【ここまで40分長回しっ!!】
**
ミラーボールのある部屋でチェンがタバコを吸う。
向かいには女性。散髪屋の女性。奥さんか。過去の記憶の映像か。
**
未来ウェイウェイ「チェンさん、お元気で!」
チェンは野人を倒す用の棒を2本持たされている。
**
船に乗り鎮遠に到着。
ホワ登場。
ホワはチェンの父だろうか。
ホワ「おれの今の暮らしを知らないだろ。おれは子供たちの送り迎えをしている。おれは子供が好きだ。
おれは心臓病だ。お前の昔流した血が俺を病気にした。」
チェンはウェイウェイをホワに預けたままにするっぽい。
下校する幼いウェイウェイを遠くから見るチェン。
未来ウェイウェイからもらった双眼鏡で幼いウェイウェイを見る。
老女医の元恋人は亡くなっていた。
列車で帰るチェン。
車窓には時計が写っている。
針は逆時計回りに進んでいる。

おわり

そうか、ラストの社葬の時計は未来ウェイウェイが描いてくれたものか。
そのおかげでチェンは元の時間に戻ることができたわけね。



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