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【ラノベ】サクラダリセット

2010-04-26 | ライトノベル
サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫) サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2009-05-30

『能力者が集う街、咲良田。記憶を保持する能力をもつ少年・浅井ケイと、「リセット」――世界を三日分、元に戻す能力を持つ少女・春埼美空は、「猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのだが……。』

 以上、HPから抜粋。

 以下感想。

 普通かなー。10段階でいうと7.5くらいなので、どちらかというと面白い寄りでしたけど。具体的には、あとがきに「初の長編小説」とか書かれているのを見て、「コレ続くの? うーん、続くのかあ……続き読みたいかなあ……?」と悩む感じ。
 構成に関してはレベル高いです。ただ、これは完全に僕個人の趣味になるんですけど、あまりにも"作者の見えざる手"が見えすぎている感じがして しまいました。ラノベに限らずフィクションの作品にこんな文句を言うのは筋違いなのかもしれませんけど、様々な特殊能力を持つ者がいる、という設定の物語において、あまりにもストーリー上のトリックとして使うのに都合の良い能力が集まりすぎているというか。
 主人公の持つ「記憶保持」とヒロインの持つ「時間を三日分リセット」を合わせて使うというのは、この作品のキモになっている部分なのですんなり納得できるんですが。話の導入になっている猫絡みの「猫と意識を共有できる」と、話の結末に繋がる「モノを消す能力」も納得できるんですが。
 主人公の友人の持つ、「未来に声を届ける能力」ってのがどーにもこうにも、ねえ。
 なんかもう、主人公とヒロインと、あとこの友人の能力があれば、どんなトリックにも対応できそうだよなーと、読み終わったあとに思ってしまったんですよね。ソレは少し万能すぎてツマラナイなあ、とも。ちと相乗効果がありすぎるというか、互いの能力の制限に対して有効すぎるというか。ぶっちゃけると、「この話を作りたいがために創設した能力」であるかのように感じてしまう。や、極論を言えば他も全部そうなんですけど、能力の表現の仕方などがコレに関しては特に露骨で浮いてたってのもありました、はい。
 とはいえ、"作者の見えざる手"が見えすぎていると感じたってのは何もマイナス面だけがあるわけではなく、全体の構成がよく練られていたということでもあります。P156における伏線が少し強引かなとも思いましたが、その他はすごく自然に問題の発生から解決までが書かれていました。一冊の中でひとつの話をまとめるだけではなく、次巻以降にも引っ張るであろう過去の出来事をバランスよく散りばめていましたし、そういう意味で、初の長編とは思えないほど完成度が高い作品だったと思います。
 キャラに関しては、個人的な好みをいうと、ツボるキャラクターがいなかったので、ラノベとしてはすげー微妙なんですけど! このへんは椎名優氏のイラストに助けられてる部分もあると思うんですが、僕、この人の絵はあまり萌えを感じないんだよな!(えー
 つうか、こういうのって続き物の弱点ですよね。一巻で全てを明かすわけにはいかないから、どうしてもメインヒロインの描写が上っ面だけになりがち。昨今のキャラクターって、ただでさえ記号化が進んでいるのに、「続き物である」「全てを明かせない」という枷があるせいで、なーんか余計に空っぽに見えてしまう。
 このへんは、物語の構成のほうに力を割いた結果でもあるのかなーとも思うんですけど、僕はラノベでも何でも「どれだけいいキャラを、どれだけ生き生きと動かしているか」って部分が良い悪いの基準になってしまうオタクなので、『サクラダリセット』はちと微妙でした。
 うーん、キャラクター同士のやり取りで笑えないと、やっぱ淡々と進んでいくだけになってしまうよなあ。物語そのものに起伏をつけるか、キャラのやり取りで起伏をつけるか、この作者さんは(この作品では) 前者を選択したってことなんでしょう、きっと。


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