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バイオ燃料はLCA評価が大事

2007-02-13 | バイオマス
バイオ燃料はカーボンニュートラルなので化石燃料の代替として使用すると、CO2排出量が実質的に削減されます。原則的にはそのとおりですが、何事も現実的にはそうはいかないもので、バイオ燃料の利用がかえってCO2排出を増加させているといいます。

ヨーロッパではバイオ燃料の利用がすすめられていて、中でもオランダは国から補助金を出してバイオ燃料の使用量を倍増させています。EUでは2010年に輸送用燃料の5.75%をバイオ燃料に置き換えることを目標にしています。

ヨーロッパでバイオ燃料といえばバイオディーゼル(BDF)のことで、これはガソリン車よりもディーゼル車が普及しているからです。反対に北米でバイオ燃料といえばガソリン代替のエタノールです。

このBDFの原料となるパーム油はインドネシアやマレーシアで大量に栽培され、ヨーロッパに輸入されています。ところで、パームを栽培しているインドネシアやマレーシアでは、その生産量を増やすためにパーム畑を増加させています。マレーシアは85年から2000年にかけて87%増加させ、インドネシアは実に118%もパーム畑を増加させています。

これらの国ではパーム畑を増やすために熱帯雨林を伐採したり、ピート土壌を開墾したりしています。ピーと土壌は水分の多い泥炭質ですが、これはスポンジのようなもので大量のCO2を吸収しています。このピート土壌から水を抜くと吸収されていたCO2が大気に放出されます。さらに整地のため泥炭を焼き払うので燃焼によるCO2が上乗せされます。

パームの生育を早めるために大量の化学肥料が使用されることとあわせて、バイオ燃料使用によるCO2削減効果よりも、パーム畑を作るために排出されるCO2の方がはるかに多いという皮肉な調査結果です。

バイオ燃料の利用においては植物の選択とその栽培方法が重要で、それによりCO2削減が90%になるケースから、逆に20%増加するケースまであるといいます。
そういうことですから、いわゆるLCA評価を充分にしないといけません。

ドイツの調査ではインドネシアのピート土壌からの水抜きにより、年間660ミリオンドンのCO2が大気に放出され、さらに焼畑により1.5ビリオントンのCO2が発生しているといいます。合計でなんと2.1ビリオントンです。

日本のCO2排出量はおよそ1.3ビリオントンですから、日本全体のCO2排出量よりもインドネシアのパーム畑を造るために排出されているCO2量のほうが多いことになります。この様な事情があってインドネシアは、米国、中国についで世界第3位のCO2排出国というありがたくないランキングに入っています。

パーム油の価格が安すぎるのでこの様な環境破壊を伴う栽培が行なわれている。だからパーム油の買い取り価格を高くすることで、持続可能な栽培が行なわれると、環境団体は主張しています。

これはおかしな論法です。パーム油の価格が上昇すれば焼畑による開墾がなくなるのでしょうか。もしパーム畑の価格が上昇して現在のパーム油生産量で充分な収益が得られるようになり、その結果として開墾が止まれば、パーム油の生産量も頭打ちになります。それではバイオ燃料の利用も増えていかないわけで、持続可能な栽培とは一体何をさしているのでしょう。
やっぱり、しっかりとLCA評価をしてCO2削減という側面からパーム油BDFがフィージブルかどうかを検討していくことが一番大事です。

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