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原油のEOR回収法

2007-01-10 | 石油
温暖化ガスの抑制と原油の生産性向上の両方に寄与する方法として、CO2圧入による原油のEOR回収法があります。もともと地中にあった石油、石炭を燃焼させることにより発生するCO2を再び地中に戻すことは、それほど無謀なことでもないと考えられます。

これが経済性をもって普及するようになれば、化石燃料を使っても大気中のCO2濃度は増加することはありません。さらに原油生産量の減少している油井にCO2を圧入することで原油生産量が増大するのであれば一石二鳥ともいえます。

ところでこのCO2圧入によるEOR回収法によりどれくらい原油は余分に回収できるのでしょうか。O&GJのコラムに参考になる記事があります。

West TexasのWasson fieldは1935年に発見された油田で、確認埋蔵量は4 billion bblとのことです。1946年に生産量50,000BDのピークを打った後、生産量は減少したので1964年から水圧入法に切り替えて1972年から80年までは150,000BDの生産量を維持していました。その後、生産量が減少したので84年からCO2圧入を開始し生産量の減少は緩和されて35,000から40,000BDになり、現在でも29,000BDの生産量を維持しているそうです。

この記事では水攻法により生産が増大したことは分かりますが、CO2圧入によりどれくらい余分に原油が生産されているのかが分かりません。そこで、大雑把に年代別の原油生産量を推定計算してみました。

1935年:確認埋蔵量 4Billion bbl
1935年から1946年:ゼロから50,000BDに単調に増加、生産量90.8x10^6bbl
1946年から1964年:50,000BDからゼロに単調に減少、生産量148.5x10^6bbl
この間の累積生産量は確認埋蔵量の3.5%

1964年:水攻法開始
1964年から1972年:ゼロから150,000BDに単調に増加、生産量198x10^6bbl
1972年から1980年:150,000BDで一定、生産量396x10^6bbl
1980年から1984年:150,000BDから40,000BDに単調に減少、生産量125x10^6bbl
この期間の合計生産量は確認埋蔵量の18%

1984年:CO2圧入開始
1984年から2005年:40,000BDから29,000BDに単調に減少、生産量239x10^6bbl
この期間の生産量は確認埋蔵量の6%に相当

一般に確認埋蔵量の2割くらい生産したところで油田の生産量は低下するといわれています。この油井の場合、水攻法を使って21.5%の累積生産量になった時点で生産量が急激に低下しています。1984年以降、CO2圧入により生産量の増加こそ見られませんが、生産量の減少は明らかに抑えられていて20年以上生産を続けています。確認埋蔵量の6%というCO2圧入による累積生産量、水攻法の最大生産量の4分の1程度の生産量が多いのか少ないのかは、議論のあるところかもしれません。現在までの累積生産量は確認埋蔵量の27.5%です。換言すればまだ3分の2の
原油は油井に残っていることになります。

この推算は全くの素人がやったものですから、的外れかもしれません。しかし、CO2圧入法はこれから技術的にも発展していくものですから、温暖化ガスの削減と原油の生産維持は期待できそうです。

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