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原油高が石油会社にプレッシャー

2006-07-18 | 石油
石油会社といえば日本ではENEOSなどのガソリン販売・精製を思い浮かべますが、世界でOil companyといえば原油を生産している会社のことです。日本のENEOSももちろん原油を生産してはいますが、むしろ帝国石油や石油資源開発という社名を上げたほうが分かりやすいでしょう。原油価格が上昇して石油会社は売り上げが直接伸びるのですが、このことが大きなプレッシャーとなっているそうです。

それは、消費者から見ると原油が値上がりし、ガソリンが値上がりし、石油会社は莫大な利益を得ているのに、もっと原油生産を増やしてガソリンの供給量を増やして、価格を下げるようにすべきという考えです。

しかし石油会社にも数々の言い訳があるようです。
(1)油田の開発は長期投資
鉱区の採掘権を取り、油層を探し当て、原油を生産するには長い時間がかかります。ここ1,2年原油が高いからといって、その価格を当てにして開発に着手すると原油価格が急落し原油が余った時のリスクが大きすぎるというものです。石油会社は過去何回もこのoil glutを経験していて、学習しているというわけです。

DOEの2006年長期原油価格見通しでは、昨年見通しより大幅に上昇しているといっても2010年で45ドル、2020年で46ドルです。足元の価格水準に比べて随分と低くなっています。最もピークオイル説を主張する人は、こんなもんでは済まされんと反論するでしょう。しかし、私企業が行なっている以上、過大なリスクを抱え込むことは出来ません。

(2)国営石油の台頭と鉱区の奪い合い
近年では石油会社を国営にするところが増えました。ガスプロム(ロシア)、ペメックス(メキシコ)、ペドベサ(ベネズエラ)、ペトロナス(マレーシア)、ペトロブラス(ブラジル)などです。これら国営企業はひどい時には契約を一方的に破棄し、開発コストの低い鉱区を占有し、外国メジャーには開発コストの高いあるいはリスクの大きい鉱区を割り当てるという状況になっています。

(3)過去の利益と開発投資
2004年以降、石油会社の収益は向上していますが、2000年から2003年にかけては収益が減少していく中にあって、収益以上の開発投資をしてきたという事実があります。例えば、2002年は利益30Billion$以下ですが、開発投資は60Billion$を超えています。つまり、以前から利益を確保せず原油開発には当然取り組んでおり、これからも同様ですということでしょう。

(4)業界の構造
エクソンモービル、BP、シェル、トタール、シェブロン、コノコフィリップスなどのメジャーは100Billion$を超える資産(油田)を持ってはいますが、これらメジャーの合計は全合計の半分以下です。半分以上はいわゆるIndependentと呼ばれる中小の石油会社であり、彼らはその規模ゆえ短期の開発行動しかとりません。メジャーだけで石油供給を担っているわけではありません。

(5)油田開発に必要な要人と機材
油田開発には専用の機材と技術者が必要です。しかし95年以降の原油価格低迷により2003年まで石油会社は従業員を減らしてきました。直ぐに油田開発を拡大しようにも技術者がいません。さらに2004年以降は人件費が10%以上も上昇し、機材の価格は5倍です。機材はリースされるのが普通ですが、機材が足りないという状況です。

というように油田開発を大幅拡大して原油生産を増やせという世論に、直ぐに対応できるわけではなく、これが大きなプレッシャーになっているということです。
油田開発投資をめぐるこの辺の状況は、ピークオイル説を勢い付ける一つの要因とも言えるでしょう。

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