化学系エンジニアの独り言

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パイプラインの価格

2006-11-20 | ガス
天然ガスの輸送手段にはパイプラインとLNG船(少量ならばコンテナーやタンクローリー)があります。パイプラインは輸送効率が高いものの、初期投資が大きくまた投資リスクも大きくなります。

サハリンIIプロジェクトは石油ならびに天然ガスの生産設備、陸上処理プラント、原油とLNGの輸出ターミナル、全長800kmの石油並びに天然ガスパイプラインを含みますが、当初予算の$10 billionから$20 billionに上方修正されています。加えて環境影響評価の観点から、ロシア政府より工事の中止命令を受けてストップした状態です。

ところでパイプラインの価格は一体どれくらいなのでしょうか?費用の構成要素は材料費、建設費それにRights-of-way(ROW)です。ROWは用地買収や環境保全あるいは設置地域の特異性などに関わるコストです。それぞれのコストを積み上げてPP建設費を算出するためには多くのデータを必要とします。それらのデータを集めるには時間と労力、場合によってはお金がかかることになりますし、必ずしもデータが揃うとは限りません。

テキサス大学のCEE(Centre for Energy Economics)が過去のPP建設費の実績からPP建設推定費用を計算する方法を提案しています。その方法とはPPの単価($ million/mile)は配管外径と大まかに相関があるというものです。直径30インチから55インチの天然ガスパイプライン単価をHigh、Mean、Lowの3種に層別するというものです。例えば30インチであれば、2、3、4.2 million $/mile、50インチならば2.5、4.5、5.5 million $/mileとなります。

アラスカのプルードベイからアルバータを経由してシカゴまでのトランスアラスカガスパイプラインの価格は$18.4 billionと推定されています。この予想価格はアラスカ州財務局が2006年5月に公表した推定額です。プルードベイ(B)からアルバータ(A)とアルバータ(A)からシカゴ(C)までの二つの区間に分けて考えると、B-A間は52インチ径で5.6 million $/mileの単価なので$12 billion、A-C間はMeanコストの4.1 million $/mileで$6.2 billionとなり合計で$18.2 billionと計算できます。

B-A間は気象条件が厳しく高級な材料を使う必要があること、工事が夏の期間だけしかできないなどの理由からHighケースとなり、A-C間には既設のPPもあることから困難さはそれほど大きくないと予想されるのでMeanケースを適用しています。

しかしPPの建設には予期できない要素も多く、予算オーバーあるいは上方修正を余儀なくされる場合が多々あります。例えばBPが運営しているバクーPPは予算$2 billionのところ$3 billionかかりました。先にあげたサハリンIIも同様に予算オーバーの例です。

大規模PPの建設では技術課題以外のリスク要因を充分に見込んでおかなければならない、あるいはリスクが高まった時の対応をあらかじめ準備しておく必要があります。

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