化学系エンジニアの独り言

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砕氷LNGタンカー

2006-10-26 | ガス
サハリンの天然ガス開発に関しては、サハリン1プロジェクトの日本向けLNGが中国に横取りされそうだとか、サハリン2プロジェクトに自然破壊を起こすとの理由でロシア政府から中断の横槍が入ったりと、現時点では散々な状況です。

ロシアの天然ガス開発ではサハリンもさることながら、シベリアの鉱区が今後とも最も注目されると予想されます。天然ガスを需要地まで輸送するためにはパイプラインやLNGタンカーが使用されます。パイプラインは初期投資が大きい、需要先との長期・大量契約で需要先・流通が硬直化するなどの弱点があります。これに比べてLNG輸送は少量輸送できる、需要先の変更も可能なことからフレキシブルな輸送手段といえます。

しかし冬のシベリアの海は氷に閉ざされてしまいますから、氷海を航行できるLNG船、航路の確保が必要です。

氷海には単年氷と多年氷があるそうです。単年氷は夏には融けてなくなるもので、厚さは0.3から2.0m、多年氷は2年以上にわたって存在するものでその厚さは3mにも及ぶそうです。この様な分厚い氷を砕いて航行する船の建造は、造船会社にとっても新たな挑戦となりますが、シベリアLNG開発にとってはキー技術となります。

サハリン2プロジェクトでは砕氷仕様までは行かないまでも、厳冬仕様のLNG船を採用しています。デッキや通路のさまざまな箇所のヒーティング、結氷を解凍するためのスチーム配管、バラスとタンクのヒーティング、船員のための特別仕様衣料や防寒具、低温グレードの潤滑油などです。また流氷中を航行できるようにエンジン出力を増強し、それに見合うスクリューシステムを採用しています。

氷に閉ざされたシベリアの海を航行するにはさらに強力な仕様が必要です。現在は三つの方法が考えられています。一つ目は二隻の砕氷船を使って航路を確保する方法、二つ目は斜め向きに進行して1隻で広い航路を作ることのできる特別な砕氷船です。

そして三つ目がダブルアクションLNG船と呼ばれるものです。これは砕氷能力も併せ持つLNGタンカーです。船首の構造は通常のLNGタンカーと同じですが、船尾は砕氷ができる特別構造になっています。通常の海を進むには前方向に行けばよく、氷海を進むときには後ろ向きに進みます。そのため船首にもスクリューを備えています。

エンジン出力は増強されており、繰り返されるショックに耐えうる強力なギアボックス、高トルクと低速回転を生むためのディーゼル発電で駆動するスクリューシステムなども装備しています。

既に石油タンカーでは実用化されているそうですが、LNGタンカーでは今だないようです。今後のエネルギー需要の増加に後押しされて、このダブルアクションLNGタンカーが実用化される日も近いものと予想されます。

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