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彷徨者のネット小説レビュー

ネット小説サイト「Arcadia」や「ハーメルン」をメインに、あちこちで見かけたネット小説をレビューするブログです。

ようこそ

 このブログの管理人、彷徨人です。名前の通り、あちこちのサイトをさ迷っています。ネット小説に限れば『Arcadia』と『小説家になろう』がメインになります。
 初めての人は、まずこちらを一読下さい。→はじめに
 これまでレビューした作品のリストです。→五十音順リスト

雪風と風の旅人

2011-12-24 18:00:00 | ゼロの使い魔

原作名:ゼロの使い魔
作者:サイ・ミナカタ
最終更新日:2011年12月18日 2012年11月24日
評価:A
サイト:にじファン Arcadia
    http://ncode.syosetu.com/n4286r/">http://ncode.syosetu.com/n4286r/
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=zero&all=33886&n

[あらすじ]
 トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀。
 『雪風』のタバサは絶望していた。召喚された異国風の衣装をまとった黒髪の少年に。
 太公望は混乱していた。突然目の前に現れた鏡に吸い込まれ、流れ着いた異郷の地に。
 しかしそれは老練な太公望。周囲を観察し分析し、責任者であろう頭髪の寂しい中年男に語りかける。後にオスマンも巻き込み丁丁発止。見事に自分の要求を押し通す。
 『封神演義』の太公望が、『雪風』のタバサの使い魔となり、ハルケギニアを掻き回していく物語。

[文章]
 三人称。全体的に読者を引き込む上手な描写。書き上げて即アップではなく、時間をかけて丁寧に推敲を重ねているのが伺える。少々説明のくどい感じがするが、必要に応じて情報を小出しにしているので、設定だけで読者が沈没させられる事はない。

[総評]
 『封神演義』とのクロス物。登場する宝貝や人物については、その都度本文中で説明しているので、意味が分からずに困惑させられる事は少ない。それよりも、独自解釈や独自設定、原作イベントの順番の組み換えなどがあるので、抵抗のある人は要注意。
 これらに抵抗のない人、ないし克服できた人には、十分楽しめる仕上がり。
 見た目は若くとも、そこは観察眼と指導力に優れた老獪な元軍師の太公望。理想の食っちゃ寝のだらだら生活を目指し、人脈を築いたり暗躍したり。
 勿論、主要キャラの魔改造一歩手前までの強化も忘れてはいけない。コルベールが意外にも光っている。頭ではない意味で。原作でも途中から重要人物の一人に進化するが、この作品では早いうちに重要度が増加。太公望の右腕的なポジションに。ワルドやエレオノール、カトレアも意外な方向に化け、ヴァリエール公爵は物語の核心に食い込む変貌ぶり。
 だけど一番影響を受けたのは、何と言っても太公望を召喚したタバサ。徐々に明らかになる太公望の軌跡と、自分が歩んでいる道の酷似ぶりに動揺し、葛藤し、成長していく。
 しかしのほほんとしていられないのが太公望の運命か、ゼロ魔の宿命か。
 天王君はイザベラと組んで彼女を強化。ジョゼフはジョゼフで、何やら剣呑な使い魔を従えている雰囲気。カステモールらシャルル派も何やらきな臭い。
 舞台はアルビオンのニューカッスル城。王党派対貴族派の戦力差は三百対五万。この戦力差をどうひっくり返すか。太公望の智謀に期待。


Fate/stay night ~IF・緩い聖杯戦争~

2011-12-23 18:00:00 | Fate/stay night

原作名:Fate/stay night
作者:熊雑草
最終更新日:完結済
評価:B
サイト:Arcadia
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=7779&n

[あらすじ]
 土蔵でいつもの訓練をしていたところへ、突然浮かび上がった魔法陣と、そこから現れる青いドレス鎧の金髪少女。
 「問おう。あなたが私のマスターか?」
 「いいえ、違います」
 二人の出会いは噛み合わない会話から。士郎を魔術師と疑わないセイバーと、魔術なんて聞いた事もないと突っぱねる士郎。
 しかし契約なしでセイバーが現界できる時間には制限があり。半ば無理矢理に士郎と契約し、落ち着いてから話し合い。判明した事実。士郎は魔術師ではなかった!
 正義の味方を目指さず、へっぽこ魔術師ですらない衛宮士郎が、なぜかセイバーを召喚し、第五次聖杯戦争に巻き込まれる話。

[文章]
 三人称。会話文の多い印象だが、情景も比較的描写されている。士郎のパターン解析の説明など、説明描写になると理解し辛くなるのが難。
 士郎がボケれば凛かセイバーが殴る。このパターンには読んでいて不快感が出てきた。

[総評]
 衛宮士郎が魔術師でなく、正義の味方も目指していないif物語。タイトル通り緩いギャグ。相手を殴るツッコミが多いので、苦手な人は注意。
 性格改変があるのを除けば、オリキャラはなし。マスターとサーヴァントの組み合わせも原作通り。
 しかしこの士郎、魔術のまの字も知らない代わり、色々と無駄な才能があるらしく。ゲームにありがちなイベントから敵マスターを嵌める作戦を立案したり、ライダーの仕掛けた結界の呪刻を配置のパターンから予測したり。意外に英霊エミヤよりもお役立ち?
 そんな士郎に複雑な心境なのは、共闘する凛やセイバー達。普段の言動がちゃらんぽらんなのに、まともな事を言う時はまとも。ふざけた行動が良い方に転じる時も。ただし引き締まった空気を叩き壊すのも士郎本人。シリアスが続かない。
 何とも締りのない緩さで聖杯戦争は続き、蟲じじいや破戒神父、慢心王を除けば多分誰も不幸にならずに終戦。タイトル通りの緩さ。終盤は丸く収めるため、力ずくで押し通した感があるが、こういう終わらせ方もありだろうと納得はできる。
 一読してみるのもありの緩い聖杯戦争。


長谷川千雨の過負荷(マイナス)な日々

2011-12-20 18:00:00 | 魔法先生ネギま!

原作名:魔法先生ネギま!
作者:蛇遣い座
最終更新日:2011年12月19日 完結済
評価:C
サイト:にじファン Arcadia
    http://ncode.syosetu.com/n1485y/
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=32532&n

[あらすじ]
 長谷川千雨、小学六年生。二年生の時に麻帆良に転校し、以来、苛めに遭ってきた彼女にとり、両親とて縋る事のできない敵だった。
 そしてその日も苛められた帰り道、偶然知り合った少年・球磨川禊。
 彼との会話の最中、千雨の頭の中で何かのピースがカチリとはまる。過負荷の目覚め。
 それから2年。千雨のいる2-Aに赴任する新任教師、ネギ・スプリングフィールド。
 魔法と過負荷の危険な化学反応が起きる……かも?

[文章]
 プロローグだけ三人称、その後は千雨視点の一人称。別人の視点からの語りがないので、ネギサイドでの出来事が不明なのが難点。その説明を、最後に1、2行添えている程度。
 読める文章。会話文ばかりが続く事もなく、説明ばかりと言うのでもない。誤字脱字は少なめ。ただし改行後の一字下げと、『?』や『!』の後の一字空けがないので、少々読みにくい。

[総評]
 ネギまと『めだかボックス』のコラボ物。ただし、めだかキャラは名前と行動が伝わってくるだけで、実際の登場はない模様。
 今作での千雨は、球磨川に憧れる『過負荷(マイナス)』持ち。一度目にした相手の隠したい秘密を読み取る能力。その能力を活かし、既に数校の中学を廃校に追い込み済。また、人の恋路は応援すると、女生徒を襲うエヴァには自分の血を差し出し、刹那が木乃香を救出できるようネギには関与させずと、実に過負荷らしい思考と行動。
 他の原作キャラも多少改変されていて気持ち悪い。千雨の鼻骨を折る怪我をさせた明日菜は、謝罪をした様子も反省の色もなく、いつも通りに振る舞うバカレッド。タカミチは、明日菜の凶行を覗き見し、明日菜に縋りつく千雨を奇襲、自分は急いでいるから歩いて保健室へ行けと、深夜の路上に放り出すクズっぷり。近右衛門に到っては、それら一連の事件を裏の出来事として隠蔽。三人はお咎めなしの無罪放免。あれ、原作と変わらないか?
 教師生徒諸共でクズのかの学園と、麻帆良学園の魔法使いとは相性が良いようで、悪い方向での違和感は少なく感じた。
 周囲に迷惑と混乱をばら撒くネギと、それらを増長させる千雨、そして全てを傍観・隠蔽する近右衛門。物語はヘルマン襲来のようで、果たして混乱はどこまで広がるのか。次話が楽しみ。


あんこたっぷり千雨ちゃん

2011-12-19 18:32:00 | 魔法先生ネギま!

原作名:魔法先生ネギま!
作者:ちゃくらさん
最終更新日:2011年11月30日 2012年4月8日
評価:C
サイト:にじファン Arcadia
    http://ncode.syosetu.com/n9244v/
    http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=32676&n

[あらすじ]
 しのつく雨の夜。飲酒運転のトラックに跳ねられ、おそらくは瀕死の重傷を負ったのだろう長谷川千雨、小学3年生。
 死にたくない一念で、動かない身体を動かそうとする事しばらく。
 頭の中に浮かんでくる様々な光景。これまでの自分の人生とは異なる別の人生。そして手の中に現れる二つのアクセサリー。ソウルジェムとグリーフシード。
 気が付けば、なぜか異世界の魔法少女・佐倉杏子の記憶と人格が混じっていた。
 退院後、まずは身体を鍛えようと叩いた近所の道場。顔に6本の傷のある男、伊達。なぜか飛燕、雷電、月光、卍丸等々という猛者も。
 鍛錬する事3年。そしてついに喊烈武道大会2年連続優勝、拳聖の称号と共に『長谷川流魔体術』創始者に。
 「これってネギまだよな?」と首を傾げるテンションで、千雨が暴走する物語。

[文章]
 三人称。情景描写、心理描写、会話のやり取りなどのバランスは良い方。ただし「」の後に行動の一文を入れ、すぐに次の会話文となる時があり、読んでいてもやもやする。
 二転三転する戦闘シーンには冗長気味な印象を受けた。そこは読む人の好みで。

[総評]
 千雨魔改造物。『まどかマギカ』の佐倉杏子が次元の壁を越え千雨に憑依? ソウルジェムとグリーフシード付き。千雨のテンションが高めなので注意。
 ダーク調なシリアス物になるかと思いきや、かなり濃いギャグ。ネタ元が分かる人なら始終笑っていられる。千雨本人は一応シリアスを貫いているつもり。しかし言動がボンバーマン。あっちで爆発、こっちで暴発、そっちで誤爆、どっかで誘爆、頻繁に自爆、たまに不発。
 千雨の破天荒ぶりは、根幹が杏子なのもあるのだろうけど、師匠が男塾の面々ではさりもあらんと納得。師匠が師匠なだけに、魔法を使わなくても千雨の戦闘力は高く。古韮、龍宮、長瀬、桜咲と並び、5人で麻帆良四天王と称される程……いや、頭数合わないだろ。
 元々ツッコミどころ満載のネギまに、さらにツッコミネタをぶち込み、斜め315°に煮しめたような、不条理系一歩半手前のシュール系。
 神様転生チート自己中オリ主のネギアンチに疲れ気味の胃に、一風変わった刺激がほしい時の一作。


Thousandrain The Horn-Freak

2011-12-18 18:00:00 | 魔法先生ネギま!

原作名:魔法先生ネギま!
作者:u.n.smith
最終更新日:2011年12月12日 完結済
評価:C
サイト:にじファン シルフェニア
    http://ncode.syosetu.com/n6680u/
    http://www.silufenia.com/toukou/Uns/UnsSS01.php

[あらすじ]
 長谷川千雨には、変わった記憶があった。砂の惑星。わずかな水を求め、人々は争い殺し合う世界。そんな世界で暗殺者として生き、死んだ男。それが自分。
 それが何の因果か、世間一般からすれば非常識でも平穏な麻帆良で、女子中学生をしている。時々怪しげな会話をしているクラスメートもいるが、関わり合いにならずに済むなら、平和な生活も悪くない。
 その平穏をぶち壊したのが、桜通りの吸血鬼。夜闇に隠れ潜むエヴァと茶々丸に剣呑な気配を感じ取り……。
 ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークの知識と経験を持つ千雨が、麻帆良で暴れまくる話。

[文章]
 三人称。戦闘シーンが冗長すぎると感じるが、この作品のコンセプトからすると正しいのか。その分、日常や会話シーンがおざなりな感じ。誰の言動なのか分かりにくい箇所がたまにあり、読むテンポが崩れてしまうのが残念。

[総評]
 千雨魔改造物。『トライガン・マキシマム』のミッドバレイ・ザ・ホーンフリークが、記憶と能力を持って千雨に転生。絶対音感と呼ぶのも生易しい音感と、数キロメートル先の針の落ちる音すら聞きつける聴力、前世で培ってきた問答無用情け容赦なしの戦闘能力。愛用の武器は、勿論、改造サクソフォン。
 ネギま世界でありながら、お気楽ほのぼの世界ではなく、トライガン世界の血で血を洗う殺伐とした雰囲気が良い。手出し無用の警告を無視した刹那は、当てられた殺気がトラウマに。茶々丸は死の恐怖と敗北感から闘争心に目覚め。甘っちょろい理想だけを夢見るネギと明日菜を置き去りに、エヴァと千雨の衝突で麻帆良に廃墟が現出する。
 修学旅行で木乃香を狙うは、国際的テロリストとして名高い天ヶ崎千草。目的のためなら手段を選ばず、築くは常に瓦礫と死体の山。自分の身を守るためにはクライアントも血祭りに上げる。そんな危険人物。月詠も原作以上の壊れ具合。
 原作通り通常運転な近右衛門は、危機管理能力の欠落した無能者。千草が雇われたのを知っても、修学旅行先の京都を固持。いや、千雨と共食いさせて共倒れを狙っているのか。
 ネギと明日菜だけなら初日で死ぬな、うん。
 波乱と呼ぶには生易しい激闘は、修学旅行初日で早くも血の海に。
 京都は無事では済むまい。そんな予感を抱きつつ、次回を待つ。