玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

9月12日の観察会

2021-09-12 15:50:12 | シンポジウム

9月12日は桜橋から小金井橋までを歩く予定でした。
桜橋のすぐ脇を西武多摩湖線が走っているので、そこから下流を歩くことにしましたが、挨拶をした場所にミズキの果実があったので、早速説明をはじめました。
 「ミズキの黒い果実は鳥やタヌキなどの糞からよく出てきます。ちょど鳥が一飲みできる大きさで、黒い色はヒトの目にはあまり目立ちませんが、鳥によく見える波長が違って黒もよく見えるそうです。それに果実が熟す頃になると果柄が赤くなるのでよく目立つようになります」

ミズキの果実

 そのすぐ脇に私の気に入りの場所があるので、しばらくそこで説明しました。そこは玉川上水の樹林と道路の間の幅5メートルくらいの空き地で、時々草刈りされる場所です。まず手前の柵にあるつる植物の説明をしました。あったのはヘクソカズラ、アオツヅラフジ、エビヅル、アカネ、センニンソウ、ノブドウ、ヤブカラシなど玉川上水でお馴染みのものでした。

アオツヅラフジの果実

「つる植物はずるいといえばずるい生き方をしています。普通の植物は自立するためにがっちりした茎を作らないといけません。しかしつる植物は他の植物や柵などを利用してするすると上に伸びるので茎に少し投資するだけです。つまり「支え」と光がポイントになります。その意味でつる植物にとって林縁が理想的な場所で、玉川上水はそれを満たしています」

説明をする高槻

オニドコロ の雄花が咲いていたので
「皆さんもそうかもしれませんが、私は老眼になって小さいものがよく見えません。だからデジカメで撮って拡大する方がよくわかることがあって、このオニドコロ の花、こんなです」
と言ったら歓声が上がりました。
「花弁が6枚でしょ、長めのが3枚、短めのが3枚で、それが重なって今津。ユリの花なんかもそうで手前のが花弁、おくのがガクです。基本数が3ですから、雌の方の子房も3つに分かれています」

オニドコロ の雄花

「雌花というより、果実がありますね。ほら3つに分かれています。花の作りは雌蕊があった。下に子房があってここにタネができます。その上が花柱、その先が柱頭です。ほら、この果実、先端に柱頭が残っています」
「ほんとだ」
と話が膨らみます。りーさんが
「基本数が3っていうことですが、他の数もあるんですか?」
「ヤマノイモの仲間やユリ科は3ですね。サクラのようなバラ科は5です。アブラナ科は十字花というように4です」
「へえ」
という具合です。


ボードを使って説明する。

 その場所は1年に何度か刈り取りされるので、明るく、草原の植物が生えています。ツルボは盛りを過ぎたところでしたが、ピンクの花が上の方には残っていました。

ツルボ

「刈り取りをすると上に木がなくなり、直射日光が当たるようになります。そういうところは草原の草本に有利です。ツルボはその代表で、ミツバツチグリなどもあります」
「でもその奥は春に刈り取りをしたけど、その後は放置されたみたいで、ツルボなどは少なくて、ススキ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、シラヤマギクなど高さ1メートルを超えるような大型の草本が多くなっています。ガマズミ、ミズキ、クサギなどもあります。こういう植物は、暗い林は困るが、かといって何度も刈り取りをされるのも困るのです。」

ガマズミの果実

クサギの果実

そしてその奥にはコナラなどの樹林があり、縁にはカラスウリなどのつる植物が生えていました。
「だから、ここをみると、柵のつる、強い刈り取りのツルボ・ゾーン、弱い刈り取りのススキ・ゾーン、樹林帯が実験したように見られます。」

桜橋東の草地の群落配置

「ついでにいえば、草原の中にコナラの小さい木がありますが、これは伐採後に萌芽として再生したもので、これができる木とできない木があります。コナラはそれができる木の代表で、だからこそかつて炭を作っていた時代に薪炭林として繰り返し伐採して持続的に利用されてきたわけです」
 というわけで、そこだけで30分以上経ってしまいました。皆さん、興味ありげで会話が盛り上がりました。

 そこから喜平橋の方向に歩き始めました。
「このツルボを見てください。もしツルボが口を聞いて、ここに<吹き出し>があったら<あー、苦しい助けてくれー>と言っているはずです。周りにつる植物が覆ってきて息も絶え絶えです。<これはツルボだ>と名前を確認するだけでなく、その植物がどう生きているかをみることが大事です」
 途中でキンミズヒキ、ミズヒキ、オカトラノオの果実、テイカカズラの果実、ビナンカズラの花と果実、ルリタテハの幼虫などがあり、説明をしました。

テイカカズラの果実

 木々が歩道に迫っているような場所になると急に暗くなり、生えている植物もミズヒキ、ハエドクソウ、ヒメカンスゲなどに限られるようになります。
「林の下と直射日光があるかないかで下に生える植物が大きく違うのがよくわかります。私は東京都があまりにもひどい伐採をするので、それを阻止する運動をしていますが、伐採が一切良くないというつもりはなく、小規模の伐採や間引きはむしろ草原の植物を増やして全体として多様性を増すのでいいことだと思っています。やめて欲しいのは皆伐なんです」

「さっきヒサカキがありました。ここにはアセビがあります。こういう常緑低木が入ってくるには少し時間が必要で、暗いところでも生きるのに適した繊維段階が進んだ段階にふさわしい植物が出てきます。そこにあるシラカシもそうです。ヒサカキなどは高さがせいぜい5メートルにしかなりませんが、シラカシは20メートルにもなります。つまり林冠を形成する樹種です。井の頭にはこれがたくさんあります。そこでは野鳥の種類数も個体数も豊富です。ただ玉川上水全体ではそういう林はあまり期待できません。雑木林程度で十分だと思います。今日は草原から初めて、樹種の成長と林の遷移について考えられたのでよかったです。」

 喜平橋に近づいたところで、この区画の花ごよみを担当してくれている桜井さんがおられました。今日がその調査日だというのは聞いていたのですが、こんなに遅くなると思っていなかったので、現地で会えるかもしれないと思っていました。桜井さんは「加藤さんたちは今小金井橋のあたりにいるんだけど、観察会のグループがどの辺まで来ているか見に来たんですよ」ということだった。「すみません、こんなにゆっくりと思っていなくて、小金井橋まではとても無理です、加藤さんによろしく言ってください」と伝えた。

 目的とした小金井橋には遠く及びませんでしたが、距離を歩くことが目的というわけではなく、野草を観察するという意味では良い時間を過ごせたと思いました。
 復路は玉川上水の南側を歩き、カリガネソウなどを見ました。

カリガネソウ

 その後はスタスタ歩いたので、あっという間に西武線まで戻りました。皆さん「あれ?たったこれだけだったの?!」とびっくりしていました。線路のところで解散としました。

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