玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

観察会

2024-10-01 03:31:48 | 観察会
観察会のご案内 
2024年10月の観察会 
第2日曜日の13日(日)に行います。
秋の小金井の野草を見ます。10時に小金井橋に集合してください。

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2024年9月の観察会

2024-09-29 21:04:37 | 観察会
先週に予定していましたが、雨のために29日にしました。玉川上水駅から上流を歩くことにしました。夏の花は終わり、秋の花はこれからという感じでした。


 この辺りでは柵が高くて花に近づいてみることはできません。鷹の台あたりとは違い、所々に明るい場所があうとり、ツリガネニンジンなどがあり、花は終わっていましたが、ツルボなどもたくさんあるようでした。

ツリガネニンジン

 クヌギの樹液があるところにルリタテハが来ていました。「普通はキタテハやアカタテハなどがよくいて、ルリタテハは少ないのに、玉川上水ではルリタテハが一番多いですよね。サルトリイバラが食草です」
 これはすばしこくて撮影できませんでしたが、すぐ近くにはアカボシゴマダラがいました。

アカボシゴマダラ

 千手橋まで行くと40分ほど経っていたので、Uターンすることにしました。橋の近くにあるエノキは大樹調査でベストテンに入る大きい木です。


千手橋


エノキの大樹

「あ。赤くなった実がある」
とって口に含むと甘い味がしました。
「私も」
「あ、あまーい」
「父親が言ってたけど、昔は子供のおやつにお金を使うということはなくて、子供はエノキやムクノキの実はおやつがわりに食べたそうです」
「へー」

南側(右岸)を戻りましたが、ここは歩道が広く、南側に樹林があり、シラヤマギクやノコンギクなどがよくあり、なかなかいい場所でした。

ノコンギク

「私は仙台が長いのですが、向こうのノコンギクは名前の通り、紫いろですが、玉川上水のものはほぼ白で、違う感じがします」
「ユウガギクとどう違うの?」
「ユウガギクは下の枝が長く、上の枝が短く、花が平面的になります」
「へえ」

メドハギがあり、なかなか花がなかったのでいた。すが、しばらく行ったら花のついたものがありました。

メドハギ

「葉っぱは3枚に分かれています」
「ああ、ほんと。小さいのがたくさんあると思ってた」

「ヒガンバナとヤマユリでは全く印象が違いますが、よく見てみましょう。花1つを取り上げると、6枚の花びらからできています。前の3枚が本当の花びらで奥の3枚はガクです。そしてとても長いおすべと雌蕊が伸びています。その花がアンテナのように1箇所から放射状に出ています。花びらが細長く、しべが長いので、印象が違いますが、基本構造はヤマユリと同じです。そういう意味では同じユリ科のツルボも同じで、やはり6枚の花びらで、茎にびっしりつきます。カタクリももちろん同じです。」

ヒガンバナ

小さいシソ科の花が咲いており、後で調べたらイヌコウジュでした。

イヌコウジュ

以下に撮影した植物を紹介します。写真は撮りませんでしたが、イネ科としてはチカラシバ、メリケンカルカヤ、ススキ、ノガリヤス、アブラススキ、ネズミノオなどがありました。来月はもう少し秋の花が増えているはずです。

サンショウ果実


ダンドボロギク果実

エビヅル、果実

コナラ、ドングリ

ゴンズイ果実

ヤマユリ果実

イヌタデ

カラムシ

シラヤマギク

ツユクサ


千手橋

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6月の観察会

2024-06-09 14:48:16 | 観察会
6月9日に観察会をしましたが、いつもと違い、今進めている群落調査を見てもらうことにしました。その背景などは、以下の資料に書きました。

+++++++++ 資料 ++++++++++++
2024.6.9
「328号線」予定地の群落調査(経過報告)

高槻成紀
(玉川上水みどりといきもの会議代表)

 玉川上水の小平部分は樹林幅が35 mほどもあり、玉川上水全体でも植物や鳥類が豊富であるが、ここに「小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線」(以下、小平328号線)が計画されている。この種の開発が行われる場合、しばしば開発後の動植物の状態は開発前のデータがないために、その影響が評価できないことが多い。その意味で、現状の記録をしておくことが望ましいと考え、群落調査を始めた。

方法
 328号線予定地を含む久右衛門橋から東鷹の橋間の林床植物を、歩道沿いの柵の内側において幅2m、長さはおよそ4 m(場所により多少の違いあり)のプロットをとって以下の項目を調べた。プロット内で「面積-種数曲線」をとった。プロット内で出現植物の被度(%)と高さ(cm)を測定し、そこからバイオマス指数を算出した。このようなプロットを10 m間隔にとった。現在左岸(北側)の200 mまでの40プロットまで終了した。

結果
 ここには武蔵野の雑木林を代表するコナラ、クヌギ、イヌシデを主体とする林があり、林床にはマユミ、ウグイスカグラ、ムラサキシキブ、マルバウツギ、イヌツゲなどの低木、スイカズラ、ヒメンカンスゲなどが高頻度に出現し、キンラン、シュンランなどの希少な草本類も生育する。
 面積種数曲線は図1のようになり、面積が増えるほど増加率が頭打ちになった。実際のプロット調査は20m^2のほぼ78%をカバーしていることになる。


図1. 面積-種数曲線

これをもとに調査ごとの出現種数を累積すると、図2のようになり、現在はほぼ頭打ちになり、88種が記録されている。


図2. 調査プロット数の増加に伴う出現種数

バイオマス指数は全ての種についてあるが、ここでは合計値だけを示す(図3)。これによると、久右衛門橋近くでは道路からの光が当たるため、スイカズラ、ウグイスカグラ、シラカシなどが繁茂し、バイオマス指数が大きいが、西側になると樹冠が多いために林床植物が減少することがわかる。これに伴い出現種数の内容も変化した。


図3. バイオマス指数の推移(久右衛門橋から西へ)

まとめ
 今後、右岸(南側)でも同様の調査を行う予定であり、100種前後が記録されると想定される。これにより現状が記録され、その価値が理解されるとともに、今後道路が付けられた場合、いかに大きな影響を受けたかが明示できることになる。

++++++++++++++++++++++++++++++++

 うさぎ橋の近くに集まったので、その説明をした後、下見で見つけたネジバナを見に行きました。
「右巻きってどういうことだと思いますか?」
「時計回りが右巻き」
「そうですね、進行方向に向かって時計回りに巻くのが右巻きです」
「これは左巻きですね。私が調べたところ、右巻きもありました」
「へえー」

ネジバナ(右巻き)

ふと、上にあるものを見ると右巻きでした。

ネジバナを見る

 それから調査する場所に移動しました。今日は武蔵野美術大学の中野君が参加しました。彼は樹木に興味があって、卒業作品として木を描きたいということでした。それで、主な樹木の名前を紹介しました。


調査の内容などを説明する

 途中でツルウメモドキの枝に白い汚れのようなものがついていて、触るとピンと跳ねました。私はこれをアワフキムシだと思いましたが、豊口さんによるとハゴロモの1種(多分アオバハゴロモ)だということでした。



ハゴロモの1種

「さっき説明したように、道路予定地を含む久右衛門橋から東鷹野橋の間の植物を記録しています。柵の軸がちょうど2メートル間隔なので、番号をつけて5つごとに調べています。今日は125番から調べます」
「2つのことを記録します。一つは調査面積を増やすと出現する植物がどう増えていくかを示すことで、面積種数曲線と言います。もう一つはその植物の多い、少ないを表現するために、被度と高さを記録します。被度というのは植物が覆う面積のことです」
「実際に被度というのがどういうことかというと・・・」
と言って持ってきたホワイトボードに正方形を書いて、その上に砕けた枯葉を適当量載せました。
「これは大体40%です」
「私はこれを頭の中で片隅に集めます」と言ってその枯葉を正方形の一角に集めました。そうしたら実際はもう少し少なくと30%ほどでした。
「4分の1で25%ですから、それより少し多いので30%ほどですね。私は間違えましたが、大体そういうことです。これを80%としたり、10%としたりはしません。私が表現したいことはこの場所に沿って植物が多い少ないがどう推移するかということで、細かな違いは問題にしていません。植物生態学を学ぶ者は学生時代にこれをビー玉や紙切れで訓練するんです」

「さて、では調べますが、誰か記録係をしてくれますか?」
 みなさん、調査というと特別なことだと思うらしくもじもじしています。それでこういうことが得意そうな澤口さんにお願いしました。折尺を取り出して
「これがあれば調査はできます。今はいいものになりましたが、私が初めて頃は木のものでしたのでよく折れました。学生に渡すと必ず折りますね。1メートルのものが普通ですが、2メートルのものは値段が2倍ではなく4倍くらいします。需要がないんですね。これが折り曲げると直角になるのでとても便利です」
「まずここを原点と見做してここの10cm四方に何があるかを見て、あれば記録、なければ面積を10 cm x25 cmに増やします。それから倍、倍と面積を増やしていきます」
「植物は小さいものも出てきますから、花がなくても名前がわからないといけないんですね」
この場所では2m x 2mで11種、2m x3mあまりで15種が出現しました。それをグラフにすると下のようになりました。横軸は面積(m^2)縦軸は種数です。


 調査プロットは幅2 mで柵から上水の縁までの斜面の範囲とします。それぞれの種名を言ってもらい、私が被度と高さをコールし、記録してもらいました。

説明する

 一つが終わると隣接する126番プロットで被度と高さを記録しました。途中で水口さんたちのグループの人も合流しました。これを130番と131番、135番と136番でおこないました。記録係は中野くんと関口さんが引き受けてくれました。

 この場所はスイカズラ、ヘクソカズラ、アオツヅラフジ、ビナンカズラ、テイカカズラ、ヤマノイモなどつる植物が多いので、その話題になりました。
「つる植物が順調に伸びるには明るいことと、支えがあることが条件になります。その点、この場所は歩道があって明るいと同時に柵があって絡まることができてつる植物に都合がいいんです。スイカズラは絡まるものがない時は地面を這っています。つる植物にはそうするものとしないものがあります」
「ヤマノイモの花は可愛いですよね」と関口さん。私は
「いや、それはかなり特殊で、普通の人はカラフルで大きい花を可愛いというんですよ」
「いや可愛いですよ」(笑)と澤口さん。

 木を描くという武蔵美の中野君がいたので、主な樹木の葉について少し説明しました。イヌシデ、コナラ、ケヤキのように葉脈が平行なものを並べて鋸歯の違いを説明しました。


それからサクラ類、エノキなど葉脈が網目状になるもの、ネズミモチのように全縁なものなども説明しました。
「全縁というのはね、マットウなフチということ、つまりギザギザや波打ったりというような人生の荒波のようなことがなく真っ直ぐに生きているというイメージの「全」です」(笑)

 3カ所が終わってお昼前になったので、記念撮影をして、観察会を終わることにしました。



 こういう調査を見てもらうことは、観察会としてはどうかなという思いはありました。間違いなく退屈だし、花が咲いているものはほとんどないし、楽しい解説をすることはあまりありません。
 ただ、今私自身が大切だと思っている道路予定地の群落を記載しておくことが、実際にどうしておこなわれるかを知ってもらうことには一定の意味があるだろうと思いました。多くの人は結果を見ても、それがどうして調べられたかは知りません。それでもいいのですが、それがこうした地道な作業を通じて得られたものだということを知ってもらうことには意味があると思います。
 この調査によってこの狭い範囲だけで、100種ほどの野生植物が生育していることがわかり、ここが間違いなく豊かな生物多様性がある場所であることが具体的にわかったことを知ってもらうことは意味があると思います。

 このことは、観察会とはいかなるものかということに関係すると思います。通常は一種のサービスで、植物の名前やその特徴などを解説するのが観察会とされます。今回のものはそれとはかなり違い、参加者にそういう意味でプラスになることはあまりなかったかもしれません。
 私は生態学を学んだものとして自然保護に役立ちたいと思いますが、その基本姿勢は動植物を調べ、データで語るということにしています。そうであれば、少なくも私の観察会に、こういうものがあるのはいいのではないかと思います。というより、ただ鳥や植物の名前がわかるようになることが自然を知ることだと思わせるような観察会は底が浅いと思います。J. Baileyは、自然を知ることを、初めは昆虫の名前や花の名前を知ることで始めるものだが、真に理解する人は自然の仕組みを知るようになると言っています。またRachel Carsonは、自然を知ることに飽きることはないと言いました。しかし、実際には飽きてしまう人はいます。それは仕方のないことです。その人にとっては多少名前がわかればよかったのだと思います。主催者に観察会について考えがあり、そういう会に来るも来ないも参加者の自由です。そういうものだと思います。

 終わってから中野君と話す機会があり、作品を見せてもらいましたが、木をテーマにして童話を描きたいと思っているようで、さすがに美大の学生らしくいい絵を描いていました。

* 翌日に中野君からエゴノキの果実のスケッチが届きました。さすがです。



写真は豊口さんによるものです。ありがとうございます。
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5月の観察会の記録

2024-05-12 21:40:23 | 観察会
5月12日の観察会では請願院橋から上流に向かい、千手橋で折り返すルートにしました。
 なんと言ってもエゴノキが花盛りで、至る所で真っ白な花が溢れるように咲いていました。またニガナも多く、全体としては明るい場所に生える植物が多いと感じました。トボシガラ、イヌムギ、ナガハグサ、カモジグサなどイネ科がよく咲いており、場所によってはヒゲナガスズメノチャヒキもありました。
「日本で芝生といえばシバのことを言いますが、あれは暖かい地方のもので、欧米で芝生 lawnといえばこのナガハグサで、英名はケンタッキーブルーグラスです。ジョン・デンバーの「思い出のグリーングラス」というフォークソングがありますが、あれは囚人が懐かしい我が家の芝生を歌う歌で、あれはこのブルーグラスのことです」
「長くないですか?」
「芝刈りするんです」
「これは夏の暑さに弱いんで、日本ではうまく育ちません。ただし北海道の芝生はこれです」

++++++++++++++++++++++
私はシカと植物の関係を調べていて、いくつか学術論文も書いています。

高槻成紀.1999.シカが育てるシバ草原.「種子散布,助けあいの進化論,2」上田恵介(編著);65-85.築地書館

Ito, T. Y. and S. Takatsuki. 2005. Relationship between a high density of sika deer and productivity of the short-grass (Zoysia japonica) community: a case study on Kinkazan Island, northern Japan. 高密度のニホンジカとシバ群落との関係−北日本の金華山島での事例. Ecological Research, 20: 573-579. こちら

Ito, T. Y. , M. Shimoda, and S. Takatsuki. 2009. Productivity and foraging efficiency of the short-grass (Zoysia japonica) community for sika deer. ニホンジカに取ってのシバ群落の生産性と採食効率 Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 145-157. Springer, Tokyo.

Takatsuki, S. 2021. Long-term changes in food habits of deer and habitat vegetation: 25-year monitoring on a small island. シカの食性とその生息地の長期継続研究−小島における25年間のモニタリング Ecological Research, 37: 92-101. こちら

高槻成紀, 2022. ススキとシバの摘葉に対する反応−シカ生息地の群落変化の説明のために. 植生学会誌, 39: 85-91. こちら

また、「たくさんのふしぎ」(2015)の中にもシバのことを書きました。こちら



++++++++++++++++++++++
ガマズミの良い株があり、白い花が咲いていました。近づくと、ハナムグリの仲間やハナカミキリ、ハチなどがきていました。



 イネ科つながりで、アシボソとチジミザサの説明をしているところで、見かけない小さな花がありました。見ると間違いなくVeronicaです。Veronicaというのはオオイヌノフグリの仲間の属名で、聖書に出てくる聖女の名前です。フラサバソウかもしれないと思って手持ちの図鑑を見ましたが、フラサバソウはガクに長い毛が生えているので、この花とは違いました。

  

花の大きさや色からイヌフグリだろうと思ったのですが、果実を見るとイヌフグリは球状であるのに対して、これは扁平で違うことがわかりました。タチイヌノフグリとも明らかに違います。というわけでVeronicaの仲間の不名種としておくことにしました。ごく小さい花なのでこれに気づく人はいないと思います。

ここまでが12日の記録ですが、12日に小金井の大石さんから「コテングクワガタではないか」と連絡がありました。聞いたこともない名前でしたが、調べてみると花も、果実も、はもぴったりでした。



記述は以下の通りです。

コテングクワガタ Veronica serpyllifolia subsp. Serpyllifolia
ヨーロッパの低山地の原産で、南北アメリカ、中国大陸、ニュージーランド、日本などに帰化している。日本では、北海道、本州で帰化が確認され、やや湿った道ばたや芝生で見られる。

これでスッキリしました。大石さん、ありがとうございました。外来種なんですね。知らないことばかりだと改めて思うと同時にVeronicaであることは当たっていたので、少し溜飲を下げました。私は和名のイヌノフグリに引きづられて、それに該当するものだけ比較して、クワガタソウはチェックしませんでした。

 長峰さんが「先生!」というので行ってみると、「エビヅルですよね。こんなにからまって」と。確かに絡まるというより締め付けるという感じでした。「クズやヘクソカズラは茎が支持体にからむので、斜め前に進んでいきますが、これは茎は別で直線的に進み、枝は横に出してしっかりからまればいいわけですよね」

エビヅル

 今は植物が伸びる時なので、サルトリイバラやヘクソカズラ、センニンソウなどがからまりながら伸びていました。サルトリイバラは高さ40cmくらいになってこれ以上伸びると倒れそうな感じで先端の「枝」が先をくるりと巻いて「何かからまるものないかなあ」と言わんばかりでした。

澤口さんが「この網状の柵ならつるがからめますが、下流にできたあの黒い太い柵だと植物がからめないみたいですね」
「見た目も良くないし、植物にとっても良くないんだ」


 風が強い日でした。たまには違うところを歩くのもいいもので、大した話もできませんでしたが、みなさん熱心にノートを取っておられました。


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4月の観察会

2024-04-14 20:18:36 | 観察会
10時に小金井橋に集まりました。爽やかなよい天気でした。今日は小金井の桜並木を見て、皆伐のことを考えることと、草原的な植物を観察することにしました。

 さっそくカモガヤがあったので、説明しました。カモガヤは牧草として導入され、今では道路沿いなどに広く分布しています。カモガヤという名前は花序が半円形で、カモの足みたいだからということで名付けられました。

カモガヤ

キツネガヤ

高槻

そしてイネ科の花の基本構造と花序のことを説明しました。すぐ近くにキツネガヤがあったので違いを比較しました。
関口さんが
「私は花をきれいと思ったことがなかったのですが、ススキを見た時に初めてきれいだと思ったんです」
「それは珍しいですよ。普通はいわゆるきれいな花を好きになって、かなりわかった頃にイネ科とかカヤツリグサ科とか、地味なものに目を開くということが多いんですが、でもシダが好きとか、コケが好きとかいますからね」(笑)
 前後しますが、イネ科としてはオニウシノケグサ、ヤマカモジグサ、スズメノカラビラ、チガヤの説明をしまし
た。

オニウシノケグサ

スズメノカタビラ

ヤマカモジグサ

カモガヤは葉の色が白と水色が混じったような緑で、キツネガヤは鮮やかな緑でツヤがあることを話しました。ヤマカモジグサは明らかに黄味の強い緑で、微毛が生えているので、葉だけでもわかります。

「私はスケッチが好きで植物を描きますが、緑色というのは同じものがないので、緑については色鉛筆を何種類も持っていますが、それでもその植物の感じを出すためにしろや黄色や水色を重ねて塗ります」

スズメノカタビラでは花は小さいものの花序の作りはカモガヤと似ていること、葉が次第には細くならないで、同じ太さで先端まで伸びて、そこで急に丸くなること、それに葉の付け根の方がよく波打つようになることを説明しました。

スズメノカタビラ

その前に私がノミノツヅリを間違えてノミノフスマと言いました。その時に「フスマってベッドのことですかね」と言いましたが、これも間違っていて、フスマ(衾)とは布団のことだそうです。ちなみにツヅリの方は布切れをつなぎ合わせた簡素な服だそうで、パッチワークのことのようです。

ノミノツヅリ

その流れで言うと、市川さんによると、カタビラはひとえの着物のことだそうです。漢字では「帷子」と書くようですが、後で調べたら「夏のきものといえば、単衣(ひとえ)と帷子(たびらこ)。いずれも、裏地を付けない単仕立ての衣料で、初夏と初秋に着用する絹地を単衣、盛夏に着用する麻地を帷子と称します」と書いてありました。

そういえば、昔、「赤い鳥」というグループの「竹田の子守唄」という歌がはやりましたが、その歌詞に
「盆が来たとて何うれしかろ、かたびらはなし、帯はなし」
というのがありました。(ついでに言うと私が好きな小田和正は、その時のコンテストで「赤い鳥」に負けたことが悔しかったと言っています)

小さい植物にスズメノ・・とかノミノ・・と言うものがあり、ちょっと想像するのも楽しいものです。そういえば、今日観察したものにも、カラスノエンドウ、カラスビシャクがありました。

カラスエンドウがあったところで長峰さんが
「カラスエンドウはつる植物って言うけど、結構自分で立っていますよね」
「はい、つる植物と言ってもその程度はさまざまで、カラスノエンドウの場合は、寄りかかり植物という感じですね。ある程度、自立はし、近くに支えるものがあればそれを使うという感じですね」

カラスノエンドウ

カラスビシャク

イネ科といえば、チガヤも咲き始めていて、歩道沿いに並んで生えていました。

チガヤ

「舐めると少し甘みがあるようです。私は経験がないのですが、父が子供の頃、子供のおやつのためにお金を使うなどということはなかったので、木の実もよく食べたし、チガヤの穂を舐めたと話していました」
というと長峰さんは
「私は高槻先生の親の世代ではないけど、チューインガムにして遊んだわよ」

 歩道沿いに、アカネがありました。スペード型の葉が4枚つくこと、茎が四角柱であること、根からオレンジ色の色素がとれ、近くにある茜屋橋は、江戸時代にこの辺りに染物屋があったので名付けられたという話をしました。

アカネ

道路よりにヘラオオバコがたくさん花をつけていました。

ヘラオオバコ

またアジサイの株にアケビが絡まって花を咲かせていました。同じ株に雄花と雌花があるので、「雌雄同株の雌雄異花」です。

アケビ雄花

アケビ雌花

「アケビって、開け実(み)ということです。寒いをサブイ、寂しいをサビシイなどと言うように「b」と「m」はよく混合されるというか、どちらでも通じるというか、唇を合わせて発音するからそうなります」

加藤さんとムベの話をしました。ムベはアケビの仲間で、暖かい地方の植物です。翌日の15日に、通っている東大の本郷キャンパスで咲いていて、偶然に驚きました。花の趣はかなり違います。


ムベ 24.4.15 東大本郷キャンパス

ワラビが伸びて葉が開こうとしていたので、

ワラビ

「万葉の、早蕨の萌え出る、春になりにけるかも」って美智子様が一番好きな歌なんですって」
「美智子様って、上皇后様?」
「そうそう、・・・で、前の方はなんだっけ・・・思い出せない」
笹川さんがスマホで調べてくださって
「石ばしる垂水の上の・・・です」
「そうそう、
石ばしる 垂水の上の早蕨の萌えいづる、春になりにけるかも
ああスッキリした」

その時、心の中では私が一番好きな次の歌が浮かんでいました。
もののふの 八十娘子らが汲みまがふ 寺井の上の堅香子の花

「美智子様のご成婚のとき、私は小学3年生で、世の中にこんなきれいな人がいるんだと感激しました。あの頃は長嶋茂雄が巨人に入ったり、社会が盛り上がってましたよね」
と言っても、頷くのは長峰さんくらい。

ゆっくり歩いて陣屋橋につきました。そこから玉川上水を見ると、皆伐の酷さが改めてよく見えました。



陣屋橋から下流を見る


「植物がなくなると表土が流れます。水道局は法面が崩れることを気にします。確かに壁面の肩の部分に木があって、風で倒れたら土を持っていきます。でもそういう木は限られているし、その場合でも木があるほうが土どめになるというのが林業と砂防学の常識です。木があれば雨を葉で受け止め、雨が地面を打つのを防ぐし、根が土どめをします。ここは数年前に皆伐されてひどいことになって、小金井の人もショックを受けたのですが、その後、ひこ生えが萌芽して雨を防いでいたのに、今年が桜並木100周年記念だからでしょう、また切られてしまいました。新市長には期待してたんですがね」

皮肉なことに、橋の袂に看板があって「自然を大切に守る」と書いてありました。
「サクラはきれいな花で、ここが桜並木の名所であることが悪いとは言いませんが、ここが桜の名所であった時代の写真を見ると、五日市街道に車は走っておらず、人々がのんびり歩いて花見をしています。その状態を戻して花見をするというのなら、街道の自動車をなくすならわかりますが、今ここで花見をする人はおらず、皆小金井公園で楽しんでいます。私はたまたま昨日、藤野の山を歩いたのですが、落葉樹林に咲くヤマザクラは実にきれいでした。ヤマザクラは他の木と一緒に林に生える木であって、こういうふうに孤立させるのは木にとってもかわいそうだと思います」

藤野(相模湖の近く)で見たヤマザクラ

「案内のボードには川崎平右衛門が桜を植えたと書いてありますが、加藤さん、本当ですか?」
「嘘ですね」と加藤さん。
「平右衛門は府中の人で、この地方の農業開発を担当し、玉川上水を農業に活用しました。その中で、桜は水を清めると信じられていたので桜を植え、夏に人が休むための木陰になるように桜を植えた、つまり農民のために桜を植えたようで、花見のためではありません。花見で知られるようになったのは平右衛門が死んだずっと後のことです」

 橋のたもとにニリンソウの群落がありました。その中にイチリンソウもありました。

ニリンソウ

「これはここに林があった名残で、直射日光が当たるようになったので、ノカンゾウが増えています。私の考えでは、やがて、ノカンゾウやススキが増えてニリンソウは消えてしまうと思います」
「伐採のいい面もあって、明るい場所に生える野草が増えたということはあります。ワレモコウ、ツリガネニンジン、アキカラマツなどがそうです。それはいいのですが、距離ですよね。伐採地がこれだけ広いと、林に住む鳥は東西の移動は難しいと思います」

ここから、南岸(右岸)を小金井橋のほうに戻りました。オオイヌノフグリ、ショカツサイ、タチイヌノフグリ、カタバミ、セイヨウタンポポ、カラスノエンドウ、ヤエムグラ、ノミノツヅリ、アメリカフウロなど、道端の雑草がありました。


ヤエムグラ

タチイヌノフグリ、オオイヌノフグリ

キュウリグサ

アメリカフウロ

クワ

その道すがら記念撮影したのですが、あろうことか私が接写モードのままセルフタイマーで撮影したために、ピンボケになっていました。大失敗でした、皆さんごめんなさい。

小金井橋に近づいたので、
「ところで出っ歯の人のことを山桜って言うって知ってました?」
「いいえ」
「そうですか。ソメイヨシノと違ってヤマザクラは<ハナ鼻よりハ歯が前に出ている>からです」
「ハナとは端にある、尖ったようなもので、植物なら茎の先にある花、人の顔なら鼻です。ハも端にあるもので、山の端と言いますね。植物なら枝の先にある葉、人の顔なら歯です」

ハナよりハが先のヤマザクラ

改めて小金井橋から玉川上水を見て、皆伐の無残さに唖然としました。

小金井橋から下流を見る

小平の方を見ると、木が鬱蒼と生えています。
「こっちは大丈夫ですが、サクラ派の人は拡大を希望しています。ただ小平市は桜の拡大はしないと表明していて、東京都は両方が賛成しない限り許可しない、とは言っています。だから大丈夫とは思いますが、油断はできません」

「今日はこの小金井桜と皆伐を見て、イネ科の勉強を少ししました」
と締めくくりました。少し汗ばむくらいの陽気になりました。

参加者は以下の通り。
市川さん、加藤さん、笹川さん、柴山さん、関口さん、豊口さん、長峰さん、丸山さん
写真の一部はいつものように豊口さんによるものです。ありがとうございます。

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