玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

5月の観察会の記録

2023-05-14 16:10:37 | 観察会
10時前に小金井橋に集合しました。 左岸を歩きはじめたら看板がありました。行幸の記念の松の解説が 小金井市教育委員会によって書かれていましたが実際の松は小金井橋の西側にあり、今は小平市に属しています。 その近くに海岸寺という寺があり、そこに碑文が残されています。そこには川崎平右衛門が農民のために桜を植えたという記述があります。 それは当時、桜は水を清める働きがあると信じられていたからで、平右衛門が農民のために貢献したとされています。このことに詳しい加藤さんによると、確かに桜が植えられたが、それが平右衛門によるものだという証拠はないとのことです。平右衛門は将軍が栗が好きだった事を知っていて、小金井に栗林を作り、将軍に献上し喜ばれたと言われています。そのように地元の農民のために働いたので、農民に敬愛されていたようで、そのことから 小金井の桜も平右衛門によるものであろうとされたようです。その後 小金井の桜が有名になり 江戸の市民が歩いてここまで来て、1泊2日、2泊3日ぐらいのコースで小金井を訪問したそうです。北斎のガイドマップも残されています。明治になって 鉄道がつき、小金井に駅ができると、たくさんの花見客が訪れ、売店の売上が一年の農業の売上よりも多くなったといった記録があるそうです。いずれにしても小金井の桜は有名となり、現在の小金井市も、それを名物として桜並木の保全を図っているわけです。
  参加した関口さんとリーさんがイネ科に関心があるようなので、このあたりに多い オニウシノケグサ、カモガヤ、アオカモジグサ、ヤマカモジグサなどについて説明しました。

イチゴツナギ


ネズミムギ

 イネ科については後で説明しましたが、いわゆる華やかな花とは違い、緑色だし、似たり寄ったりで、イネ科の花に魅力があるという人は多くありません。植物が好きな人でも、シダとイネ科は苦手だという人が多いようです。しかし、考えてみれば、アジアのコメ、欧米の麦というように、人の主食になっているのはイネ科の植物です。狩猟採取していた日本人は シカやイノシシの肉などは滅多に食べられず、トチノキの実やドングリを水でさらしてクッキーのようなものを食べてお腹をいっぱいにしていました。そのような 食の伝統の中で 同じでんぷんがこの小さなイネ科の花から得られるということを発見した天才がいたに違いありません。これによって、人の食生活に革命が起き、農業が起こりました。そして人口が急速に増えていったわけです。ですから、イネ科の花はぱっとしませんがイネ科は人の生活に関係がないどころか、人間はイネ科に大いに助けられていると言えます。
  この辺りは桜並木を目指して、ほかの木が皆伐されました。そして今は平坦面は草刈りをすることで草本類が多く、斜面はひこばえが生えて、ケヤキ、アカメガシワ、ヌルデ、ムクノキ、シラカシなどの木が生えています。平坦面にはワレモコウ、ツリガネニンジン、オカトラノオ、ホタルブクロ、アキカラマツなど草原の草本類が見られます。また、木本類にはスイカズラ、センニンソウ、ヤブカラシ、アオツヅラフジ、ヘクソカズラ、オニドコロなどつる植物が多く、これらによって玉川上水全体の多様性が高くなっている面があります。


スイカズラ

 アカネがあったので、4輪生のこと、葉がスペード状のこと、茎の断面が正方形であること、逆棘があることなどを説明しました。アカネという名前は根で布を茜色(オレンジ色)に染めたことにより、近くにも茜屋橋があります。昔の人はこれの根を大量に集めたり、ツユクサも同じように染料に使ったのですが、昔の人の野草との関係は今とは随分違っていたようです。

アカネの説明をする

  陣屋橋のたもとに 立て看板があり、そこに「史跡と自然を守るために」と書いてあるのですが、この場所は桜を残して皆伐したことを考えれば皮肉なことです。 

陣屋橋の説明を見る


陣屋橋から玉川上水を見る

加藤さんは持参した写真を見せてくれました 一枚は 2019年 12月に撮影したもので 立派なケヤキの林でした それが 皆伐され 太いケヤキが根本から切られ、その伐採あとが何本もありました その後、そこからひこばえがのびた写真もありました。


加藤さんの写真を説明する

私は2021年の3月に同じ伐採されたケヤキの跡を見て、ひどいことをするものだと憤りを感じ、保全活動をするようになりました。その後、錦城高校の映画部の生徒たちが小金井の桜をテーマにした映画を作り、東京都で表彰を受けたそうです。その映画を見せてもらいましたが、桜派の人が「ザツボク」と、吐き捨てるような言い方で、木が生えていることがゴミでもあるように邪魔であり行政の管理が行き届いてないと批判していました。私は加藤さんの写真を見て素晴らしいケヤキの林だと思いましたが、その人の目には邪魔なものだと映ったようです。

 太いサクラの木があったので周囲を測定しました。


サクラの木の太さを測定

 玉川上水の大木の測定を始めたのですが、これまで小平3小近くのサクラが最大で直径で112cmありました。

  新小金井橋まで行く頃に小雨がパラついてきました。そこで記念撮影をし、その後は急ぎ足で小金井橋に戻ることにしました。加藤さんは用事があって記念撮影に写らなかったのは残念でした。



  最後に 小金井橋の近くに戻り 加藤さんの写真にあった、伐採されたケヤキを見ました。 結局 小金井市は 江戸時代から続く桜並木を守るということで 樹木の皆伐をしました。 「こだま」の田頭さんから連絡があって、白井新小金井市長と会う日程調整をしてもらっていますが、白井市長は立候補している時、生物多様性を重んじると主張していたそうです。しかし市長になれば立場も変わり、これまで桜中心であった方針を急に手のひらがえに変えることも難しいと思います。 そうではありますが、かといって これまでどおり桜だけという方針を見直す方向に舵を切って欲しいと思っています 日本の伝統文化である桜並木を守ることは一定の意味があるとは思います。しかし、今小金井市民だけでなく東京都民にとって、玉川上水のもつ意味は大きく変化しています。私たちは、小平、小金井、 三鷹 、杉並の4カ所で 樹木調査と鳥類の調査を行ないました。そうしたら、西から都心に向けて自然が乏しくなるはずなのに、4カ所のうち、小金井は杉並よりも鳥類が少ないことが分かりました。しかもその内訳は、特に樹林に住む鳥はほとんどいなくなり、スズメやドバトなど、都市にもすめる鳥はむしろ少し多くなっており、全体としては鳥類の内訳が大きく変化したことが分かりました。つまり樹林のあり方はそこに住む鳥類をはじめとする動物たちに強い影響を及ぼすことが分かったのです。 そうしたことを含め 桜並木だけという方針を変えるべく市長を説得をしたいと思っています。
  そんな話で締めくくり何か質問ありませんかと聞いたところ、橋本さんから「カラスが桜の木にとまって枝を落としていたのですが」という発言があり、関口さんも「それを見たことがある。何か食べることが目的ではなく、ただストレス発散か、遊びのためにしているようだ」ということでした。私は見たことはありませんが、カラスが無意味と思えるような遊びをすることがあるのを知っていたので、そんな話をして解散としました。

写真の多くは豊口信行さんによるものです。ありがとうございました。
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