玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

5月の観察会の記録

2024-05-12 21:40:23 | 観察会
5月12日の観察会では請願院橋から上流に向かい、千手橋で折り返すルートにしました。
 なんと言ってもエゴノキが花盛りで、至る所で真っ白な花が溢れるように咲いていました。またニガナも多く、全体としては明るい場所に生える植物が多いと感じました。トボシガラ、イヌムギ、ナガハグサ、カモジグサなどイネ科がよく咲いており、場所によってはヒゲナガスズメノチャヒキもありました。
「日本で芝生といえばシバのことを言いますが、あれは暖かい地方のもので、欧米で芝生 lawnといえばこのナガハグサで、英名はケンタッキーブルーグラスです。ジョン・デンバーの「思い出のグリーングラス」というフォークソングがありますが、あれは囚人が懐かしい我が家の芝生を歌う歌で、あれはこのブルーグラスのことです」
「長くないですか?」
「芝刈りするんです」
「これは夏の暑さに弱いんで、日本ではうまく育ちません。ただし北海道の芝生はこれです」

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私はシカと植物の関係を調べていて、いくつか学術論文も書いています。

高槻成紀.1999.シカが育てるシバ草原.「種子散布,助けあいの進化論,2」上田恵介(編著);65-85.築地書館

Ito, T. Y. and S. Takatsuki. 2005. Relationship between a high density of sika deer and productivity of the short-grass (Zoysia japonica) community: a case study on Kinkazan Island, northern Japan. 高密度のニホンジカとシバ群落との関係−北日本の金華山島での事例. Ecological Research, 20: 573-579. こちら

Ito, T. Y. , M. Shimoda, and S. Takatsuki. 2009. Productivity and foraging efficiency of the short-grass (Zoysia japonica) community for sika deer. ニホンジカに取ってのシバ群落の生産性と採食効率 Sika Deer: Biology and Management of Native and Introduced Populations, (eds. D. R. McCullough, S. Takatsuki and K. Kaji): 145-157. Springer, Tokyo.

Takatsuki, S. 2021. Long-term changes in food habits of deer and habitat vegetation: 25-year monitoring on a small island. シカの食性とその生息地の長期継続研究−小島における25年間のモニタリング Ecological Research, 37: 92-101. こちら

高槻成紀, 2022. ススキとシバの摘葉に対する反応−シカ生息地の群落変化の説明のために. 植生学会誌, 39: 85-91. こちら

また、「たくさんのふしぎ」(2015)の中にもシバのことを書きました。こちら



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ガマズミの良い株があり、白い花が咲いていました。近づくと、ハナムグリの仲間やハナカミキリ、ハチなどがきていました。



 イネ科つながりで、アシボソとチジミザサの説明をしているところで、見かけない小さな花がありました。見ると間違いなくVeronicaです。Veronicaというのはオオイヌノフグリの仲間の属名で、聖書に出てくる聖女の名前です。フラサバソウかもしれないと思って手持ちの図鑑を見ましたが、フラサバソウはガクに長い毛が生えているので、この花とは違いました。

  

花の大きさや色からイヌフグリだろうと思ったのですが、果実を見るとイヌフグリは球状であるのに対して、これは扁平で違うことがわかりました。タチイヌノフグリとも明らかに違います。というわけでVeronicaの仲間の不名種としておくことにしました。ごく小さい花なのでこれに気づく人はいないと思います。

ここまでが12日の記録ですが、12日に小金井の大石さんから「コテングクワガタではないか」と連絡がありました。聞いたこともない名前でしたが、調べてみると花も、果実も、はもぴったりでした。



記述は以下の通りです。

コテングクワガタ Veronica serpyllifolia subsp. Serpyllifolia
ヨーロッパの低山地の原産で、南北アメリカ、中国大陸、ニュージーランド、日本などに帰化している。日本では、北海道、本州で帰化が確認され、やや湿った道ばたや芝生で見られる。

これでスッキリしました。大石さん、ありがとうございました。外来種なんですね。知らないことばかりだと改めて思うと同時にVeronicaであることは当たっていたので、少し溜飲を下げました。私は和名のイヌノフグリに引きづられて、それに該当するものだけ比較して、クワガタソウはチェックしませんでした。

 長峰さんが「先生!」というので行ってみると、「エビヅルですよね。こんなにからまって」と。確かに絡まるというより締め付けるという感じでした。「クズやヘクソカズラは茎が支持体にからむので、斜め前に進んでいきますが、これは茎は別で直線的に進み、枝は横に出してしっかりからまればいいわけですよね」

エビヅル

 今は植物が伸びる時なので、サルトリイバラやヘクソカズラ、センニンソウなどがからまりながら伸びていました。サルトリイバラは高さ40cmくらいになってこれ以上伸びると倒れそうな感じで先端の「枝」が先をくるりと巻いて「何かからまるものないかなあ」と言わんばかりでした。

澤口さんが「この網状の柵ならつるがからめますが、下流にできたあの黒い太い柵だと植物がからめないみたいですね」
「見た目も良くないし、植物にとっても良くないんだ」


 風が強い日でした。たまには違うところを歩くのもいいもので、大した話もできませんでしたが、みなさん熱心にノートを取っておられました。


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