玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

4月の観察会

2024-04-14 20:18:36 | 観察会
10時に小金井橋に集まりました。爽やかなよい天気でした。今日は小金井の桜並木を見て、皆伐のことを考えることと、草原的な植物を観察することにしました。

 さっそくカモガヤがあったので、説明しました。カモガヤは牧草として導入され、今では道路沿いなどに広く分布しています。カモガヤという名前は花序が半円形で、カモの足みたいだからということで名付けられました。

カモガヤ

キツネガヤ

高槻

そしてイネ科の花の基本構造と花序のことを説明しました。すぐ近くにキツネガヤがあったので違いを比較しました。
関口さんが
「私は花をきれいと思ったことがなかったのですが、ススキを見た時に初めてきれいだと思ったんです」
「それは珍しいですよ。普通はいわゆるきれいな花を好きになって、かなりわかった頃にイネ科とかカヤツリグサ科とか、地味なものに目を開くということが多いんですが、でもシダが好きとか、コケが好きとかいますからね」(笑)
 前後しますが、イネ科としてはオニウシノケグサ、ヤマカモジグサ、スズメノカラビラ、チガヤの説明をしまし
た。

オニウシノケグサ

スズメノカタビラ

ヤマカモジグサ

カモガヤは葉の色が白と水色が混じったような緑で、キツネガヤは鮮やかな緑でツヤがあることを話しました。ヤマカモジグサは明らかに黄味の強い緑で、微毛が生えているので、葉だけでもわかります。

「私はスケッチが好きで植物を描きますが、緑色というのは同じものがないので、緑については色鉛筆を何種類も持っていますが、それでもその植物の感じを出すためにしろや黄色や水色を重ねて塗ります」

スズメノカタビラでは花は小さいものの花序の作りはカモガヤと似ていること、葉が次第には細くならないで、同じ太さで先端まで伸びて、そこで急に丸くなること、それに葉の付け根の方がよく波打つようになることを説明しました。

スズメノカタビラ

その前に私がノミノツヅリを間違えてノミノフスマと言いました。その時に「フスマってベッドのことですかね」と言いましたが、これも間違っていて、フスマ(衾)とは布団のことだそうです。ちなみにツヅリの方は布切れをつなぎ合わせた簡素な服だそうで、パッチワークのことのようです。

ノミノツヅリ

その流れで言うと、市川さんによると、カタビラはひとえの着物のことだそうです。漢字では「帷子」と書くようですが、後で調べたら「夏のきものといえば、単衣(ひとえ)と帷子(たびらこ)。いずれも、裏地を付けない単仕立ての衣料で、初夏と初秋に着用する絹地を単衣、盛夏に着用する麻地を帷子と称します」と書いてありました。

そういえば、昔、「赤い鳥」というグループの「竹田の子守唄」という歌がはやりましたが、その歌詞に
「盆が来たとて何うれしかろ、かたびらはなし、帯はなし」
というのがありました。(ついでに言うと私が好きな小田和正は、その時のコンテストで「赤い鳥」に負けたことが悔しかったと言っています)

小さい植物にスズメノ・・とかノミノ・・と言うものがあり、ちょっと想像するのも楽しいものです。そういえば、今日観察したものにも、カラスノエンドウ、カラスビシャクがありました。

カラスエンドウがあったところで長峰さんが
「カラスエンドウはつる植物って言うけど、結構自分で立っていますよね」
「はい、つる植物と言ってもその程度はさまざまで、カラスノエンドウの場合は、寄りかかり植物という感じですね。ある程度、自立はし、近くに支えるものがあればそれを使うという感じですね」

カラスノエンドウ

カラスビシャク

イネ科といえば、チガヤも咲き始めていて、歩道沿いに並んで生えていました。

チガヤ

「舐めると少し甘みがあるようです。私は経験がないのですが、父が子供の頃、子供のおやつのためにお金を使うなどということはなかったので、木の実もよく食べたし、チガヤの穂を舐めたと話していました」
というと長峰さんは
「私は高槻先生の親の世代ではないけど、チューインガムにして遊んだわよ」

 歩道沿いに、アカネがありました。スペード型の葉が4枚つくこと、茎が四角柱であること、根からオレンジ色の色素がとれ、近くにある茜屋橋は、江戸時代にこの辺りに染物屋があったので名付けられたという話をしました。

アカネ

道路よりにヘラオオバコがたくさん花をつけていました。

ヘラオオバコ

またアジサイの株にアケビが絡まって花を咲かせていました。同じ株に雄花と雌花があるので、「雌雄同株の雌雄異花」です。

アケビ雄花

アケビ雌花

「アケビって、開け実(み)ということです。寒いをサブイ、寂しいをサビシイなどと言うように「b」と「m」はよく混合されるというか、どちらでも通じるというか、唇を合わせて発音するからそうなります」

加藤さんとムベの話をしました。ムベはアケビの仲間で、暖かい地方の植物です。翌日の15日に、通っている東大の本郷キャンパスで咲いていて、偶然に驚きました。花の趣はかなり違います。


ムベ 24.4.15 東大本郷キャンパス

ワラビが伸びて葉が開こうとしていたので、

ワラビ

「万葉の、早蕨の萌え出る、春になりにけるかも」って美智子様が一番好きな歌なんですって」
「美智子様って、上皇后様?」
「そうそう、・・・で、前の方はなんだっけ・・・思い出せない」
笹川さんがスマホで調べてくださって
「石ばしる垂水の上の・・・です」
「そうそう、
石ばしる 垂水の上の早蕨の萌えいづる、春になりにけるかも
ああスッキリした」

その時、心の中では私が一番好きな次の歌が浮かんでいました。
もののふの 八十娘子らが汲みまがふ 寺井の上の堅香子の花

「美智子様のご成婚のとき、私は小学3年生で、世の中にこんなきれいな人がいるんだと感激しました。あの頃は長嶋茂雄が巨人に入ったり、社会が盛り上がってましたよね」
と言っても、頷くのは長峰さんくらい。

ゆっくり歩いて陣屋橋につきました。そこから玉川上水を見ると、皆伐の酷さが改めてよく見えました。



陣屋橋から下流を見る


「植物がなくなると表土が流れます。水道局は法面が崩れることを気にします。確かに壁面の肩の部分に木があって、風で倒れたら土を持っていきます。でもそういう木は限られているし、その場合でも木があるほうが土どめになるというのが林業と砂防学の常識です。木があれば雨を葉で受け止め、雨が地面を打つのを防ぐし、根が土どめをします。ここは数年前に皆伐されてひどいことになって、小金井の人もショックを受けたのですが、その後、ひこ生えが萌芽して雨を防いでいたのに、今年が桜並木100周年記念だからでしょう、また切られてしまいました。新市長には期待してたんですがね」

皮肉なことに、橋の袂に看板があって「自然を大切に守る」と書いてありました。
「サクラはきれいな花で、ここが桜並木の名所であることが悪いとは言いませんが、ここが桜の名所であった時代の写真を見ると、五日市街道に車は走っておらず、人々がのんびり歩いて花見をしています。その状態を戻して花見をするというのなら、街道の自動車をなくすならわかりますが、今ここで花見をする人はおらず、皆小金井公園で楽しんでいます。私はたまたま昨日、藤野の山を歩いたのですが、落葉樹林に咲くヤマザクラは実にきれいでした。ヤマザクラは他の木と一緒に林に生える木であって、こういうふうに孤立させるのは木にとってもかわいそうだと思います」

藤野(相模湖の近く)で見たヤマザクラ

「案内のボードには川崎平右衛門が桜を植えたと書いてありますが、加藤さん、本当ですか?」
「嘘ですね」と加藤さん。
「平右衛門は府中の人で、この地方の農業開発を担当し、玉川上水を農業に活用しました。その中で、桜は水を清めると信じられていたので桜を植え、夏に人が休むための木陰になるように桜を植えた、つまり農民のために桜を植えたようで、花見のためではありません。花見で知られるようになったのは平右衛門が死んだずっと後のことです」

 橋のたもとにニリンソウの群落がありました。その中にイチリンソウもありました。

ニリンソウ

「これはここに林があった名残で、直射日光が当たるようになったので、ノカンゾウが増えています。私の考えでは、やがて、ノカンゾウやススキが増えてニリンソウは消えてしまうと思います」
「伐採のいい面もあって、明るい場所に生える野草が増えたということはあります。ワレモコウ、ツリガネニンジン、アキカラマツなどがそうです。それはいいのですが、距離ですよね。伐採地がこれだけ広いと、林に住む鳥は東西の移動は難しいと思います」

ここから、南岸(右岸)を小金井橋のほうに戻りました。オオイヌノフグリ、ショカツサイ、タチイヌノフグリ、カタバミ、セイヨウタンポポ、カラスノエンドウ、ヤエムグラ、ノミノツヅリ、アメリカフウロなど、道端の雑草がありました。


ヤエムグラ

タチイヌノフグリ、オオイヌノフグリ

キュウリグサ

アメリカフウロ

クワ

その道すがら記念撮影したのですが、あろうことか私が接写モードのままセルフタイマーで撮影したために、ピンボケになっていました。大失敗でした、皆さんごめんなさい。

小金井橋に近づいたので、
「ところで出っ歯の人のことを山桜って言うって知ってました?」
「いいえ」
「そうですか。ソメイヨシノと違ってヤマザクラは<ハナ鼻よりハ歯が前に出ている>からです」
「ハナとは端にある、尖ったようなもので、植物なら茎の先にある花、人の顔なら鼻です。ハも端にあるもので、山の端と言いますね。植物なら枝の先にある葉、人の顔なら歯です」

ハナよりハが先のヤマザクラ

改めて小金井橋から玉川上水を見て、皆伐の無残さに唖然としました。

小金井橋から下流を見る

小平の方を見ると、木が鬱蒼と生えています。
「こっちは大丈夫ですが、サクラ派の人は拡大を希望しています。ただ小平市は桜の拡大はしないと表明していて、東京都は両方が賛成しない限り許可しない、とは言っています。だから大丈夫とは思いますが、油断はできません」

「今日はこの小金井桜と皆伐を見て、イネ科の勉強を少ししました」
と締めくくりました。少し汗ばむくらいの陽気になりました。

参加者は以下の通り。
市川さん、加藤さん、笹川さん、柴山さん、関口さん、豊口さん、長峰さん、丸山さん
写真の一部はいつものように豊口さんによるものです。ありがとうございます。

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