歩かない旅人

 彼がなした馬鹿げたこと・・・彼がなさなかった馬鹿げたことが・・・人間の後悔を半分づつ引き受ける。ヴァレリー

EU離脱は世界をどこまで混乱させるか

2016-06-26 11:50:00 | 産経新聞の記事から抜粋

 

  

 イギリスのEU離脱から一夜明けた、25日の産経新聞は、経済問題を前面に出して、その危機感を煽っています。産業経済新聞が正式名称ですから、経済に重点を置く記事が出るのもやむをえません。

 編集委員の田村秀男氏が 【金融体制崩壊の号砲】と言う見出しで、この衝撃度はリーマンショックに匹敵すると、いやそれ以上だと危機感を表しています。その他の見出しも 

 英国民投票 離脱派が勝利 キャメロン首相辞意

【世界同時株安 通貨不安】、【円高株安 日本経済の足かせ】、【アベノミクスに暗雲】、【首相 大型補正編成へ G7連携、経済混乱回避】、【G7金融安定に協力】、【ドミノ懸念 EU重大局面】、【対露強硬派離脱で安保危機】

これらは見出しのほんの一部です。まず産経新聞の立場、姿勢を『主張』から、読み解いていきたいと思います。大騒ぎの割には今一つ、どの位の震度を持っているかまだ理解、認識していないのが正直なところです。

 

 ※※※※※※※※※※※※※※

【主張】 2016年6月25日付

英国のEU離脱 欧州統合の理念失うな 主要国は協調し混乱抑えよ

 人権や民主主義などの価値観を構築し、民族を背景とした国家間の紛争を回避する。「一つの欧州」を目指した欧州連合(EU)が持つ、大きな意味合いだったといえよう。

 英国の離脱がEUの力を削(そ)ぎ、その理念さえもぐらつかせるきっかけとなってはならない。

 Source: The Economist EC加盟国(2016)は28ヶ国

 欧州の弱体化は、ロシアや中国など軍事力を誇示して国際ルールを無視する勢力と、法の支配という普遍的価値観を共有する日米欧とのバランスも崩しかねない。

 離脱は残念な結果だが、今はそれに伴うさまざまな事象が多方面に及ぼす負の影響を、いかに最小限にとどめるかである。

 ≪「不確実性」が高まった≫

 日本をはじめ主要国などが緊密な協調体制を打ち出すことが急務である。

 とりわけ喫緊の課題は、金融市場の混乱を食い止める手立てだ。減速傾向を強める世界経済の不確実性が、英国の離脱により一段と高まったことを懸念する。

 離脱が確実になると、ユーロや英ポンドが急落し、円相場は一時1ドル=99円の円高水準となった。東京株式市場の平均株価の終値は1300円近く下落した。

 g円相場 一時1ドル=99円台に ディーリングルームは騒然

 安倍晋三首相は「為替市場をはじめとした金融市場の安定化が必要だ」と述べた。市場の混乱に歯止めをかけ、金融システムが揺らぐことのないよう、英国とEU、日米など先進国の政府、中央銀行は迅速に連携すべきである。

  過度の為替変動が収まらなければ、協調介入もためらうべきではない。先進7カ国(G7)の結束が試される。

 市場の混乱は、停滞感の強い日本経済にとって打撃となる。年明け以降の円高が定着すれば、第2次安倍政権下での円安によって収益を伸ばした輸出企業にとり、深刻な逆風となる。

 それが不安心理を高め、企業の投資活動や消費をさらに冷え込ませれば、景気低迷が長期化しかねない。政府は実体経済への影響を見極めつつ、財政出動などで機動的に対応する必要がある。

 もっとも痛手を受けるのは英国経済である。国際通貨基金(IMF)が2019年の実質国内総生産(GDP)が5・6%押し下げられるという試算を出すなど、輸出や投資の減少が懸念される。

 日本同様、EUは物価が伸び悩み、低成長から抜け出せない長期停滞の懸念がある。政治的混乱で域内の成長基盤が損なわれないかも心配だ。世界経済全体の波乱要因とならぬよう、英国とEUには万全を期してもらいたい。

 国民投票の争点は、EU域内からの移民制限、主権回復など多岐にわたった。投票直前まで残留、離脱をめぐる英国世論は拮抗(きっこう)したが、離脱派は「EUから主権を取り戻す」と訴え、東欧などからの移民に職を奪われたとする国民の不満を吸収した。

  ≪拡大過程の検証必要だ≫

 統合の進展が民族的な対立を引き起こしたともいえる。

 EUは、第二次大戦後の欧州の平和と経済の繁栄を図るために設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に端を発し、「一つの欧州」を目指して通貨統合や人の移動の自由などへと統合を深化させてきた。

 欧州を二度と戦場にしないとの統合理念に間違いはなく、英国もこれに異論はなかろう。

 だが、EUは東欧の旧共産主義諸国も受け入れ、28カ国へと拡大した。これらの国々の民主化が進んだことは評価できるが、拡大を急ぎすぎなかったか。

 フランスやスペイン、イタリアなどEU主要国でも、「EU懐疑派」の声が高まっている。英国の離脱により、他国の離脱派が勢いづく事態は避けたい。

 統合深化の過程については、EU自体が改めて検証すべき課題であろう。

 英国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、核保有国だ。欧州の安全保障に北大西洋条約機構(NATO)が果たす役割は大きく、英国は米国とともにその主要メンバーであり続ける。

  

 ウクライナ介入に代表されるロシアの領土的野心、中東のイスラム過激主義のテロへの対応、紛争回避などで、英国は、大きな役割を担ってきた。共通の外交・安全保障政策を形成してきたEUにとって英国は不可欠な存在だ。

 この点でも英国は欧州との結束を崩してはならない。

 

   ※※※※※※※※※※※※※※

 

  日本の立場と、これから成すべきことは、メディアなどに振り回されないことです。欧州が、第一次、第二次大戦で戦争の渦の真っただ中にあり、加害者であり被害者でもありました。それに懲りて出来上がったシステムともいえます。しかし、欧州にとって新たな敵が現れてしまったのです。

 ウクライナを手中に収めたソ連がじんわりと欧州の圧力になっています。チャイナの進出も不気味です。それが証拠にチャイナのAIIB(アジアインフラ投資銀行)に雪崩を打って加入しました。何が何だか分からないぐらい欧州は弱り切っていたともいえます。

 しかもイスラム勢力の、型破りな価値観の違う勢力が、欧州に移民と言う形で入り込み、中東を中心に騒ぎだしています。

 今やグローバーリズムの終焉が近いかもしれません。やはり理想としていたことが、机上の空想と化し、現実には無理が多すぎることにやっと気が付き始めたとも言います。アメリカも今までのようにお節介は辞めるでしょう。

 世は、ナショナリズムに傾きかけているのです。あのイギリスさえ欧州と一つの運命共同体にはなりたくなかったのでしょう。日本がアジアの運命共同体の一つになろうとしていた場合とは違います、今では真っ平御免です。

  

 日本の取るべき道は、日本の国益を第一に考えた外交であり、チャイナなどの横暴を断固許さない、強力な抑止力の強化です。国民の命と財産を守ることが政府の仕事です。そのための外交であり抑止力です。

 抑止力とは相手の軍事力を抑え込む戦力です。東シナ海に浮かぶ日本の島々を護れるだけの力を、北方領土や拉致被害者を取り戻せる抑止力の強化こそ、欧州の騒動に対する日本の心構えの再確認です。