歩かない旅人

 彼がなした馬鹿げたこと・・・彼がなさなかった馬鹿げたことが・・・人間の後悔を半分づつ引き受ける。ヴァレリー

トランプは天才奇術師 渡部教授

2016-12-24 10:10:52 | 月刊雑誌「WiLL」から

 

  

 トランプ騒動も一段落していますが、アメリカのメディアも日本のメディアもその多くは予想を外し、その分析さえできていない状況下、渡部昇一教授の、目のすくような解説に、私も別のことを感じました。

  日本の中のポリティカル・コレクトネスが、日本の言論界、メディア界に猛威を振るっていて、歪な世界に変わりつつあることです。差別だとかヘイトだとのレッテル張りが市民権を得て、やたらに張り続けるという被害です。

  

  カジノ法という名で呼ばれている事案に対しても、メディア界からはこれに関してパチンコ会を非難することはタブーであるかのように絶対に取り上げません。

  また日本中に張り巡らされたホームセンターや大型電気店も、その80%近くがチャイナ製だと言われています。この使っているパソコンもNECですがチャイナで組建てられた製品です。日本で組み立てられた製品は、ケーズデンキには一台もありませんでした。

 

 ♠ ♣ ♥ ♦ ♠ ♣ ♥ ♦

 

  (月刊雑誌『WiLL』 2017年1月号より)

  総力特集 さぁ、トランプだ 覚悟せよ!

  トランプは 天才奇術師ですな

  大手マスコミはまんまとトランプ・マジックに引っかかったのです。

      

    上智大学名誉教授    渡部 昇一

 

  一部抜粋記事にして私が、書きやすいように書き綴りました。

 ・・・・・・・・・・・(前略)

 

 「言論の不自由(ポリティカル・コレクトネス)に対する挑戦

   通常の手段ではとてもヒラリー候補に勝てる見込みはないとトランプ氏は考えていたはずです。何しろヒラリー氏は元大統領のファーストレディで、オバマ政権で国務長官を務めた知名度抜群の女性です。

  しかもウオールストリートとの関係も深い。そんな強敵に、公職に就いたこともない人間が勝てるはずがない。それで彼は、大胆な手段に出たのだと思います。普通のアメリカ人が口にしたくてもできないことを次から次へと、歯に衣着せず言い放ちました。

  

  マスコミは狙い通り彼の発言を「暴言だ」と片端から報道して宣伝にこれ勤めました。現在のアメリカには言論における閉塞感があると思います。

  それを打ち破ってくれたという訳で留飲を下げた人々が彼を熱烈に支持して、泡沫候補から一転、共和党候補となり、ついに大統領選で勝利を収めるに至ったわけです。

  

  今のアメリカは、ポリティカル・コレクトネス(差別・偏見・を許さない表現)が非常に強い社会になっています。わかりやすく言えば、一時期の日本で問題についてほとんど口にできなかったことがあるのと似ています。

  しかし、アメリカでは言論統制が人種、性(ジェンダー)、同性愛、すべての分野にわたっています。何であれ差別的な発言と取られたら、つまりポリティカル・コレクトネスで批判されたら、学者は大学を追われる。政治家は辞職せざるを得ない。物書きなら発表の場を奪われる。

  

  アメリカは日本よりずっと言論の不自由な社会になっています。その状況に国民は苛立っていた。トランプはその閉塞感に気が付いて賭けに出たのではないでしょうか。

  イスラム教徒は入国させない、メキシコとの国境に壁を作るなどの人種差別発言は、いわば彼が仕掛けたトリックの種だったのかもしれない。マスコミは過去の女性蔑視問題まで掘り出して報道しました。(中略)

  

  政治家はもちろん、大学人や物書きなどのインテリ層は、たとえトランプ支持でも、聞かれればヒラリー支持と言っておいた方が安全だと考えたに違いありません。

  ブッシュ(父)元大統領まで、わざわざ「ヒラリーに投票する」と語ったのはポリティカル。コレクトネスゆえだったと思います。 (中略)

国境なき「グローバリズム」

  トランプ氏は当選後、「われわれに必要なのはグローバリズムではない、アメリカイムズだ」と明言しました。この「グローバリズム」という言葉には歴史的背景があるので、少し説明しておきましょう。

   

  第二次大戦後、世界の流れは国際化(グローバリズム)の方向に向かいました。その流れをつくったのはユダヤ人です。EUがそのいい例と言えます。

  (中略)・・・ロシア革命を主導し、世界恐慌をコントロールして着々とその勢力を伸ばしてきたユダヤ人が二千年来望んできたことは三つあります。一つは国境をなくすこと・・・少なくとも国境の壁を低くすることです。もう一つは能力主義。三つめが契約社会です。

   ナチスによるホロコーストのために、第二次大戦後はユダヤ人批判ができなくなりました。下手に批判すると「お前はナチスの味方か」などと言われるので、ヨーロッパではユダヤ人のやることに反対でも「反ユダヤ」と言われる恐れがあって反論できない。 (中略)

  EUを動かしている原動力の一つが、今や世界の金融を握るユダヤ勢力であることはだれもが知っている事実です。しかしそれは口に出せない。そこで「反ユダヤ」と言わないまでも、ナショナリズムという形で反動が生まれる。EU諸国の中で今ナショナリズムの傾向が強くなっています。 (中略)

「中国で奴隷制度復活」

  私が滞在していた1960年代のアメリカは光り輝くばかりでした。大学で教えるために渡米したわけですが、上智大学の月給が手取り6万円だったのに対し、アメリカでは36万円でした。半年分がひと月でもらえるのかと驚いたことをはっきり覚えています。

  治安もよくて、夜に一人で歩いても危なくない。学生たちは自動車でやってきて、キーを付けたまま降りて教室に行くんです。それでも車は盗まれない。

  

  ところがベトナム戦争が長期化して、エスタブリッシュメントに対する反対運動が燎原の火のごとく広がると、たちまち治安が悪くなり、格差がどんどん広がっていきました。それは、一つにはベトナム戦争で膨大な金を使ったからです。 (中略)

  

  ベトナム戦争が終わると、アメリカは中国と手を結ぶことを考えました。キッシンジャーの提案だと言われていますが、彼はユダヤ系ですから、ユダヤ金融界の意思を受けてのことでしょう。当時の中国人の給料なんてアメリカの50分の1にもならない。

  アメリカの企業は製造コストを下げるため、競って中国に工場を移しました。資本も機械もノウハウもどんどん移して、安い賃金で作らせたわけです。

  20年くらい前、「タイム」だったか「ニューズウイーク」だったかに、「アメリカは中国で奴隷制度を復活させた」という記事が載りました。アメリカ人の資本家は中国人を奴隷のような賃金で使い、低価格の製品を世界中に売りまくって儲けているということです。

  

  そうなると、国内で製造を続けていたアメリカの企業はどんどん潰れていく。その結果、多少の誇張はあるかもしれませんが、現在のアメリカ社会では1億ドル以上の収入がある人が1%。400ドル以下の収入の人が99%と言われています。 (中略)

  グローバリズム」の弊害は、先進国の中産階級をつぶしてしまうことです。イギリスからはとっくに消えてしまいました。戦後、ユダヤ人の勢力が強かった国ほど、そして国際化に熱心な国ほど、格差が激しくなりました。 (中略)

〝皆の衆″国家に戻す

  歴史と伝統を持たないアメリカは、もともと〝皆の衆″国家でした。アメリカ大陸に最初に移住したプロテスタントの白人たちが自力で町を造り、国を造った。国王という支配者も、人民という被支配者もいなかったから、〝皆の衆″の中からリーダーを選びました。

  

  リンカーン「(英語は略)の演説日本語訳」「人民の人民による人民のための政治」と訳すのはいささか不適切です。これは「皆の衆の、皆の衆による、皆の衆のための政治」と訳す方が正確でしょう。

  もっとわかりやすく言えば、「みんなの、みんなによる、みんなのために政治をやろう」ということです。これこそアメリカ民主主義の本質です。  (後略)

 

 ♠ ♣ ♥ ♦ ♠ ♣ ♥ ♦

 

  この寄稿文は8ページにわたる、深い意味のあるトランプ次期大統領が当選した分析がなされていますが、そのほんの一部を抜粋したことを、お許し願いたいと思いますが、一字一字写すのはなかなか大変な仕事で、つい略してしまいます。

  しかし、日本にもトランプ氏のような人が現れてもおかしくはない状況です。日本のメディアを牛耳る、ユダヤ的存在が。日本の政治や社会に歪みを生み出しています。日本を平気で貶める勢力が、新聞に、テレビに跋扈しています。

  

  多くの日本人も心の奥で鬱積したものを持っているでしょう。昔の日本は、鍵さえ掛けない家が大多数でした。どこが問題か、おおよその見当はついていますが、メディアは報道しません。そこが問題なのです。大問題なのです。大大問題なのです。


凄い国からもっとすごい国へ!

2016-02-17 09:38:36 | 月刊雑誌「WiLL」から

 

  

 

 青山繁晴氏の「澄哲録」という言葉の解説は、去年の『WiLL』3月号の新連載と銘打たれた最初の部分に書かれていました。そこの部分だけ抜粋して、短く紹介したいと思います。

   

 ≪僕らの祖国には、たった今、哲学と理念こそが必要だった。ただ一度、戦争に敗れると「日本だけは、国家の目標をもはや持ってはいけない。持てば軍国主義になる」と学校教育とマスメディアによって思い込まされてきた。≫

   

 日本社会では、親が子をあやめ、子が親をあやめる。苛められた子が自害する。その病根のひとつは、他者のために学び、他者のために働くということがわからない事ではないだろうか。

 なぜか。目標無き国の民には、おのれの利害しかないからだ。おのれの利害しかないならば、親子の情よりも友情よりも、ただ自分の感情、イラつく感情だけがすべてになる。

 ならば、敗戦で一度は死した哲学を超える哲学を創りあげたい。新しい公のために生きる哲学である。しかし超哲学では、いちばん大切な謙虚さを失う。

 みずからは名を上げず成果も見ず、無駄に死ぬ。その様に、こころを済ませて取り組みたい。そこで超の一字を澄と変えて澄哲録である。

 ただ、この連載で体系化しようというのではない。まずは河原にさまざまな小石を積むがごとく、あえて断片でありたい。したがって澄哲録片片(ちょうてつろく・へんぺん)と致したい。

 何という爽やかな動機と覚悟でしょう。つくづく青山繁晴といういま超という字がつくほど忙しく動き回って、「私は自愛はしない」と公言している、くしゃくしゃと笑う顔が何とも言えない可愛いこの人が、ますます好きになりました。

 今年の『WiLL』3月号で、初めてみっちりと読み。改めて、心が動いた文章でした。とうとう3月号は全部載せてしまいましたが、今日からは平成27年3月号の1回目から読み直します。

  🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 (月刊雑誌『WiLL』3月号より)

 澄哲録片片(ちょうてつろく・へんぺん)

                第十三回

 僕らの目的地はどこにある  (抜粋その3)

   

 独立総合研究所代表取締役社長兼・主席研究員

          青山 繁晴

   韓国の狙い

 しかし日韓合意の直前、わたしはふだんの遠慮を捨てて、総理が今どうされているかを忖度せず出張先の米国から電話した。そこで総理が何を話されたかは、明らかにしない。

 総理からも官邸からも一切何も止められていないが、公開を前提にした電話ではないからだ。わたしの、ひとりの国民としての問題提起の中身なら明らかにできる。

 「年内解決をまずやめてください。韓国の大嘘を日本が正当化してしまう合意の中身も間違っていますが、年内に、と言う韓国側の提案に乗るのも間違っています」

   

 日韓が「慰安婦」をめぐって急転直下、年末ぎりぎりに合意しそうだと言う情報は、早い段階から一民間人の私に入っていた。なぜか。政府部内に反対派が少なからずいる、いや、居たおかげだ。

 それは総理官邸にも外務省にも居た。そこから、それぞれ微妙に異なる点もある話を聴きつつ、わたしは当初は、むしろ安心していた。安倍総理が韓国のオファーを迷いなく断っていたからだ。

 最初は、韓国は外務省と官邸の親韓派を通じて「三億円だけ出してくれ」という働きかけを行った。これは国費、すなわち日本国民の血税からすべてを出せという話であって、韓国の狙いは明らかだった。

   

 かって親中韓派の総理、村山富市さんが韓国の真っ赤な嘘に寄り添って賠償金を払おうとしたが、流石に1965年の日韓請求権協定ですべての国家賠償問題は終わっていることを、日本みずから覆すわけにいかず、

 寄付金を原資とする「アジア助成基金」を創設した。しかし韓国内に浸透している北朝鮮の工作による反日運動の圧力もあって、この基金は実質的に破綻した。

   

 国費から賠償させることによって、日本が旧軍を含めた国家の責任を慰安婦に対して認めたと国内外で宣伝することを朴槿恵大統領が狙う、それは余りにも分かりやすかった。

 わたしは旧知の韓国軍内の議論相手に連絡した。かれは「日本は一年の国家予算で百兆円近く使う国だ。三億なんて安いもんじゃないか」と英語で言った。

 わたしは「日本のサラリーマンの生涯賃金が二億円を超える人は、大企業で順調な人生を送った人だ。日本企業も大半は中小企業が支えているんだ。三億円でどれだけ日本人が憤慨すると思うのか」と答えた。

 だがわたしたちのこの議論は、安倍総理が提案を断ったことで自然消滅した。総理はカネの多寡ではなく国費で払う事を拒否したと見えたからだ。

 すると韓国は一億円に要求を下げてきた。総理はそれも断ったと、これは総理の側近から聞いた。

   

 昨年11月の日韓首脳会談で「慰安婦問題の解決へ加速する」との合意があったが、別の側近は、わたしに「加速するというのは、つまりなにもしないことだからと」笑って見せた。

 この皮肉めいた逆説は、国務省の知友によるとアメリカにも非公式に伝えられた「韓国が硬直した強硬姿勢のままでは、日本にできることは無い」という意思表示だったという。

 そこでオバマ大統領の激怒と、朴槿恵大統領への烈しい叱責が起きた。すると、あろうことか韓国は値段を二十億に釣り上げたのだった。

  拠出金十億円の真相

 わたしはかねてから「戦争の弱い民族は外交が上手く、ほんらい強い民族は、げんこつ抜きの外交は下手である」、「人は得意分野で失敗する」と述べてきた。

 ふつうで言えば繋がりの薄いように見えるはずのこの二つのささやかな警句がここでいずれも現実になった。

 戦いが弱いからこそ外交上手の韓国は、アメリカの圧力が日本にもあるはずだと考え、NSC(国家安全保障会議)の谷内正太郎事務局長とイビョンギ・韓国大統領秘書室長のソウルでの秘密折衝で、

   

 (1)日本は国費から二十億円を慰安婦への償いとして出せ

 (2)口頭でよいから「日本軍が関与して韓国女性を傷つけた」と岸田外相が明言せよ。

 (3)そのふたつだけで韓国政府はもはや決して慰安婦問題を取り上げないと日本と国際社会に確約する・・との「最終提案」を出した。

 日本政府のすべての情報を総合すると、安倍総理の反応は「もう蒸し返さないというのは大きい」、「軍の関与というだけなら、韓国の言ってきた『日本軍は朝鮮女性を強制連行して性奴隷にした』という話と違う」

 「あくまでも対等な外交交渉として妥結したという形にするために、外交の基本として話を半分にしよう。だから拠出金は半分の十億だ」ということだった。「対等な外交交渉」とは、加害者と被害者という立場ではなく、という趣旨だろう。

 わたしは、このすべてに反対した。私ごときの反対はどうでもよいが、政府内部で何人もの重要人物が反対した。

 わたしは「嘘を本当にしてしまえば、日本の子供たち、次世代だけではなく韓国の子供たちにも致命的に有害だ」と総理サイドに強く申し入れた。

   

 それでも安倍さんは、迷った挙句、昨年12月27日の夜に踏み切った。外交が得意分野だからだイエスマンの岸田外相に最終的に妥結を指示したのである。

 視線の先に有ったのは韓国よりもアメリカだった。「対等な日米」という本願に近づく一歩と見たのだ。

   

 本号では紙数が尽きた。次号でもこの日韓合意を考える。

 この後にどうするかが重要だからだ。本号では「日本文化が実は普遍的な文化であること」を考えるはずだったが、年末年始の歴史を画する事件の連続でこれも次号以降に譲ることになった。

 しかしすべては繋がっている。台湾の総統選で親中派が大敗したことも含めてすべて根が通じていることを、次号以降でお伝えしたい。日本国民には、まだ、やれることがある。

 

 🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 また同じように日本は韓国に騙されてしまっただけかと、暗い気持ちで見ていましたが、最後の一行に救われます。日本国民には、まだ、やれることがある。この一言です。


メディアも外務省の外交もどうにかならないのか

2016-02-08 10:14:07 | 月刊雑誌「WiLL」から

 

  

 

 だいぶ暖かくなってきました。年寄りにとっては何もかにもあっという間に変わってしまいます。月日は飛ぶように過ぎ去ります。毎日忙しくて昼寝などの時間はありません。

 今日取り上げたのは、月刊雑誌の『WiLL』3月号からの書評のページからです。担当する評者は大体石井英夫氏が書かれていますが、文章の達人だと改めて勉強になります。

   

 石井英夫氏は、『産経抄』を35年間書き続けたといいますから、並大抵の事ではありません。産経抄によって天声人語が常に比べられ、クササレテいるのはそのほとんどが天声人語で、その矛盾をからかわれていました。

 その石井英夫氏は、毎月今月の一冊を推薦していますが、中々忙しくて、読みたくても読めませんが、石井氏が推薦文を書くと、大体の内容は知ったことが多いし。読んでしまった気分になって仕舞うのも毎度の事でした。

   

 今回取り上げた『日本、遥かなり』  門田隆将氏の本は硬派で、中々週刊新潮の出身らしく、きわどい記事を買いてる反骨のライターですが、日本の癌ともいえるリベラルメディアに対しては大変厳しい見方をしています。

 

 🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 (月刊雑誌『WiLL』2016年3月号より)

 【石井英夫の 今月のこの一冊】

   

 『日本、遥かなり』  門田隆将 著

     PHP研究所  1836円(税込み)

       評者   石井英夫

 

 この国は、なぜ横田めぐみさんを助け出せないのか。いや、相手がめちゃくちゃな拉致テロ国家ならその難しさも分からないではない。

 しかし、イラン・イラク戦争などでも日本は邦人救出に尻込みし、政府専用機や自衛隊機を現地に飛ばすことをしなかった。国家にとって最も大切なものは国民の「命」ではないのか。その大切なものを救い出せない国家とは一体、何なのか。

 本書はそうした日本の悲しい現実を抉(えぐ)りこの国の抱える“内なる敵”の罪の深さを暴き出す。胸打つノンフィクションの感動作だ。

 プロローグは昨年六月、和歌山県串本町で町と在日トルコ大使館が共催した追悼式典で幕を開ける。

   

 今から125年前の1890(明治23)年夏、オスマン帝国(いまのトルコ)の軍艦「エルトゥールル」が効い大島沖で台風に遭い、587人の乗組員が死んだ。しかし、村民が懸命の救助を行い、69人のトルコ人の命を救った。

 しかも、日本の軍艦二隻で彼らを本国に送り届けている。それがトルコの人々の胸を打った。その後、日露戦争で日本は勝利し、長くロシアに苦しめられていたトルコの日本への敬愛は増していく。

 それから95年後だ。イラン・イラク戦争でイランの首都テヘランが空爆され、駐テヘランの外国人はパニックに陥った。それに対し、欧米各国は次々に救援機を派遣して自国民の救出に当たったが、日本から救援機は来なかった。

 この時、伊藤忠イスタンブールの森永事務所長が信仰を結んでいたトルコのオザル首相に頼み込み、トルコ航空の救援機派遣が実現する。

 それによって、テヘラン在住の日本人約200人がトルコ航空機で救出された。こうした日本とトルコの熱い友情交流が、今も語り継がれているのである。

 この日本が邦人救出の飛行機を送らないという事態は、イエメン内線の時も、リビア動乱の際も再現されていた。国家が自国民の命を守るという当たり前のことが、なぜおこなわれなかったのか。

 一つには、人命よりも安全が大事だという外務省などの体質がある。著者は、かって駐ペルー特命全権大使を務めた青木茂久氏(76歳)に、インタビューし、

 「外務省には“起こって欲しくないことは起こらない”と言う考え方というか体質があるんです」という言葉を引き出している。

 二つには、この国は自国民を助け出すことは「憲法違反」とか、「戦争法案」などを扇動する“内なる敵”のマスコミを抱えているのだ。

 「疑念残る自衛隊機派遣」(1994年11月12日付)と書いた朝日新聞社説を始め、毎日、東京などの左巻き新聞派、「それは海外での自衛隊の武力行使になる」と主張するのである。

 それについて著者は、世界各地で活動する青年海外協力隊員から「戦争なら誰だって嫌なんです。でもそれとこれとは番う次元の話だ」と証言させている。

 また、前記の青木氏からも「他国と同じように自国民を救い出す法案は“戦争法案”などと言われてしまう。要は国民の意識を変える必要がある」と語らせている。

 自国民の救出、それが世界の当たり前の感覚であり、国際的な常識というものではないか。疲れを見せない旺盛な取材力に脱帽した。

 

 🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺🌺

 

 この本で一番言いたかったことは日本の外務省がクズだと言うことでしょう。「外務省には“起こって欲しくないことは起こらない”と言う考え方というか体質があるんです」と言う体質はいったいどうして出来上がったのでしょう。

 明治維新を経た日本政府の外交は、白人列強の中に有って、一歩も引かず、ただ植民地になることを阻止するために、軍事にも外交にもまるで綱渡りのような、緊張した時代の中で、精一杯、日本を守り通してきました。

 明治政府が一番重視した、白人支配の世界を、その目的の為だけではなかったかも知れませんが、日露戦争に勝ち、大東亜戦争ではアメリカには負けましたが他の国々には敗けてはいません。白人支配を一掃したのですから。

 しかし今の外交は、だらしがないと言わざるを得ません。官僚の中でも一二を争う優秀な難関を通って来た、優秀な頭脳集団は、受験勉強の抜け殻のような、責任感の無い、保身に長けた、意気地なしばかりになって仕舞ったようです。

 しかもいい訳だけは、流石に上手く、大使館の前に捏造された慰安婦像まで作られたり、石や汚物を投げ込まれても、自分たちは汗も流さず、何となく丸く収めるだけが仕事だと思っています。

   

 しかしながら丸く収めたつもりが、卑屈な日本の国益なぞ眼中になく、自分たちの立場や地位や権利を生かして、保身に汲々としている様は、薄見っとも無い有様になって居ます。

 外交官と言う今までのイメージは、容姿端麗、頭脳明晰、外国語に堪能で、大使の立場は天皇陛下の名代ということに一応なって居ますので、一般的に「閣下」と呼ばれているということです。まるで時代劇の悪代官のごときです。

 こういう変な権威に敢然と立ち向かう傾向のあるのが、門田隆将氏です。書かれていることは想像がつきます。しかし彼らはメディアと言うバックアップがあるから面倒なのでしょう。リベラルなメディアが日本の“内なる敵”の正体でしょう。

 そんな門田隆将氏が2月7日に次のコラムを載せていました。実に的確な最近の新聞を皮肉っています。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

【新聞に喝!】

週刊誌の後追いが定着 なぜ新聞は「見識」を失ったのか 

  ノンフィクション作家・門田隆将

 新聞の力がいかに衰えているかを示す事例が、ここのところあとを絶たない。新聞がいくら懸命に書きたてても、世の中は動かない。それは、新聞にとって「笛吹けど踊らず」と言うしかない現象だろう。

 週刊誌が火をつけ、それを新聞やテレビがあと追いするというパターンも定着しつつある。年明け以降、そんなケースが目立つが、私は甘利明・経済再生担当相が辞任に追い込まれた一件に、いろいろ考えさせられた。

   

 最初に報道したのは週刊文春だ。だが、当事者が甘利事務所の秘書に金銭を渡す場面を同誌のカメラマンが撮影するなど、告発者と“一体化”する取材手法が果たしてメディアとして許容されるのか、釈然としない。

当コラムは週刊誌報道について取り上げる欄ではないので、その点については措(お)かせてもらう。

  私は、むしろその後の新聞報道が興味深かった。それは、日頃、安倍政権打倒に熱心なメディアが、この問題に「飛びついた」ことだ。

 朝日が〈政権の姿勢が問われる事態だ。首相は内閣を挙げて全容解明の努力をする必要がある〉(1月22日付社説)と書けば、毎日も〈第2次内閣以来「政治とカネ」で3閣僚が辞任している中での疑惑発覚は重い〉(同)と、安倍晋三首相の責任を問う姿勢を鮮明にした。

 朝日は、なおも同29日付社説で、〈疑惑のさなかに、自民党の中から気になる声が聞こえた。党幹部から「わなを仕掛けられた感がある」といった発言が続いたのだ。現金を受け取った甘利氏の側が、あたかも被害者であるかの言い分である〉と糾弾した。

  朝日は発覚後、告発者にインタビューもしている。しかし、そこでも「甘利氏を嵌(は)めるためにおこなったのか」という疑問の提示はしていない。つまり週刊誌に“丸乗り”したのである。

 だが、政権への打撃を企図したこれらの記事は、記者たちにとって虚(むな)しい「結果」に終わる。文春報道1週間後の1月28日、甘利氏は記者会見を開いて辞任を表明。

 週末、これを受けて各メディアは世論調査を実施した。内閣支持率が「どこまで下がったか」を見るためである。

 しかし、大方の予想に反して支持率は前回(昨年12月)より上昇していた。毎日は8ポイント、共同通信は4・3ポイント、読売が2ポイントと、いずれも下落どころか「上昇」していたのだ。まさに読者は「笛吹けど踊らなかった」のである。

  新聞の衝撃の大きさが伝わってくる気がした。週刊誌のあと追いで、政権への打撃を目的とした報道を繰り広げたにもかかわらず、読者はとっくにそんな意図的な記事を書き続ける新聞を「見限って」いたのである。新聞は、いつからここまで「見識」というものを失ったのだろうか。

 いま新聞がやるべきことは、週刊誌に丸乗りすることなどではなく、大人としての見識を示すことではないだろうか。

                   ◇

【プロフィル】門田隆将(かどた・りゅうしょう) 昭和33(1958)年、高知県出身。中央大法卒。ノンフィクション作家。最新刊は、迷走を続ける邦人救出問題の実態を描いた『日本、遥かなり』。

 長くなるのでここらへんで止めておきます。