オリバー・ツイスト aka. オリヴァー・ツイスト / ロマン・ポランスキー
130 min UK / Czech Republic / France / Italy
Oliver Twist (2005)
Directed by Roman Polanski. Screenplay by Ronald Harwood, based on Charles Dickens. Cinematography by Pawel Edelman. Performed by Ben Kingsley (Fagin), Barney Clark (Oliver Twist).
とにかくなんでも撮れてしまうポランスキー。引き出しの多いひとで、これは自身の子供のために制作したというから、パパ、すごい(笑)。たとえば、もしビル・ゲイツが自分の子供のために児童むけコンピューターを開発させたら……。でもそのときは、「すばらしいコンピューターね。でもあなたのパパは、ほんとうはこわいひとなのよ」とこっそり言ってしまいそう(汗)。
映画の制作費は80億円。『ピアニスト』の倍ときいた。大部分は19世紀なかばのロンドンを再現した重厚なオープンセットの費用だろう。プラハに組んだのだそう。
制作方針としては『テス』に共通する古典作品のスタイルをとっている。完全にオーソドックスで、へんにいじることをしていない。名優を配し、ゆっくりした速度で語りすすめていく。それがたいくつだというかたには、光のつかいかたやカメラワーク、衣装の考証といった総合的な完成度のたかさをご覧になることをおすすめしたい。BBCの名作物ではこの深い色味は出ない。ナルニアも光は浅かった。たんなる技術の問題ではない、美意識です。それを含めて、でも正確にはなにが違うのだろう? ポランスキーはわたしにとって、底が知れない作家の一人。不思議な奥行きがあるのだけれど、そのタッチをつくりだしている鍵がわからない。
ところで、盗賊頭のフェイギンをベン・キングズリーが演じたことが話題になっていた。この役は、1948年にデヴィッド・リーンが手がけた映像化ではアレック・ギネスがつとめている。キングズリーはダイナミックな役づくりで演じきっていた。しばらくまえの『ヴェニスの商人』でシャイロックの役はアル・パチーノがやったけれど、このひとで見てみたかったとさえ感じた。
メモリータグ■田舎道。飢えながら歩いてきたオリヴァーはぱったりと行きだおれ、親切な老婦人にごはんをもらいます。周囲の広々とした原っぱと林が美しい。