ぐるぐる自転車どこまでも

茨城県を自転車で散歩しながら,水戸藩の歴史について考え,たまにロングライドの大会に出場,旅する中年男の覚書

タロコ渓谷への旅~天祥から慈雲橋

2013-04-22 20:18:18 | 自転車
タロコ渓谷は、壁のような山々に両脇を挟まれた渓谷である。
天祥までは、ほぼ渓谷の底を流れる川のそばを川に寄り添うように道が走っていた。
しかし、天祥を過ぎると、横貫道路は高度を上げていく。
次第にそれまですぐそばに川が見えていたのがずいぶんと下に見えるようになってくる。

天祥の小さな集落を出ると、すぐに上り坂が始まる。
斜度はおよそ6%くらいだろうか。
予想外にきつい感じがする。
スタート地点からすでに上りが始まっている。
軽めのギアでクルクルとペダルを回すように漕いで行く。
スピードメーターを見た。
時速8キロ。
遅い。
遅すぎる。
予想では、時速10キロくらいは出せるはずだったのに、なんと言うことだ。
目的地の武嶺まではおよそ65キロ。
このペースだと8時間かかる。
途中、合計1時間ほど休憩や食事などを見込んでいる。
しかし、この先にもっと斜度のきついところがある。
それを考えると、やはり時速10キロはキープしたい。
しかし、あまり無理をすると途中でバテテしまうかもしれない。

天祥のすぐ上には、文山温泉がある。
渓谷の温泉宿だ。
そこを過ぎると長い泰山隧道がある。
このトンネルは、片側1車線あり、中に灯りがついていた。



トンネルを過ぎて、しばらく走るとヘアピンのようなカーブがある。
そこを曲がると、今まで上ってきた道が左下に見える。



台湾は右側通行だから自転車も右側を走る。
右側は、岩を削り取った崖であり、ゴツゴツと削られたままの岩肌を荒々しく見せている。
ところどころに、小さな石が落ちている。この感じだといつ落石してもおかしくない。
できれば、あまり右側の岩肌沿いも走りたくない。
たまに、左側へ寄ってみる。

左側は谷底なのだが、さきほどまで懸命に上ってきた道や谷底がほぼ真下に見えるのが面白かった。
自動車が来ないことを確認しながら、左のガードレールの近くを走り、底を覗いた。
しかし、このガードレールの下は何百メートルもの谷底だ。
落ちたらただではすまない。
こんなに高度があり、崖で落差があるところの、谷側を走った経験はない。



すごいところを走っているのだと実感する。
まるで、ツールドフランスのコースを走っているような気分になる。
ただ、ツールドフランスの選手のように力強くはなく、かなり息があがってきていた。

心拍数は、もう140を超えてしまった。
これは、いわゆるLSDの領域を超えている。
あくまでも私の場合だが、140くらいだと脂肪の燃焼率は25%くらいになる。
たとえば、この上りで1時間に400Kcal消費したとする。
100kcalは脂肪を燃焼させてまかなうが、残りの300kcalは糖分を燃焼させてエネルギーを作るということなのだ。
コンビニのおにぎり1個で約160kcalだから、このペースの走りでは1時間に2個のおにぎりを燃やしていることになる。

案の定、1時間もしないうちにお腹がすいてきた。
パワージェルを1本摂った。口の中にものすごい甘さが広がる。
これでしばらく持つだろうと思ったが、20分もしないうちにお腹がすいてきた。
追加でもう1本パワージェルを摂る。

そうこうしているうちに次第に景色が変わる。
それまで両側に岩の壁だったのが、緑の木々の谷に変わり、川底が道路から見えなくなっていた。

ある程度進むとカーブのところに休憩所のような展望台のようなところがあった。
山の横に雲が浮かんでいる。
遠くの谷底にほんの小さな塔と橋らしきものが見えた。
見覚えがある。
天祥だ。今朝、出発したところだ。
約1時間で500mは上っただろうか。



写真を撮るくらいで出発する。
そこを過ぎるとやや勾配がゆるくなった気がする。
4%くらいだろうか。
坂を上るというよりも山を横切っていく感じがした。

途中、道路工事の事務所があった。
洛韶というところだ。標高は1117m
そこを過ぎるとまた勾配が少しずつ急になった。

1車線で交互通行しかできず、まったく灯りもなく、真っ暗で先がまったく見えないトンネルが現れた。
おそらく手作業で掘り進めた当時のままのトンネルなのだろう。
真っ暗なトンネルの中で、自分の自転車のライトが照らし出すわずかな場所だけを見てると、上下左右の感覚がわからなくなり、倒れそうになる。
日本のトンネルはでこんな経験はない。正直、危険を感じた。
こんなに暗く狭いトンネルを通っている最中に対向車などがきたら、アウトだ。





車はほとんど走っていない。
そういう意味では走りやすい。
10分に1台くらいだろうか。
すれ違うよりも、追い抜いていく車が多い。

だんだんと標高があがるにつれて、雲の位置が変わり、かなり上にあったのが斜め横上になってきた。
今日は曇りか雨かという予報だった。
しかし、ところどころ雲の切れ間から太陽が顔を出し、山々の緑を鮮やかに照らす。
次第に緑が濃く、多くなってきた。
森の小鳥たちのさえずりが心地よい。
なんという鳥かはわからないが、南方的な陽気な感じのさえずりなのだ。
耳を傾けると、たくさんの種類の鳥たちがにぎやかにさえずっている。


こんな豊かな自然の中を一人で走るなんて、とても、贅沢だ。
緑の中に真っ赤な慈雲橋が見えてきた。