映画と音楽そして旅

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(シネマ落書帖) (46) 映画「地上(ここ)より永遠(とわ)に」

2005-12-03 00:08:20 | 映画
 この映画が製作されたのは1953年(昭和28年)ですが、その頃のわが国は敗戦からすでに八年も立ち、アメリカの占領からようやく独立を回復して自立への道を歩みつつあった頃です。その結果占領中であれば多分、公開されなかったと‥思われる内容の映画が、観られるようになったのは大きい進歩でした。
 その頃に予告編を観て今まで私たちが、民主主義や人権尊重の総本家と思っていたアメリカ‥特に軍隊内部に陰湿な「虐待」「いじめ」「暴力」などが存在していたことを知って、アメリカに対する憧れに似た気持ちも、だんだん冷めて行ったような気もします。
 そんな訳でこの映画については、ある程度の内容は理解していましたが、その後観る機会がないまま,観たのはつい最近のことです。
 ヴェトナムや、イラク戦争では、かなり真実に近い報道がされているようですが、占領中の日本では占領軍に都合の悪いことは、公表されなかったため私たちにとっては、かなりショッキング内容でした。
 上官に対して反抗的という理由で転属してきた兵隊の、プルーイット(モンゴメリー・クリフト)は、またもや上官に反抗していじめを受けます。軍隊内でいじめ殺された友人のマッジヨ(フランク・シナトラ)のために、仕返しをしてから軍隊を脱走して、恋人の(ドナ・リード)ところに転がりこみます。
 しかし日本軍のハワイ攻撃を知って、祖国への義務を果たすために恋人の制止を
振り切って、自ら軍隊に戻っていくのですが‥
 プルーイットの上官は妻カレン(デボラ・カー)との間が冷たいのを、プルーイットを虐待することで発散し、カレンは夫とへの不満を下士官ウオーデン(バート・ランカスター)との道ならぬ恋に走るなど、いろいろな形での人間模様が展開されていきます。
 「陽のあたる場所」でエリザベス・テイラーと共演したモンゴメリー・クリフトが、ここでもアメリカ軍隊という巨大な組織に対して、抵抗しながらも押し潰されていく様子を、あの独特の翳りを含んだ表情で演じています。
 カレン役のデボラ・カーは前に観た「めぐり逢い」に比べて、4歳ほど若い頃の作品ですが、また違った冷たい感じの女性に思いました。
 ここしばらく「悲しみよこんにちは」など、デボラ・カーの映画ばかり観てますが、もう一本昔観たことのあるロバート。テイラーと共演の「クオ・ヴァディス」のDVDが手元にありますので、これも再度観なくてはと予定がぎっしりです。
 さて、私が始めて観たミュージカル映画といえば‥ジーン・ケリーとキャサリン・グレイスンが出ていた「錨を上げて」ですが、ここで踊って歌って‥大活躍のフランク・シナトラが、「地上より‥」では、派手な喧嘩をしたり終わりには、殺される気の毒な役と思いきや‥それがさに非ずでした。
 華やかなミュージカル・スターあるいは歌手としては、やや落ち目だった当時のシナトラは、演技派俳優への変身と人気回復のための作戦だったようです。
 その後の彼はどうだったか‥よく判りませんが、私の手元には彼の歌うCDは映画「旅愁」の主題歌「セプテンバー・ソング」がありますが、そう思って聴くと余計に寂しく聞こえます。
 モンティ シナトラ デボラ・カー B・ランカスター ドナ・リードなどの大スター共演のこの話題作は、日本軍のハワイ パール・ハーバー(真珠湾)攻撃の日に終わります。
 
 この運命の日‥あれから65回目の12月8日(ハワイでは7日ですか?)が、間もなくやってきます。
 今でも覚えているこの映画の予告編には、日本軍の攻撃場面がありました。ですからこの日が来るとこの映画を今でも思い出します。