映画と音楽そして旅

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(シネマ雑記帳) (51/52)1973年の映画「激突 / ラスト・タンゴ・イン・パリ」

2005-12-30 06:13:46 | 映画
 この映画が公開された頃といえばわが国の経済成長も、中東情勢の悪化でオイルショックにによる、極端なもの不足と物価上昇に見舞われた年だった。
 私はちょうどローンや子育ての真最中で、日夜仕事に追われる毎日と不安な経済情勢の中で生活防衛がせい一杯で、当然のことながら映画どころではなかった。
 にも拘わらず不思議なことに、この二本の映画のタイトルだけは覚えていた。

 「激突」は後年になってテレビで二度ほど観たが、不気味な恐怖感に溢れたような映画だった。何気なくタンク・ローリーを追い越した乗用車が、このタンク・ローリーにとことん付きまとわれて、イヤがらせを受けるというストリーだ。
 その犯人が誰で何のためにそんなことをやるのか、さっぱり判らないところや、犯人も足元が写るだけで、顔が全く写らない点でもなにか言い知れぬスリルを感じた映画だった。。
 
「ラスト。タンゴ・イン・パリ」の主演男優のマーロン・ブランドは、私が最も気に入らないスターの一人だった。これは彼の舞台でのヒット作を、ヴィヴィアン・リーと共演した映画「欲望と云う名の電車」での、彼の粗暴で野性的な行動が私のイメージをひどく傷つけたからのようだ。
 その後に彼がアカデミー賞を得た「波止場」が公開されたときも、同じ頃に封切られた「ローマの休日」や「帰らざる河」などを観るのが忙しくあまり関心はなかった。
 それが突然にも彼の存在を思い出したのは、二年ほど前にナンシー・梅木という1950年代に活躍したジャズ・シンガーが渡米して、彼が主演した「サヨナラ」という映画でアカデミー助演女優賞を獲得した…という記事を読んでからだった。
 「広い世界でただ一人…」とかいう「愛のテーマ」など主題歌だけは、私も知っていた「ゴッド・フアザー」でオスカーを得ながら受け取りを拒否するなど、社会的にも反体制的姿勢を貫いた彼も、2004年7月に80歳で他界した。
 キャサリン・ヘップバーン グレゴリー・ペックなど、私の若い頃に活躍したスターが天国に旅立つ度に、寂しくなり鎮魂のために遺作を必ず観ることにしていたが、彼の作品はまだ何も観ていなかったのに気がついた。そこで彼の実質的なラスト作品とも云える、表題の映画をDVDで観ることにした。
 冬のパリ…パリ住まいのアメリカ人ポール(マーロン・ブランド)とパリ娘のジャンヌ(マリア・シュナイダー)は、お互いに名前も住所も明かさずに交際を始める。妻に先立たれたばかりのポール、恋人はいても何か不満があるジャンヌ…
 彼が架空の世界から現実の世界に立ち返り、彼女に結婚願望を告白したことから…という物語だが…
 いつも憂鬱な挙動だった彼が現実世界に戻ってからは、気楽になったのか急に明るく陽気になって、終末近くの「ラスト・タンゴ」を踊る場面で、思わず笑ってしまったのは私だけ…?
 バーチャルの世界が突然リアリティの世界に戻ったとき…?少し考えさせられる作品だった。