映画と音楽そして旅

主に懐かしい映画や音楽について…
時には新しい映画も…

(シネマ雑記帳) (47) 「名もなきアフリカの地で」

2005-12-08 04:54:17 | 映画
 前に観た「愛と悲しみの果てに」で感じたアフリカ大陸の、不思議な魔力に惹きこまれるように、表題のの映画を観ましたが、これは2001年にドイツで製作されたヒューマン・ドラマです。
 ユダヤ糸ドイツ人の元裁判所判事レドーリッヒは、ナチスを嫌ってアフリカのケニアの農場で働いていましたが、1937年にドイツにいた妻のイエッテルと娘のレギーナを現地に呼び寄せました。現地の生活になかなか馴染めないイエッテルに対し、レギーナは現地人のオウワーともすぐに馴染み、新しい生活に溶け込んでいきました。
 やがて第二次大戦が始まり現地を支配するイギリスに、敵国人として拘束され家族はばらばらになります。レギーナはイギリスの学校に入れられますが、ここでも生活習慣も宗教も文化も違うユダヤ系ドイツ人として、差別と偏見に悩まされるのです。
 アフリカ行きを嫌ってドイツ本国に残っていた、祖父と祖母がナチスのユダヤ人迫害に逢い、殺害されたり収容所に入れらたまま消息を絶つなど、ユダヤ人受難の歴史が始まります。
 
 ユダヤ人弾圧の加害国であったドイツの作品ですから、おなじ主題をを扱った「シンドラーの手帳」のように、生々しくは描かれてはいませんし、かなり軽く描かれていたように思います。
 しかし亡命ドイツ人として慣れぬ農作業に取り組んだり、現地の先住民の人々との暖かい心の交流などが、アフリカの美しい自然を背景に丁寧に描かれていきます。
 また明るい無邪気な少女として登場したリギーナが、心身ともに美しく成長していく過程が生き生きとしています。また彼らに献身的に尽くす現地人のオウワーとの、心の触れ合いに暖かいものを感じます。
 やがて戦争が終わって祖国に自由と民主主義が戻ってきます。彼に新生ドイツの裁判官として再出発するために家族とともに本国へ帰る日が訪れてきます。
 このアフリカでの生活や貴重な体験は、今後の人生においてきっと役立つことでしょう。
 やや綺麗ごとみたいに終わった点が気になりますが、半世紀以上たった現在でも、自らの手で引き起こした戦争の当事国として、ユダヤ人弾圧という事実を自らの負の遺産‥‥マイナーな冷厳な史実として、反省し引き継いでいる姿勢には感動しました。
 光溢れるアフリカ大陸の美しい大自然を背景に、ここでも歴史の真実に迫ったこの感動的な作品は、国際的にも高い評価を受けて、2002年度アカデミー賞の、外国映画賞を受賞しました。