【ユーザー】大阪ガスおよびオージス総研は、オープンソースソフトウェア(OSS)を利用して大阪ガスグループポータルを再構築した。これにより、関連するコストを5年間で1.6億円削減することができ。また、オープンソースソフトウェアの利点を活かし、コストダウンしながら安定性や非常時のバックアップを充実させることができた。今後は、ポータルを含むグループウェア全体をオープンソースソフトウェアベースに再構築し、組織や会社を超えた情報共有やコミュニケーションツールとして、大阪ガスグループ全体の生産性向上に活用する方針。 (オージス総研: 09年7月発表)
【コメント】OSSについては、認識が市場に定着し企業システム構築の際に採用されるケースが増えており、今後はさらに市場を拡大するものと見られている。特に今回の世界同時不況に際しては、各企業とも構築時のコストをいかに抑えるかが大きな課題に浮上し、この結果OSSが脚光を浴びる結果に至ったようでもある。しかしOSSは一時的なブームでなく、今後のIT市場の欠かせないソフトウエアツールとしてますます注目を浴びることは間違いないところであろう。
今脚光を浴びているクラウドコンピューティング/SaaSに関しても、今後OSSは大きなかかわりを持ってくるように思われる。既にOSSに基づくSaaSの提供も開始され、SaaSとOSSは切っても切れない関係に発展すると目されている。これはOSSそのもの以上に、公開された仕様に基づき共同して開発するというOSSの考え方が重要になりつつあるからだ。これまでの企業システムは、ある特定のベンダーやソフトパッケージに依存して構築してきたが、これによる弊害(コストの高騰、大手ベンダーによる独占など)が次第に顕著になってきており、この解決策としてOSSが注目されているのである。
今回の大阪ガスのOSSによる「大阪ガスグループポータル」の再構築のケースは、OSSの有効性を具体的に実現したという意味で価値がある。今回のグループポータル再構築の概要は次の通りだ。
1.システム構成の変更点
・大規模基幹システムにOSSのLiferayを採用(25000ユーザー)
・CPUの数を3から4に増やしてCPUスペックを1.3倍にレベルアップ
・本番環境はクラスタ2台にして信頼性を2倍に
2.コストダウン効果
・3,200万円/年 (16,000万円/5年) ※ハードウェア、ソフトウェア含む
3.コスト以外のメリット
・より少ない投資で安定性と可用性を向上
・トラブル時に自社で詳細な原因解析をおこない、多様な対策を検討可能
・バージョンアップのタイミングを自社都合で決定することが可能
これらの中で注目されるのは、「コスト以外のメリット」の中の「バージョンアップのタイミングを自社都合で決定することが可能」という項目だ。商用のパッケージソフトを導入して企業システムを構築することはこれまで当然のことのように行われてきたが、ソフトベンダー側の都合(ソフトの機能アップは口実で、ベンダー側の売上げを上げる方便に使われることが多い)で、突如としてバージョンアップしなくてはならない羽目に押しやられる。勿論旧バージョンを使い続けることも出来るが、ソフトベンダー側から「最新の機能は使えないですよ」と言われれば、気の弱い企業ユーザーは大人しく従うしかない。この点、OSSによればバージョンアップの主導権はユーザーが握ることが出来るようのなるのである。(ESN)