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◇企業システム◇日本IBMがクラウドサービスで従量課金制度を採用

2009-08-05 09:28:21 | クラウド・コンピューティング

 【クラウドコンピューティング】日本IBMは、IT資源をネットワーク経由で提供し従量制で課金する新たなパブリック・クラウド・サービス「IBM マネージド・クラウド・コンピューティング・サービス(IBM MCCS)」を発表した。提供開始は、09年10月中旬からの予定。昨今の厳しい経済状況を受け、ITコストを削減しつつもビジネス環境の変化に即応したい、という要望に応えるべく、ユーザー自身のビジネス状況に応じて柔軟かつ安価に最適なIT資源を提供するパブリック・クラウド・サービスがIBM MCCS。IBM MCCSの特長は①日本IBMのデータセンターにクラウド環境を構築②柔軟なIT資源の提供③従量課金④高品質の運用サービスーの4点。 (日本IBM:09年7月30日発表)

 【コメント】クラウドサービスに対する関心は深まっているが、一方では、「従来と基本的には変わらないアウトソーシングサービスを、“クラウドサービス”と名づけてセールスをしているだけ」という厳しい見方も出ている。確かにこれまでIT業界は、“三文字言葉”を付けてセールス活動のツールとしてきたきらいはあった。まだ、実態が明確化されていない状況でもセールストークの方が先走りして、いざ実際に導入を検討してみると、いろいろな課題が表面化してしてきて、導入を見送った経験を持つユーザーも少なからずいるのではないかと推測される。

 果たして今回のクラウドコンピューティングはどうなんだろうかということになるが、今のところかなり実用になる可能性を秘めているといことが言えるのではないだろうか。以前ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)が登場したときも、これからはASPが普及し自社導入ソフトを凌駕するというようなことがいわれたことがあったような気がする。しかしながらASPはその後進展は見られず、細々と提供されているに留まっている。SaaS(クラウドコンピューティング)もASPがたどった道を繰り返すのであろうか。

 IBMに長年勤め1990年に独立し、現在米国で活躍する山谷正己氏はASPとSaaSは異なり、SaaSが今後大きく市場を拡大するはずと指摘している。同氏は著書「SaaSのすべて」(オーム社刊)で「SaaSは大きな変化をもたらします。この変化に対応できないIT企業は自然淘汰の法則に従うことになるでしょう」と述べている。このようなIT業界に変革をもたらすSaaSの課題の一つが利用コストの問題である。利用料金は、ASPが年間固定料金に対し、SaaSは月間利用料金×ユーザー数ということで、一歩前進はした。

 今回日本IBMが発表したクラウドサービスの4つの特徴の中で、注目されるのが従量課金制度。料金は、CPUの処理量に応じた従量課金で、CPU使用量の基準には、CPUの使用能力を測る業界標準の評価指標「SPECint_rate2006」を採用している。ユーザーの業務に応じて基本使用量を設定し、基本使用量を越えた分に関しては、使ったCPU処理量に応じた完全な従量課金。月次での設定・請求であるが、月の途中でも基本使用量の増減が可能で、変更要求のすぐ翌日から反映する。また、処理する業務の量に応じて、設定した基本使用量の2倍までは自動的にIT資源を割り振ることが可能となっている。

 同社では、次のような料金事例を紹介している。料金は、IT資源の利用量や運用レベルに応じて異なるが、例えば、部門サーバーやファイル・サーバー、プリント・サーバーなど、x86サーバーの一般的な利用形態に対応できる「SPECint_rate2006」=5.0のCPU使用量、OSはWindows、メモリーは1GB、ディスク容量は20GB、運用は監視だけ、と仮定した場合、月額料金は、5万円程度という。

 今回日本IBMが発表した、クラウドサービスの従量課金制が今後、どのようなインパクトを企業ユーザーに及ぼすのであろうか。(ESN)