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◇企業システム◇NECがSaaS型ERP「EXPLANNER for SaaS」の販売開始

2009-08-26 09:18:57 | クラウド・コンピューティング

 【クラウドコンピューティング】NECは、ERP(基幹業務)パッケージソフトウェア「EXPLANNER(エクスプランナー)シリーズ」をベースにしたサービス型ERPソリューションを開発し、09年9月より「EXPLANNER for SaaS(エクスプランナー フォー サース)」の名称で販売を開始、12月よりサービス提供を開始する。「EXPLANNER for SaaS」の最大の特長は、単にERPソフトウェアをSaaSで提供するのではなく、顧客企業グループのIT全体最適を実現する「IT構造改革企画コンサルティング」や100種類以上の業務/業態モデルテンプレートを組み合わせて最適な標準業務モデル設定を行う「BST業務モデリングサービス」(BST:Business Solution Template)をSaaSと併せて提供する点にある。NECでは、「EXPLANNER for SaaS」を「BST業務モデリングサービス」と併せて導入した場合、SI型と比べて、顧客企業のシステム導入・運用等にかかるコストを5年間で最大1/2に低減可能と試算している。 (NEC:09年8月19日発表)

 【コメント】わが国におけるクラウド/SaaS事業がいよいよ本格的に動きだし始めたが、今回NECが発表したERPのSaaS提供は、このことをより明確にしたようだ。というのはSaaS提供は、ERPのような基幹業務に対しては、価格設定や可用性の問題などが障壁となり、そう簡単にSaaS化できないからだ。今回NECは、ERPパッケージソフト「EXPLANNER for SaaS」の提供に当り、生産・販売管理領域においては、ビジネス成果に連動したサービス価格を適用する。これにより従来、個別のカスタマイズ要素が多いためにSaaS型での提供は困難とされてきた同領域を、SaaS型かつ「成果連動型」で提供することに成功。これは国内初という。

 ERPがSaaS提供が可能となると、かなりのインパクトを与えるものとみられる。ERP化の歴史はカスタマイズ化の歴史でもあった。ERPを導入しようとするとどうしてもカスタマイズ化は避けられない。しかし、ユーザー企業がベンダーの提供するテンプレートを基に開発するという方針を打ち出せば、カスタマイズ化の壁は打ち破れる。SaaS型のERPサービスを導入した場合、SI型と比べて、ユーザー企業のシステム導入・運用等にかかるコストは5年間で最大1/2に低減可能とNECでは試算している。これは大きい。というのは、ユーザー企業側がカスタマイズに固執しなければ、コストが半減するというのだから、SaaS型ERPを導入する意義が出てくる。

 もう、昔のような固定概念で企業システムを考えては、にっちもさっちもいかなくなるかもしれない。既にERPとかCRMなどは、企業の差別化のツールではなく、むしろコストを最小限に抑えられる共通インフラだという認識に立たなくてはならなくなりつつあるようだ。それでは、各企業の差別化戦略はどうすればいいのだというと、次世代型BI(ビジネス・インテリジェンス)を駆使することによって、各企業個別の戦略をシステム化する時代が到来しつつあるようだ。BIこそが企業システムの心臓であり背骨であるという意識改革を、まず、企業の情報システム部門が先頭に立って推進していかねばなるまい。

 NECは、09年4月に「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」における「SaaS業種別サービス」を発表したが、今回の業界初のSaaS型ERPは、その一環として行われたもの。ということは、今後順次低コストで済むSaaSが提供されることが予想される。ユーザー企業側は、これにどう対応するか、大きな課題がつきつけられたことになる。(ESN)