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◇企業システム◇日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が「企業IT動向調査2009」発表

2009-05-13 09:21:58 | 視点

 【ユーザー】日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、「企業IT動向調査2009」を発表した。同調査はJUASが、ITユーザー企業のIT動向を把握するために、1994年度から実施している調査で、本年度は第15回目に当たる。本年度は、「ITを活用したビジネスイノベーション~IT経営の視点から~」「IT推進組織とIT人材戦略の適正化」の2つを重点テーマに調査を実施したもの。これによると「09年度は大企業でIT予算削減が鮮明に、IT予算を『減少』させる大企業は4割」になることなど、09年度の企業ユーザーのIT投資は悪化することを避けれない状況となっている。 (日本情報システム・ユーザー協会:09年4月8日発表)。

 【コメント】100年に一度の世界的不況に直面しているわが国の各企業が、IT予算を削減する傾向にあることは、事前に予測されたことであり、そう驚くことではない。問題はユーザー企業が今後どの方向を向いて企業システムを構築していくかが重要なポイントとなろう。ここでは今回の調査結果から、今後ユーザー企業がどう自社の企業システムを構築しようとしているかのヒントとなる項目をピックアップしてみよう。

 企業のIT部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題は上位から「業務プロセスの変革」「経営トップによる迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」それに「経営の透明性の確保」が挙げられている。「経営の透明性の確保」以外の2つのテーマは、あまりにも遠大なテーマであり、直ぐに解決することは容易ではない。最近、データやシステムの“見える化”への関心が高まっている背景には、これらのテーマが背景にあるからなのであろう。これらのテーマは、IT部門では手に負えない重いテーマなのかも知れない。経営者が先頭になり解決を図らない限り、多分解決の道は見つからないのではなかろうか。

 システム開発の品質向上については「500人月以上の大規模プロジェクトでは、相変わらず過半数で工期遅れが発生、予算も半数が予定を超過。品質への不満が年々増加し、品質に不満を持つ企業が1/3を超えた」という結果となった。これまで大手SI企業が集まりシステムの受発注時の注意点を書式化したマニュアルを公表したが、具体的なシステム構築ではほとんど効果は見られないということだ。原因は企業ユーザー側それにSI企業の双方にあるわけで、いくらマニュアル化したところで効果はほとんどないであろう。問題は担当者同士がそのシステム構築にどれほどの情熱を注ぎ込むかにかかっている。納期通り、予算通りにシステムが構築されても、企業経営上効果の薄いシステムなら意味がない。担当者レベルでの企業システムに対する意識改革が求められる。

 基幹システムの契約形態が旧態依然であることも大きな問題であることが、この調査から読み取れる。「基幹系システムのベンダーとの契約方式の現状は『人月工数型』と『完全請負型』、保守・運用では『月額固定型』が主流。契約方法の今後は『人月工数単価からの脱却』を希望する企業が多い」ことが判明したが、このことは何十年も前から言われてきたことであり、依然として改善されてないことが分かる。問題の本質は、能力のないSI企業でも「人月工数型」であれば飯が食える状態が許されていることだ。契約形態を「SLA連動型」「従量課金型」へ変更しようと掛け声をかけるのはいいが多分実現は難しい。問題の解決にはSI企業間の競争原理の導入が一番大切だ。今後優れたSI企業だけが生き残る仕組みを、どうつくっていくかにかかっている。

 企業ユーザーの関心が高いテーマは、「サーバー仮想化」「SaaS/ASP」「NGN」「BI」などである。大企業の7割が「サーバー仮想化」を導入・検討中で、07年度から大幅に増加したのが「BI」「SaaS/ASP」「SOA」だ。これらのテーマを見てみると、企業システムもようやく、効率的システムを追い始めてきたことが分かる。SOAを採用することで二重投資を防げないか、仮想化でサーバーの削減が実現できないか、自社導入よりSaaS/ASPの利用の方が効率的でないか、これまで蓄積してきたデータをBIで経営に活用できないか・・・などだ。高度成長期にはベンダーの言うままシステムを導入してきた企業ユーザーは、今回の100年に一度の不況で本来あるべきユーザーの姿に立ち戻ったということだろう。(ESN)