【視点】現在、仮想化ソフトベンダー各社の市場での展開が激しくなりつつある。これはユーザーの仮想化ソフトに対する関心が高まるにつれて、早く自社のシェアーを高め、この市場でのイニシアチブを握りたいという各社の思惑が強くなりつつあるためだ。仮想化ソフトの登場の背景には、メインフレームやオフコンに代わり、オープンシステム対応のサーバーを大量に導入した結果、システム自体が複雑化し、サーバーやストレージの運用コストが増加したことが挙げられる。つまり、集中処理システムをオープンシステムによる分散システムにへと切り替えたユーザーが、今度は仮想化ソフトを使い、オープンシステムの分散システムをオープンシステムの統合化へと移行させようとしているのである。
サーバーの仮想化ソフト市場でデファクトはVMwareである。04年大手ストレージメーカーのEMC傘下に入った時は売上高は1億ドル、従業員数300人程度であったが、07年度の売上高は13億ドル、従業員数は3000人を突破しており、その急成長ぶりがうかがえる。07年にはシスコシステムズも資本参加し、さらに経営基盤を強固にしている。VMwareの強みはベンダーフリーであることだろう。あらゆるハード、ソフトから独立しており、これが同社の強みとして今後とも大きな武器になって行こう。
トップを走るVMwareに立ちはだかるのは、マイクロソフトとシトリックスグループおよびオラクルである。マイクロソフトは08年8月1日から仮想化ソフト「Hyper-V」の販売を開始したが、これに先立ち08年5月には富士通と「富士通 Hyper-V仮想化センター」を共同で設立した。同センターは富士通のサーバー「PRIMERGY」と「Hyper-V」による仮想化システムの設計・構築を支援し、安定した仮想化システムを迅速にユーザーに提供する機能を有している。Hyper-Vはウインドウズとの連携で他社製品との差異化に強みがあり、今後どこまでこの強みを生かしきることができるかがカギを握る。一方、シトリックスはオープンソースの仮想化ソフト「Xen」を買収し、仮想化ソフト市場に参入したが、同時にマイクロソフトと仮想化ソフト事業で提携を発表している。シトリックスはウインドウズの統合ソフト事業を手掛け、もともとマイクロソフトとは近しい関係にあった。仮想化ソフトのHyper-VとXenは補完関係にあるということで、両社は仮想化ソフト事業での提携に踏み切った。
もう一つの動きはオラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」である。08年8月、日本オラクル、日本IBM、アシストの3社はオラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」を中心に据え、IBMのサーバー、アシストのSIを加えて、ユーザーの仮想化システム構築の支援事業を開始することを発表した。また、同じく08年8月、日本オラクルとNTTデータは提携し、NTTデータのシステム基盤ソリューション「PRORIZE」に「Oracle VM」を採用し、今後両者の協力体制でシステム構築事業を推進することにしている。(ESN)