EG93、EG94、EG97の続きです。以下、見ましょう。
(1) I believed Mary to respect Tom. (メアリーはトムを尊敬している、と信じていた。)
(2) I wanted Mary to respect Tom. (メアリーにトムを尊敬して欲しいと思った。)
(3) I persuaded Mary to respect Tom. (メアリーにトムを尊敬するよう説得した。)
(1)~(3)まで、全て、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチです。(1)の‘believe’も、(2)の‘want’も、(3)の‘persuade’も、共通点は、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、解釈上、‘Mary respects Tom.’「メアリーはトムを尊敬する。」、という、「主語・述語」の関係が成り立っている、ということです。
(4)Mary respects Tom. (メアリーは、トムを尊敬している。)
(5)Tom is respected by Mary. (トムは、メアリーから尊敬されている。)
ところで、(4)は、能動文であり、(5)のような受身文に書きかえることができます。ここで注意して欲しいのは、能動文(4)から、受身文(5)への書きかえにおいては、(4)では、‘Mary’が主語であり、一方、‘~ respects Tom’が述語です。しかし、(5)では、‘Tom’が主語であり、一方、‘~ is respected by Mary’が述語です。つまり、能動文から受身文への書きかえは、カタチの上での、「主語・述語」の変化、と言ってもよいでしょう。
そこで、EG97では、(1)~(3)の構文のうち、(1)の‘believe’と、(3)の‘persuade’は、共通した同タイプの動詞として、一括りにできそうだ、という根拠を示したわけですが、しかし、それにも関わらず、とりあえず、その結論は保留しました。それは、何故なんでしょうか。以下を見ましょう。
(6)I believed Tom to be respected by Mary.
(トムはメアリーから尊敬されている、と信じていた。)
(7)I wanted Tom to be respected by Mary.
(トムにはメアリーから尊敬されて欲しい、と思った。)
(8)I persuaded Tom to be respected by Mary.
(トムを、メアリーから尊敬されるようにと説得した。)
(6)~(8)では、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、受身文(5)の「主語・述語」の関係を、そのまま組み込んで表現してみました。そこで問題となるのは、(6)~(8)は、(1)~(3)と比較してみて、文全体の意味に何らかの変化が表れているかどうかです。
(6)は、(1)と比べて、特に、意味的な変化は感じられません。つまり、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、大雑把には、(1)の全体的な意味は、(6)の全体的な意味に、ほぼ等しく、(1)=(6)の解釈になる、と言っても、差し支えないと思います。そして、(7)も同様で、(2)と比べて、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、お互いの全体的な意味に違いはなく、大雑把には、(2)=(7)の解釈になる、と言っても、やはり、差し支えないと思います。
そこで、最後に、じゃ、(3)=(8)は成り立つか、ということになりますが、これは不可能でしょう。つまり、(3)と(8)は、そもそも、根本的に意味が違うということです。(3)では、説得する相手が、‘Mary’だったのですが、一方、(8)では、説得する相手が‘Tom’になっています。
つまり、‘persuade’という動詞の場合、説得の対象となる人物が、必ず、その目的語の位置 (つまり、‘to’不定詞にとっては、解釈上の主語位置) にくるという、意味的な制限があり、だから、目的語の位置にくるものが違うと、それがそのまま、文全体の意味に影響を与え、伝達内容の違いとなって表れるわけですね。
このようなことは、‘believe’や‘want’のような動詞には、見られない特徴で、‘believe’も、‘want’も、共に、「目的語+‘to’不定詞」全体 (つまり、解釈上の「主語・述語」の関係全体) を、ひとまとめにした、1つの意味単位、すなわち、意味解釈ユニットとして、直接的に捉えています。
ここから、‘persuade’のような動詞は、‘believe’や‘want’のような動詞とは、決定的に違った性質をもつ動詞であることは明らかです。そして、その一方で、‘believe’や‘want’のような動詞には、「目的語+‘to’不定詞」全体を、直接的に、1つのまとまった解釈ユニットとして捉えるという、共通点があるので、この観点からは、分類上、‘persuade’のような動詞とは違って、‘believe’と‘want’のような動詞は、共に仲間である、ということになってしまいます。
(9)I believed there to be a girl in the basement. (〇)
(その地下室には少女がいると信じていた。)
(10)I wanted there to be a girl in the basement. (〇)
(その地下室に少女がいて欲しいと思った。)
(11)I persuaded there to be a girl in the basement. (×)
(その地下室に少女がいるとるようにと説得した。)
(9)~(11)では、それぞれ、‘there’構文の主語である、‘there’を目的語の位置に置いてみましたが、(9)の‘believe’や、(10)の‘want’は、‘there’の出現が許され、OKになります。しかし、その一方で、(11)の‘persuade’は、‘there’の出現が許されず、アウトになります。 (‘there’構文の特徴については、EG31、EG74、参照)
これは、もちろん、‘persuade’という動詞は、直接的に、「目的語+‘to’不定詞」全体を、ひとまとめにして、解釈ユニットと見なすのではなく、むしろ、直に、目的語に対して、「説得の対象」を指定する動詞だからです。だからこそ、‘persuade’は、目的語に‘there’がくると、その要求を満たさない単語なので、排除してしまうわけですね。
これを言いかえれば、‘persuade’に関しては、「目的語+‘to’不定詞」の間には、解釈上、「主語・述語」の関係があるとは言っても、まず最初に、制限された目的語を指定してから、後付けで、その支えとなる述語 (‘to’不定詞) をつなげることで、最終的に、「目的語+‘to’不定詞」の間に、「主語・述語」の関係が成立する、というプロセスを経ることになります。
では、そろそろ、この一連の議論を、まとめたいと思います。EG94では、‘believe’と‘want’の比較に始まり、まず、‘believe’を、何の変哲もない動詞であるかのような立場に立たせ、むしろ、‘for’を隠しもつ‘want’がクセ者であるかのような印象を与えました。そして、さらに、EG97では、‘believe’と‘want’の比較に、‘persuade’を参入させることで、あたかも、‘persuade’は、‘believe’の仲間であるかのような印象を与え、‘want’の特異性を、さらに際立たせました。
しかし、今回、新たな検証を行うことで、実は、‘persuade’にだって、それなりに際立った特徴があり、‘believe’とは、必ずしも仲間である、とは言い切れない部分があることが判明しました。そして、その検証のプロセスにおけるボーナス的効果として、今度は、‘believe’と‘want’にだって、共通点はあるのだ、ということも判明しました。
今回のポイントは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチをもつ構文を、3タイプの動詞を使って、比較することで、それぞれの共通点と相違点が、少しずつ異なっていることが判明した、ということです。ある側面にスポットを当てると、‘believe’と‘persuade’は同タイプと言えるが、一方、違った側面にスポットを当てると、今度は、‘believe’と‘want’が同タイプと言えるようなこともあるんですね。
しかし、皆さんも、もう、お気づきのように、残された問題があります。つまり、‘believe’を仲間ハズレにするような、‘persuade’と‘want’の共通点は、特に発見されなかった、ということです。これを言いかえれば、‘believe’は、‘persuade’と‘want’の、それぞれがもつ特徴を、部分的に受け継いだ、「合いの子」のような存在である、ということです。
こうなってくると、最初は、何の変哲もない動詞としての印象が強かった‘believe’が、今度は、一変して、何らかの特異性を持つ動詞ではないか、という疑いに転じることになりますが、しかし、とりあえず、実用英語の範囲内では、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文における、全体像の本来的な理解は、ここまででも、既に必要にして、かつ、十分なレベルに達しています。
今回の一連の議論に関する理解を主軸として、今後、(‘believe’タイプを含めて) 様々な変種的構文も扱っていきますが、今回のテーマは、欠かすことのできない本質の最重要ランクに位置しますので、手抜かりなく、ものにしておきましょう。
●関連: EG31、EG74、EG93、EG94、EG97
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(1) I believed Mary to respect Tom. (メアリーはトムを尊敬している、と信じていた。)
(2) I wanted Mary to respect Tom. (メアリーにトムを尊敬して欲しいと思った。)
(3) I persuaded Mary to respect Tom. (メアリーにトムを尊敬するよう説得した。)
(1)~(3)まで、全て、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチです。(1)の‘believe’も、(2)の‘want’も、(3)の‘persuade’も、共通点は、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、解釈上、‘Mary respects Tom.’「メアリーはトムを尊敬する。」、という、「主語・述語」の関係が成り立っている、ということです。
(4)Mary respects Tom. (メアリーは、トムを尊敬している。)
(5)Tom is respected by Mary. (トムは、メアリーから尊敬されている。)
ところで、(4)は、能動文であり、(5)のような受身文に書きかえることができます。ここで注意して欲しいのは、能動文(4)から、受身文(5)への書きかえにおいては、(4)では、‘Mary’が主語であり、一方、‘~ respects Tom’が述語です。しかし、(5)では、‘Tom’が主語であり、一方、‘~ is respected by Mary’が述語です。つまり、能動文から受身文への書きかえは、カタチの上での、「主語・述語」の変化、と言ってもよいでしょう。
そこで、EG97では、(1)~(3)の構文のうち、(1)の‘believe’と、(3)の‘persuade’は、共通した同タイプの動詞として、一括りにできそうだ、という根拠を示したわけですが、しかし、それにも関わらず、とりあえず、その結論は保留しました。それは、何故なんでしょうか。以下を見ましょう。
(6)I believed Tom to be respected by Mary.
(トムはメアリーから尊敬されている、と信じていた。)
(7)I wanted Tom to be respected by Mary.
(トムにはメアリーから尊敬されて欲しい、と思った。)
(8)I persuaded Tom to be respected by Mary.
(トムを、メアリーから尊敬されるようにと説得した。)
(6)~(8)では、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、受身文(5)の「主語・述語」の関係を、そのまま組み込んで表現してみました。そこで問題となるのは、(6)~(8)は、(1)~(3)と比較してみて、文全体の意味に何らかの変化が表れているかどうかです。
(6)は、(1)と比べて、特に、意味的な変化は感じられません。つまり、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、大雑把には、(1)の全体的な意味は、(6)の全体的な意味に、ほぼ等しく、(1)=(6)の解釈になる、と言っても、差し支えないと思います。そして、(7)も同様で、(2)と比べて、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、お互いの全体的な意味に違いはなく、大雑把には、(2)=(7)の解釈になる、と言っても、やはり、差し支えないと思います。
そこで、最後に、じゃ、(3)=(8)は成り立つか、ということになりますが、これは不可能でしょう。つまり、(3)と(8)は、そもそも、根本的に意味が違うということです。(3)では、説得する相手が、‘Mary’だったのですが、一方、(8)では、説得する相手が‘Tom’になっています。
つまり、‘persuade’という動詞の場合、説得の対象となる人物が、必ず、その目的語の位置 (つまり、‘to’不定詞にとっては、解釈上の主語位置) にくるという、意味的な制限があり、だから、目的語の位置にくるものが違うと、それがそのまま、文全体の意味に影響を与え、伝達内容の違いとなって表れるわけですね。
このようなことは、‘believe’や‘want’のような動詞には、見られない特徴で、‘believe’も、‘want’も、共に、「目的語+‘to’不定詞」全体 (つまり、解釈上の「主語・述語」の関係全体) を、ひとまとめにした、1つの意味単位、すなわち、意味解釈ユニットとして、直接的に捉えています。
ここから、‘persuade’のような動詞は、‘believe’や‘want’のような動詞とは、決定的に違った性質をもつ動詞であることは明らかです。そして、その一方で、‘believe’や‘want’のような動詞には、「目的語+‘to’不定詞」全体を、直接的に、1つのまとまった解釈ユニットとして捉えるという、共通点があるので、この観点からは、分類上、‘persuade’のような動詞とは違って、‘believe’と‘want’のような動詞は、共に仲間である、ということになってしまいます。
(9)I believed there to be a girl in the basement. (〇)
(その地下室には少女がいると信じていた。)
(10)I wanted there to be a girl in the basement. (〇)
(その地下室に少女がいて欲しいと思った。)
(11)I persuaded there to be a girl in the basement. (×)
(その地下室に少女がいるとるようにと説得した。)
(9)~(11)では、それぞれ、‘there’構文の主語である、‘there’を目的語の位置に置いてみましたが、(9)の‘believe’や、(10)の‘want’は、‘there’の出現が許され、OKになります。しかし、その一方で、(11)の‘persuade’は、‘there’の出現が許されず、アウトになります。 (‘there’構文の特徴については、EG31、EG74、参照)
これは、もちろん、‘persuade’という動詞は、直接的に、「目的語+‘to’不定詞」全体を、ひとまとめにして、解釈ユニットと見なすのではなく、むしろ、直に、目的語に対して、「説得の対象」を指定する動詞だからです。だからこそ、‘persuade’は、目的語に‘there’がくると、その要求を満たさない単語なので、排除してしまうわけですね。
これを言いかえれば、‘persuade’に関しては、「目的語+‘to’不定詞」の間には、解釈上、「主語・述語」の関係があるとは言っても、まず最初に、制限された目的語を指定してから、後付けで、その支えとなる述語 (‘to’不定詞) をつなげることで、最終的に、「目的語+‘to’不定詞」の間に、「主語・述語」の関係が成立する、というプロセスを経ることになります。
では、そろそろ、この一連の議論を、まとめたいと思います。EG94では、‘believe’と‘want’の比較に始まり、まず、‘believe’を、何の変哲もない動詞であるかのような立場に立たせ、むしろ、‘for’を隠しもつ‘want’がクセ者であるかのような印象を与えました。そして、さらに、EG97では、‘believe’と‘want’の比較に、‘persuade’を参入させることで、あたかも、‘persuade’は、‘believe’の仲間であるかのような印象を与え、‘want’の特異性を、さらに際立たせました。
しかし、今回、新たな検証を行うことで、実は、‘persuade’にだって、それなりに際立った特徴があり、‘believe’とは、必ずしも仲間である、とは言い切れない部分があることが判明しました。そして、その検証のプロセスにおけるボーナス的効果として、今度は、‘believe’と‘want’にだって、共通点はあるのだ、ということも判明しました。
今回のポイントは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチをもつ構文を、3タイプの動詞を使って、比較することで、それぞれの共通点と相違点が、少しずつ異なっていることが判明した、ということです。ある側面にスポットを当てると、‘believe’と‘persuade’は同タイプと言えるが、一方、違った側面にスポットを当てると、今度は、‘believe’と‘want’が同タイプと言えるようなこともあるんですね。
しかし、皆さんも、もう、お気づきのように、残された問題があります。つまり、‘believe’を仲間ハズレにするような、‘persuade’と‘want’の共通点は、特に発見されなかった、ということです。これを言いかえれば、‘believe’は、‘persuade’と‘want’の、それぞれがもつ特徴を、部分的に受け継いだ、「合いの子」のような存在である、ということです。
こうなってくると、最初は、何の変哲もない動詞としての印象が強かった‘believe’が、今度は、一変して、何らかの特異性を持つ動詞ではないか、という疑いに転じることになりますが、しかし、とりあえず、実用英語の範囲内では、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文における、全体像の本来的な理解は、ここまででも、既に必要にして、かつ、十分なレベルに達しています。
今回の一連の議論に関する理解を主軸として、今後、(‘believe’タイプを含めて) 様々な変種的構文も扱っていきますが、今回のテーマは、欠かすことのできない本質の最重要ランクに位置しますので、手抜かりなく、ものにしておきましょう。
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