EG05、EG06、EG07の続きです。物質名詞に関する注意点を、補足説明します。以下、見ましょう。
(1)a brick (〇) (1個のレンガ)
(2)a building in brick (〇) (レンガ作りの建物)
(1)の‘a brick’「レンガ1個」は、可算名詞です。一方、(2)の‘brick’「レンガ (素材)」は、‘a’がつかない不可算名詞として扱われています。「レンガ」は、一般的に、単一物質から成るものなので、物質名詞として見なされます。
(3)a piece of chalk (〇) (チョーク1本)
(4)a chalk (×) (訳同上)
ここで、「チョーク」ですが、(3)のように、不可算名詞として扱って、OKになり、一方、(4)のように、直接‘a’をつけて、可算名詞として扱うのは、アウトです。これは、‘chalk’を可算名詞として見なすためには、①・一般的に有意義な象徴的役割があるか、そして、②・デザインとしての完結性が感じられるか、といった概念を、同時に満たしていなければならないからです。 (EG05、EG06、EG07、参照。)
そこで、(4)がアウトになるのは、結果として、①はクリアするが、一方、②はクリアしていない、といった判断が一般的で、同時に、①と②を満たしていないことによるものです。‘chalk’が、②をクリアできない理由としては、チョークは、デザイン性のない、常に同じ形状であり、かつ、その切断面が、いかにも、他からの連続性を感じさせてしまい、どうも、デザインとしての完結性に乏しい、といったことにありました。
こういった視点で、今度は、(1)の‘a brick’「レンガ1個」が、OKである事実を考えてみます。すると、果たして、①と②を同時に満たしていると言えるのか、という疑問がわいてきます。まず、「レンガ」は、①の視点からは、複数集まって、建物の壁などを形成するのが本来の役割なので、それ単体では、単なる1パーツに過ぎず、一般的に有意義な象徴的役割があるとは考えられません。
さらに、②の視点からも、「レンガ」は、常に箱型の形状をしていますから、微妙ではありますが、一応、積み重ねて、連結することが前提であることからも、他からの連続性を感じさせるもので、デザインとしての完結性が感じられるようなものとも思えません。
つまり、このような見方をする限り、‘brick’「レンガ」は、①も②も、両方ともクリアできないので、本来ならば、不可算名詞としての扱いを受けたままでなければならない、ということになり、(1)のように、‘a brick’と表現することは、不可能ということになってしまいます。これは、一体、どう考えたらよいのでしょうか。
そこで、改めて、「レンガ」と「チョーク」を比較してみることにします。まず、①の視点ですが、チョークは、それ1本が、黒板に文字を書くなどして、独立した用途を担っているため、1本で使うことが、予め前提になっています。一方、レンガは、その前提からして、もともと、その1個が、全体の中の1パーツとしてつくられたものです。
これを、もう少し詳しく言うと、レンガは、バラバラのパーツ状態が、その目的として、最初から成立している人工物なので、この点、単体で使うことにこそ、意味を見出すチョークとは、根本的に、その本来の在り方が違います。
次に、②の視点ですが、チョークは、前述のとおり、その外観が、ブツ切れ感の強く漂う見た目なので、デザインとしての完結性はありません。一方、レンガも、前述のとおり、積み重ねて、連結することが前提であることからして、他からの連続性を感じさせるもので、デザインとしての完結性が感じられるようなものとは、一見、思えないわけです。
しかし、やはり、レンガのデザインは、チョークと決定的に異なっている点があります。それは、そのデザインは、意図的にある目的を達成するためのものである、ということです。つまり、その箱型の形状には、まさに、積み重ねて連結すること (連続性を感じさせること) が、他ならぬ、デザイン上の意図であり、そこから完成する、いわば、「レンガ模様」こそが、デザインとして成立している、ということです。
こういったことを考慮すると、要するに、「レンガ」は、根本的に、「チョーク」のような物質名詞とは、逆の発想でとらえるべき名詞であり、その概念が、スタート時点で、既に異なっていることが理解できると思います。レンガは、積み重ねて連結するという目的を達成するために、あえて、わざと箱型の形状を選んでいるわけですから、その意図さえ理解できれば、このことが、逆に、①と②を同時にクリアする要件に転じることになります。
レンガ1個は、壁全体の構造の一部になるパーツではあるものの、それが同時に、唯一の本来的な在り方として意図されているのだから、その意図にそって考えるならば、むしろ、そのこと自体が、逆に、①・一般的に有意義な象徴的役割を果たしている、と言えます。
さらに、レンガは、建物の壁になった時点でも、なお、継ぎ目の筋が消されることなく、1つ1つの存在がハッキリとわかるように、わざとデザインの構成要素として、視覚的にも、その個々が存在を主張するように、予め意図されています。ですので、その「レンガ模様」の中で、1個1個のレンガが、②・デザインとしての完結性が感じられる、というのが、一般的なイメージとして認識されていると思われます。
要するに、「レンガ」は、それ単体では、単なる1パーツに過ぎないことが、まさに、①をクリアする理由になってしまいます。さらに、壁として組み上がってからの見た目が、デザインの完結性を感じさせるので、他からの連続性を感じさせる箱型の形状それ自体が、まさにデザインそのもの、ということになり、②をクリアする理由になってしまいます。
ですので、チョークなどのような、単体使用が前提となる物質名詞とは、明らかに、逆発想的とも思える、特殊な視点が必要になるケースだと言えます。
(5)a stone (〇) (石ころ1つ)
(6)stone (〇) (石材)
ちなみに、補足的に、(2)の不可算名詞‘brick’「レンガ素材」の扱いにも、簡単に触れておきます。(5)の可算名詞‘a stone’「石ころ1つ」は、(1)の‘a brick’「レンガ1個」に相当する例ですが、一方、(6)の不可算名詞‘stone’「石材」は、(2)の‘brick’「レンガ素材」というように、並行的な関係として、扱うことができます。
そこで、「レンガ」は、パーツとしての使用が前提であるか否か、という違いはあるものの、一応、「石」の仲間に類する物質名詞だと理解できますね。 (EG05、参照。)
(7)a tile (〇) (タイル、瓦 (かわら) 1枚)
(8)a roof of tile (〇) (瓦屋根)
(7)の可算名詞‘a tile’「タイル、瓦1枚」の場合も、「レンガ」の仲間に類する物質名詞です。そして、パーツとしての使用が前提となる点も同じです。特に、「タイル」の場合は、「レンガ」と全く同様の考え方ですが、一方、瓦の場合は、その形状が、ある程度、デザイン性があるので、「レンガ」よりも、わかりやすい例だと思います。もちろん、(8)のように、不可算名詞として、「瓦素材」の意味もあります。
(9)a corn (×) (コーン1粒)
(10)a rice (×) (米1粒)
ここで、(9)の‘a corn’「コーン1粒」も、(10)の‘a rice’「米1粒」も、共にアウトですが、これを、(1)の‘a brick’「レンガ」が、OKであることと、比較してみたいと思います。「コーン1粒」や、「米1粒」は、もちろん、「レンガ1個」とは異なり、その形状が、人工的に意図した目的に基づいて、加工されているわけではありません。
ですので、「レンガ1個」とは、当然、扱いが異なり、ストレートに、①・一般的に有意義な象徴的役割を果たしているか否か、という視点からは、果たしていない、ということになり、可算名詞の扱いがアウトになります。 (EG05、EG06、参照。)
今回のポイントは、物質名詞の「可算・不可算」の境界線の基準となる、①・一般的に有意義な象徴的役割があるか、そして、②・デザインとしての完結性が感じられるか、という視点ですが、これらを境界線に据える際には、ちょっとした注意点が必要になる、ということです。
①と②の基準は、対象となる名詞の、「本来の在り方」を考慮した上で、適用されなければならないので、何も考えずに、①と②を適用してしまうと、場合によっては、今回の‘brick’「レンガ」のように、全く、逆のパターンも発生してしまいます。まあ、何ともややこしいんですが、これも、ヒトの認識の在り方という、極めて心理的な部分を扱った現象なので、仕方ないですよね。
■注 :‘wood’「木材」も、パーツとしての使用が前提となる物質名詞ですが、‘a brick’「レンガ」とは違って、一般的には、‘a wood’として、可算名詞にすると、アウトです。これは、「レンガ」が、常に、箱型である、というイメージが、一般的に定着しているのに対して、一方、「木材」は、様々な形状に加工されるため、独自の形状が、一般に定着していないからだと思われます。
●関連: EG05、EG06、EG07
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(1)a brick (〇) (1個のレンガ)
(2)a building in brick (〇) (レンガ作りの建物)
(1)の‘a brick’「レンガ1個」は、可算名詞です。一方、(2)の‘brick’「レンガ (素材)」は、‘a’がつかない不可算名詞として扱われています。「レンガ」は、一般的に、単一物質から成るものなので、物質名詞として見なされます。
(3)a piece of chalk (〇) (チョーク1本)
(4)a chalk (×) (訳同上)
ここで、「チョーク」ですが、(3)のように、不可算名詞として扱って、OKになり、一方、(4)のように、直接‘a’をつけて、可算名詞として扱うのは、アウトです。これは、‘chalk’を可算名詞として見なすためには、①・一般的に有意義な象徴的役割があるか、そして、②・デザインとしての完結性が感じられるか、といった概念を、同時に満たしていなければならないからです。 (EG05、EG06、EG07、参照。)
そこで、(4)がアウトになるのは、結果として、①はクリアするが、一方、②はクリアしていない、といった判断が一般的で、同時に、①と②を満たしていないことによるものです。‘chalk’が、②をクリアできない理由としては、チョークは、デザイン性のない、常に同じ形状であり、かつ、その切断面が、いかにも、他からの連続性を感じさせてしまい、どうも、デザインとしての完結性に乏しい、といったことにありました。
こういった視点で、今度は、(1)の‘a brick’「レンガ1個」が、OKである事実を考えてみます。すると、果たして、①と②を同時に満たしていると言えるのか、という疑問がわいてきます。まず、「レンガ」は、①の視点からは、複数集まって、建物の壁などを形成するのが本来の役割なので、それ単体では、単なる1パーツに過ぎず、一般的に有意義な象徴的役割があるとは考えられません。
さらに、②の視点からも、「レンガ」は、常に箱型の形状をしていますから、微妙ではありますが、一応、積み重ねて、連結することが前提であることからも、他からの連続性を感じさせるもので、デザインとしての完結性が感じられるようなものとも思えません。
つまり、このような見方をする限り、‘brick’「レンガ」は、①も②も、両方ともクリアできないので、本来ならば、不可算名詞としての扱いを受けたままでなければならない、ということになり、(1)のように、‘a brick’と表現することは、不可能ということになってしまいます。これは、一体、どう考えたらよいのでしょうか。
そこで、改めて、「レンガ」と「チョーク」を比較してみることにします。まず、①の視点ですが、チョークは、それ1本が、黒板に文字を書くなどして、独立した用途を担っているため、1本で使うことが、予め前提になっています。一方、レンガは、その前提からして、もともと、その1個が、全体の中の1パーツとしてつくられたものです。
これを、もう少し詳しく言うと、レンガは、バラバラのパーツ状態が、その目的として、最初から成立している人工物なので、この点、単体で使うことにこそ、意味を見出すチョークとは、根本的に、その本来の在り方が違います。
次に、②の視点ですが、チョークは、前述のとおり、その外観が、ブツ切れ感の強く漂う見た目なので、デザインとしての完結性はありません。一方、レンガも、前述のとおり、積み重ねて、連結することが前提であることからして、他からの連続性を感じさせるもので、デザインとしての完結性が感じられるようなものとは、一見、思えないわけです。
しかし、やはり、レンガのデザインは、チョークと決定的に異なっている点があります。それは、そのデザインは、意図的にある目的を達成するためのものである、ということです。つまり、その箱型の形状には、まさに、積み重ねて連結すること (連続性を感じさせること) が、他ならぬ、デザイン上の意図であり、そこから完成する、いわば、「レンガ模様」こそが、デザインとして成立している、ということです。
こういったことを考慮すると、要するに、「レンガ」は、根本的に、「チョーク」のような物質名詞とは、逆の発想でとらえるべき名詞であり、その概念が、スタート時点で、既に異なっていることが理解できると思います。レンガは、積み重ねて連結するという目的を達成するために、あえて、わざと箱型の形状を選んでいるわけですから、その意図さえ理解できれば、このことが、逆に、①と②を同時にクリアする要件に転じることになります。
レンガ1個は、壁全体の構造の一部になるパーツではあるものの、それが同時に、唯一の本来的な在り方として意図されているのだから、その意図にそって考えるならば、むしろ、そのこと自体が、逆に、①・一般的に有意義な象徴的役割を果たしている、と言えます。
さらに、レンガは、建物の壁になった時点でも、なお、継ぎ目の筋が消されることなく、1つ1つの存在がハッキリとわかるように、わざとデザインの構成要素として、視覚的にも、その個々が存在を主張するように、予め意図されています。ですので、その「レンガ模様」の中で、1個1個のレンガが、②・デザインとしての完結性が感じられる、というのが、一般的なイメージとして認識されていると思われます。
要するに、「レンガ」は、それ単体では、単なる1パーツに過ぎないことが、まさに、①をクリアする理由になってしまいます。さらに、壁として組み上がってからの見た目が、デザインの完結性を感じさせるので、他からの連続性を感じさせる箱型の形状それ自体が、まさにデザインそのもの、ということになり、②をクリアする理由になってしまいます。
ですので、チョークなどのような、単体使用が前提となる物質名詞とは、明らかに、逆発想的とも思える、特殊な視点が必要になるケースだと言えます。
(5)a stone (〇) (石ころ1つ)
(6)stone (〇) (石材)
ちなみに、補足的に、(2)の不可算名詞‘brick’「レンガ素材」の扱いにも、簡単に触れておきます。(5)の可算名詞‘a stone’「石ころ1つ」は、(1)の‘a brick’「レンガ1個」に相当する例ですが、一方、(6)の不可算名詞‘stone’「石材」は、(2)の‘brick’「レンガ素材」というように、並行的な関係として、扱うことができます。
そこで、「レンガ」は、パーツとしての使用が前提であるか否か、という違いはあるものの、一応、「石」の仲間に類する物質名詞だと理解できますね。 (EG05、参照。)
(7)a tile (〇) (タイル、瓦 (かわら) 1枚)
(8)a roof of tile (〇) (瓦屋根)
(7)の可算名詞‘a tile’「タイル、瓦1枚」の場合も、「レンガ」の仲間に類する物質名詞です。そして、パーツとしての使用が前提となる点も同じです。特に、「タイル」の場合は、「レンガ」と全く同様の考え方ですが、一方、瓦の場合は、その形状が、ある程度、デザイン性があるので、「レンガ」よりも、わかりやすい例だと思います。もちろん、(8)のように、不可算名詞として、「瓦素材」の意味もあります。
(9)a corn (×) (コーン1粒)
(10)a rice (×) (米1粒)
ここで、(9)の‘a corn’「コーン1粒」も、(10)の‘a rice’「米1粒」も、共にアウトですが、これを、(1)の‘a brick’「レンガ」が、OKであることと、比較してみたいと思います。「コーン1粒」や、「米1粒」は、もちろん、「レンガ1個」とは異なり、その形状が、人工的に意図した目的に基づいて、加工されているわけではありません。
ですので、「レンガ1個」とは、当然、扱いが異なり、ストレートに、①・一般的に有意義な象徴的役割を果たしているか否か、という視点からは、果たしていない、ということになり、可算名詞の扱いがアウトになります。 (EG05、EG06、参照。)
今回のポイントは、物質名詞の「可算・不可算」の境界線の基準となる、①・一般的に有意義な象徴的役割があるか、そして、②・デザインとしての完結性が感じられるか、という視点ですが、これらを境界線に据える際には、ちょっとした注意点が必要になる、ということです。
①と②の基準は、対象となる名詞の、「本来の在り方」を考慮した上で、適用されなければならないので、何も考えずに、①と②を適用してしまうと、場合によっては、今回の‘brick’「レンガ」のように、全く、逆のパターンも発生してしまいます。まあ、何ともややこしいんですが、これも、ヒトの認識の在り方という、極めて心理的な部分を扱った現象なので、仕方ないですよね。
■注 :‘wood’「木材」も、パーツとしての使用が前提となる物質名詞ですが、‘a brick’「レンガ」とは違って、一般的には、‘a wood’として、可算名詞にすると、アウトです。これは、「レンガ」が、常に、箱型である、というイメージが、一般的に定着しているのに対して、一方、「木材」は、様々な形状に加工されるため、独自の形状が、一般に定着していないからだと思われます。
●関連: EG05、EG06、EG07
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